43話 いやほんとに、オレらの敵じゃないっすよ?
これが2019年最後の更新になりますー。
再開は2020年1月3日以降を予定してまーす。
でわっ。
皆様。
良いお年をーっ。
「我、これより水芸を披露せんとす」
「……なんだって?」
何を突然言い始めたのか、三女ウンディよ。
場所は、やっと峠を越えたところ。
ゴーレム馬たち、よく頑張った。
そんな言葉を掛けたくなる程度には、きつい峠だった。
総勢50名近いこの旅団の旅も、いよいよ大詰め。
遠くに見えてきた、巨大な町並み。
あれが、この国の首都、王都だ。
これから山を下って、あと一回、途中の街に寄る。
そこは御母君、ホリィさんの所領らしい。
そこで、王都に入ってからの準備、を詰めるそうで。
──つまり。
オレ以下、四姉妹のドレスアップと、社交パーティ準備。
あー。
面倒そうで、やだなあ。
まあ、道連れ居るから、我慢するか。
そんな風に、オレは思っているところ。
親父殿は親父殿で、御母君の実家で針のむしろ確定。
だから、昨日あんなに逃げたかったのか。
でも。
──本気で親父殿が隠れたら、たぶん発見不能。
なので。
あれは、嫌がってますよのポーズじゃないのかと。
そう、思わなくもない今日このごろ。
それは、ともかく。
今の問題は。
バスの出窓から、滝を見て突然言い出した、三女。
ウチの……。
普段から一体何考えてんだかさっぱり分からない。
ある意味、天才な妹の話を問わなければ。
で。
理由は?
「水の小精霊より、報告あり。我、芸の必要ありて」
「オレに解るように、順番に説明してくれるかな?」
「むぅ。……めーねぇには、説明、大変」
スマンな、妹よ。
いちばん物わかりが良さそうな次女は、今出掛けてる。
風光明媚な山並み見て、山遊びしたくなったらしい。
──風に乗って山の中を音速レベルで駆け回ってる。
それは山遊びと言っていいのかな、シルフィ?
というか、君等、二人とも直感型だもんね?
お互い、通じるものがあるから会話不要なんだろうけど。
オレ、正直、君等が何考えてるのかさっぱりでさ?
「滝。水の権能の、支配下」
「うん」
「滝壺より通じる、地下水。我の権能が、感知」
「うん?」
「水流。滞留し、腐敗しつつあり」
「うんん??」
……おい。
説明は全て終わった、的な清々しい顔すんな。
全然分からねえよ。
「で、何故、水芸したいの?」
「……? 我、説明を成した」
「解るかぁぁぁぁ!!」
その後、理由を聞き出すまで。
更に、一時間くらい掛かった。
表で稽古してたセラさん達とサラムも、帰って来た。
で、オレらの話に普通に混ざってたりする。
──今回、セラさんパーティってお仕事なので。
前回の冒険と違って、接点があまりないんだよね。
皆さん、仕事で基本、外に居て。
オレ、ずっと馬車バスの中だから。
……剣の稽古に精を出してる護衛のメイヴィスさんとか。
武芸に目覚めちゃったサラムの方が、ずっと仲がいい。
「え、何、どしたのメテルちゃん?」
「いやウンディの説明が要領を得なくてですね」
「ふんふん? お仕事増える面倒事は、勘弁よ?」
「いや? 仕事自体は増えないというか、すぐなんだけど」
セラさんの言う通りだよな、ウンディ?
こっくり、深く頷くウンディがいた。可愛い。
いやまあ、ここんとこの見解は、オレら同じ、だけど。
「ああ、でも。一応、外でやる話になるから?」
「面倒は止めてよね? 折角実入り良くて楽な仕事なのに」
ほんっとブレないですね、セラさん。
後ろでマークさんやコルトさんが指差して笑ってますよ。
で。
まあ、ウンディが、今からやることっていうのは。
つまり。
「我、地下水道をせき止める害獣を仕留めんとす」
「……がいじゅう?」
「水棲にして、首長、身の丈大きく、水流を吐く」
「水竜じゃないのそれぇ!? 災害級の魔獣よ!?!?」
え、そんな名前なんだ、あれ?
ただの水トカゲですよね?
図体、割と大きいけど。
全長二十メートルくらいだっけ?
でも、大丈夫ですよ?
ウチの子、やるときはやるんですから。
「我の水芸、披露のとき、来たれり」
得意満面なうちの子、可愛いでしょ?
珍しいんですよ、この子の、こういう顔。
……セラさんパーティ、もうそれどころではなさそう。
あの程度、敵じゃないんだけど?
──あ。
オレらは不死だけど。
人間って、あいつとかち合ったら。
軽く死ねるかもな?




