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45話 水芸披露は、またの機会に

「さあ、一般人はここから先はダメよ」


 なんて、目つきも鋭く場を仕切り出す御母君。

 隣を征く親父殿、そのやる気なさそうな顔はやめて?

 せっかく、魔法使ってるときはかっこいいのにさ。


「倒した後の片付けなど、是非申し付けて頂ければ!」


 片付けっていうか、解体する気満々ですよねセラさん?

 でも。

 次の御母君の一言で、敢えなく撃沈。


「ああいうのは死体も超猛毒よ? 死にたいの??」


 ……真剣にどうやって解体するか考えてるよ、セラさん。

 怖ぇ。

 不死身なオレが言うのも何だけど。

 命あっての物種、でわないでせうか?

 こんなヒトが、受付やってていいのか冒険者ギルド。


 ていうか。

 セラさん考えてる間に、コルトさんと、マークさんが。

 阿吽の呼吸で、両脇抱えて森の奥に引きずってった。

 あれはなんと言うか、様式美? なんだろうか。


「めーねぇ、疾く進むべし。いいところ、取られる」

「お前は自分で歩く気はないのか、おい」


 雰囲気で解るぞ。

 君、いま、心底きょとーんとした顔、しましたね?


「我より、めーねぇが足が長い」

「はいはい、この場合は嬉しくないけどな!」


 御母君の制止を振り切り、滝壺に向かって走り出す。

 両親の辺りから、妙にでっかい魔力を感じるもんな。

 ウンディが焦る気持ちも、解る。

 元々、ウンディが発見した災厄だもんな?

 見せ場を取られたくない、っていうのも。


 ……こら、足バタバタはやめなさい。

 落ちたら、せっかくのお高いローブが汚れるでしょ。


「メテル姉、ボクもお手伝い!」

「お手伝いー? 自分が遊びたいだけだろー」


 緊張感のかけらもない、サラムの声が、左後ろから。

 振り返りもせず、オレは声を掛けると。

 なんか、物凄い小声で。


「だってだって、新しい剣の切れ味、試したくて」


 ほら見ろ。

 でも。

 妹たちのワガママを叶えるのが、長女ってもんだ。


「頼むから、高熱化すんなよ」

「ふぇ? ひゃぁっ」


 可愛い悲鳴と同時に、オレはサラムを小脇に抱える。

 妹ふたりを抱えたまま、華麗に──、谷底へ、ジャンプ!


「ちょっとメテルちゃーん? ほんとに邪魔しないのよ?」


 のんびり御母君の最後の警告。

 むしろ、それはこっちの台詞です。

 ──泣き虫ウンディが機嫌を損ねると。

 ほんとに悲惨な目に遭いますよ、この大陸。


「──ッ、いよっ、と。こんなとこでどうだね」

「めーねぇ、完璧」

「さすがメテル姉! 近い!!」


 うむうむ。

 妹らの称賛が、素直に嬉しいぞ。

 オレらが降り立ったのは、水竜が沈む水底の、手前の岩。

 水竜までは、約10メートル程度。


 と言っても、水深が目測で五メートル程度はある。

 その上、コイツ自体がでかいし。

 とぐろ巻いてるとはいえ、二十メートルは越えてるだろ。

 よくもまあ、これだけ大きく育ったもんだ。

 感心しながら、妹らを岩場に下ろす。


「さて。オレは何か、作業あるのか?」

「「ない!!」」


 本気で息ぴったりだね。

 しかし。

 顔を見合わせて、姉妹で張り合わないの。


「元々、我の獲物。水芸の披露」

「周辺に被害出ちゃうだろー? ボクなら剣で一閃!」

「ふっ、我の支配域、水ごと斬れるなど、笑止」

「この程度の水量、豪炎で吹き飛ばせるもんね」

「それこそ、水蒸気爆発で被害甚大。ラームは考えなし」

「ディーこそ考えすぎー」


 あっかんべー。

 同時にやるなよ、微笑ましすぎて笑えて来る。

 しかし。

 あんまりのんびりしてると、だな?


「メテルさんたちには、効果ありませんよね」


 はい。

 親父殿の言う通りです。

 凶悪な重力魔法の、真っ黒い塊がオレらの頭上から。


 どぼんっ!

 黒い球面が水面に接触した瞬間から、圧倒的な吸引力。

 水位が、みるみるうちに下がっていく。

 暗黒の重力場が、無限に水を吸い込むからだ。


 正に、黒の大賢者。

 重力系統を自在に操るのは、親父殿だけらしい。

 その、強烈無比な重力場の上に浮いているのが。


「これくらいのサイズなら、封印も出来そうね?」


 真っ白に輝く円形の力場の上。

 そこで、ふわり、と軽く回って見せる御母君。

 軽く構えた錫杖の、先端から光の煌めきが、周囲に。


「毒には毒。精霊力で生きてる生き物なのよね、竜種って」


 そうなんですよね。

 だから。

「あらゆる精霊力を遮断出来てしまう」オレらは、天敵。

 親戚っていうか、オレらの下位互換みたいなもんだし。

 そして。

 御母君も、似たようなことできるんだよね、光魔法で。


 今、周囲にばらまいた光の粒は。

 精霊力を吸い込んで魔力拡散してしまう、粉塵。

 水面でも水中でも、これはお構いなし。

 だけど。

 権能で直接精霊力を動かしてるオレらには、ほぼ無害。


 まあ、厳密には多少は害があるけど?

 外から、小精霊を介して得られる精霊力、なんて。

 精霊核に溜め込んでる力の、1パーセントにも満たない。


 周囲の環境変化をようやく感知したのか、ねぼすけ水竜。

 やっと、水面に大波を立てながら、首をもたげる。

 けど。

 いくらなんでも、反応が遅すぎるぞ?


「これ、弱ってる状態なんじゃないのかねえ?」

「そう、かも? さっきまで、死んでるみたいだったし」


 御母君が大量に光魔法をバラ撒いてるので。

 サラムが、割と困っている。


 いや、サラムなら炎の爆発で粉塵を吹き飛ばせるけど。

 それをやると、御母君の術の、邪魔になるから。

 心優しいサラム的には、出来ないよな。


 そして。

 もっと困ってるのが、ウンディ。


 能動的に精霊力を直接操るオレやサラムと違って。

 ウンディの術は、小精霊に命じる魔術型だからして。


「はわわわ。水が。水の小精霊が、精霊力が動かぬ」

「だから、のんびりしてる時間ないって言ったんだ」

「めーねぇ、光、払って?」

「空中はオレの領域じゃねえよ。次女はどこ飛んでんだ」

「そう、しーねぇを呼べば良い。しーねぇー!!」


 えええ。

 お前、このタイミングでアレを呼んだら。


 ──反応は、爆速。

 さすが、姉妹最速、風の大精霊。

 空の奥から、ソニックブームの爆音が響く。

 そして。

 煌めきと共に、超速で降ってくる、影。


「あっ。しーねぇ、速すぎ……」

「もう遅い。あれは最速到着以外、考えてない速さだ」


 ウンディの懸念よりも早く。


 どっ……、ぱぁぁぁぁぁん!!!


 殆ど垂直に近い角度で降ってきた、何か。

 が。

 大量の水を吹き飛ばして、落下。


「お前。オイ、派手すぎだろ」

「呼ばれて飛び出て、シルフィちゃん到着ー!!」


 どこかで聞いたようなフレーズはやめろ。

 というか、ピンポイントですげえ位置に到着しやがって。

 着地点?

 ものの見事に、オレらのちょい先、水竜のそば。

 ていうか。

 結構、頑丈に出来てますね水竜さん。

 水面越し着弾の水圧衝撃で、伸びちゃってるけど。

 完全に白目剥いてる様子は、ちょっと可愛い。


 ほんの一時的だが。

 水がなくなると、よく解る。

 ウンディの、懸念事項。


 眠ってた場所の奥に、岩の溝みたいなものが見える。

 あれが、川底と地下水を繋ぐ入り口にあたるんだろう。

 なるほど、毒竜があんなとこ居たら、下流が迷惑よな。


 周囲に降り注ぐ、雨あられのような、水滴。

 シルフィが、莫大な水量を弾き飛ばしたせいだ。


 いずれ、揺り戻しで鉄砲水が来るから、その前に避難。

 と。

 その前に。


「我の。我の……、見せ場……」

「あ。やべえ。シルフィ、帰って来たばっかで悪いが」

「うんうんうんっ、めーちゃん、こっちにパス!」

「夕飯までには帰って来いよ?」

「今日は鉄板焼きでお願いってセバスさんによろしくー…」


 けたたましく、上空に飛び去る声。

 ウチの、可愛い三女も一緒に。


「びええええぇぇぇぇぇ……、我の、水芸ぃぃ……」


 間に合って良かった。

 豪雨を伴う突発的ハリケーンが。

 シルフィの先導で、どこか遠くへ飛んでった。

 再び、音速を超えた速度で。


 ──ウンディが泣くと、ああなるんだよなあ。

 どこかで、大洪水と大津波が発生してるんだろう。

 ここじゃなくて、良かった。


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