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41話 随行員がひとり、増えました

「違う違う、そこで狙うのは、こっち!」

「はっ、はい師匠!」


 ごんっ、かぁん、ききぃぃーっ!


 ……おお。

 ほんとに、剣の稽古してる。

 凄いぞサラム?

 オレの貸したレイピアって細剣で、長剣相手に互角。

 っていうか。

 むしろ、女性騎士さんの方が防戦一方だね、やっぱり。


 なんで、「やっぱり」かって。

 オレら、身体能力が全員、人間の枠を超えてるから。

 そもそも、身体を動かす速度が思考直結だし?

 動き自体も、人間の筋力を超越した速度出るし。


 今のサラムは、割と気を使って「能力を抑えてる」方。

 全身をバネみたいに使ったりしてる、けども。

 本気の本気でやったら、音を置き去りにするからね。

 ……その場合、着てる衣装も破れるんだけども。


 そして。

 君、師匠って呼ばれてるのね?


「おおぅおぅっ。さーちゃん、かっこいいー」

「サラム、知られざる一面。我、感心」


 次女と三女も、同意している。

 いやオレが宿抜け出したら、一緒に様子見に行くって。


 現在、夜の街外れ、人気のない空き地。

 そこで、かがり火に照らされる女性騎士と、美少女剣士。

 無論、超絶美少女といえば、うちの自慢の末っ子だ。


「めーちゃんめーちゃん、自分がいちばん美少女なのよ?」

「いやオレはごく普通だから」

「しーねぇ、めーねぇはこういう点、頑な」


 そうなのよね、どうしてなんだろう。

 そんなことを呟きつつ、orz体制の次女。

 次女とそれを慰める三女は放置して。

 四女の師匠っぷりを、観察に戻る。


「一歩間違えたらストーカーよ、めーちゃん」

「妹が女子の道に進んだらどうする!?」

「いちばん悪影響与えそうな本人が、無自覚すぎる……」


 三女よ。

 だからオレは、どノーマルでごく普通だと言うのに。

 ……。

 瞑目して首振るなよ。

 なんか、手遅れみたいじゃないか。


 そ、それはともかく。

 今、重要なのは。

 そ、そう。

 サラムの師匠っぷりだ。


 お付きの執事さん侍女さんズのこともある。

 そっち、「三人水入らずで風呂」で誤魔化してるので。

 なんぼ長風呂を装うつっても、数時間で戻らないと。


 ほんとはオレら、お世話とか要らないんだけど。

 彼らの存在意義に関わるらしいので。

 多少は世話「させて」あげないと、心苦しくはある。

 なんか、次女はノリノリで若い執事侍らせてたっけ。


「めーちゃん、男の人に全然興味ないよね?」

「オレはどノーマルだっての」

「その身体になった自覚、ほんとにある?」

「……? いや、女になってるのは分かってるぞ?」


 だめだこりゃ。

 おい、長女にその文句はないだろう。

 それに。

 その言葉は、呟くと空からタライが落ちて来るんだぞ?

 フラグは立てちゃいかんよ、シルフィ。

 というか。

 いい加減、そのジト目はよせっ。


 でもだって、おまえ?

 末っ子が、女性騎士と一晩、二人っきりなんだぞ!

 間違いでも起こったらどうするんだよ!?


「いちばん間違い起こしそうな人が無自覚……」


 ぎぃん!

 聞こえた金属音に、オレら姉妹三人、一斉に壁から覗く。


 疲労困憊、ゼエゼエと息を吐いて地に伏せる、女性騎士。

 息も乱さず、細剣片手に佇むサラム。


 とすっ!

 上空を舞ってた女性騎士の長剣が、地面に突き刺さる。


「完敗です……」

「うーん。やっぱり、厳しいと思うんだよ、ボク」


 おお、ウチの引っ込み思案で人見知りなサラムが。

 あんなに立派に、初対面の相手に、ダメ出しを!


「めーちゃん、めーちゃん? 自分の世界に入らないで?」

「しーねぇ、もう無理。めーねぇ、思い込み激しい」


 なんか雑音がうるさい。

 それよりも。

 女性騎士が、なんか、地面に手をついて懇願してる。


「どのようにすれば、その剣を極められるでしょうか!?」

「だから。ボクの剣って、その、身体能力由来だから……」


 ……。

 ああ、なるほど。

 剣を教えるっていうから、何かと思ったら。

 サラムの「剣術」を、『流派』と勘違いしてるのか。


 ううむ。

 それは、説明しづらいなあ。

 サラムは、火の精霊だから。

 オレの精霊核に「宿っている」状態、なんだよな今。


 で。

 権能で、火の精霊が動くのを感知している。

 ……火の精霊が動くとき、って、いつなのか。

 ──人間や動物、魔物が攻撃態勢に入ったとき。

 そのとき、無意識的に炎の精霊力を動かしてるんだな。


 サラムは、そこを感知してしまう。

 実際に精霊が動く、もっと以前に。

 どこを攻撃しよう。

 そう、思った瞬間、既に火精霊は動いている。

 その精霊が動く前に、サラムは既に避けている。

 普通の人間が、対抗できるわけがない。


 オレ?

 オレも同様に、身体は動くんだけど。

 武器とか、操るの難しすぎて……。

 こ、棍棒!

 棍棒なら、結構戦えるんですよ!?

 だって、力いっぱい殴るだけなんだもん、楽で!


 ウンディやサラムが冒険者資格取るの、全力妨害しよう。

 万年Eランクな長女の立場が、揺らぐかもしれないっ。


「ね? おねえさん、だからボク、教えられないの」

「では! せめて随行し、間近で観察させて下さいませ!」

「ふえ? んっと? いいのかなあ?」


 おい待て四女よ。

 小首を傾げる仕草が可愛すぎてツボったが。

 それどころではなく。

 それは、そこで許可したらたぶん、不味い奴だぞ。

 その人、正規騎士だろう。

 雇用先とか、この街の防衛力とかに影響するし。

 何より。

 ……。

 今晩抜け出したことが、バレるぞ?


「めーちゃんめーちゃん、忘れてない?」

「……何を?」

「いま『三人』でお風呂入ってることになってるのよね?」

「ああ、オレらが抜け出したことバレたら怒られるし」

「……なんで、さーちゃんが抜け出したことバレないと?」


 ……はっ!?

 最初から、バレてんじゃん?!


 …………。

 そういうわけで。

 随行員がひとり、なし崩し的に、増えました。

 ていうか。

 お風呂場に戻ったら、もう一回入らされた。


 ええ、侍女さんズの言う通り、身体冷えてましたので。

 お風呂の良さを説いた手前、肩まで浸かって百数えたし。

 ……にこにこ笑顔全開の侍女さんズ。

 全部知ってそうな気配で、何か、怖かったです。


 あと。

 翌日、出発準備中に、親父殿と御母君、戻って来たけど。

 街の有力者と御母君の間で、何か取引があったっぽい。


「いいのよメテルちゃん? 個人的に、貸しひとつね?」

「借りを作っちゃ不味い人に借りた気しかしない……」


 仕方がない。

 末っ子の成長のためだ。


 さあっ、サラムよ!

 オレと一緒に、添い寝の約束だったもんな!!


「サラム様の護衛となりました、メイヴィスと申します!」


 ……。

 うん、女性騎士さん、よろしく。

 寝る部屋も一緒なのね。

 専属護衛だもん、仕方ないね。

 妹を、よろしくね。


 ……くそう。

 何かが、オレと姉妹のスキンシップを妨害しているっ!?


「めーちゃんあのね、既にスキンシップの枠超えてるから」

「そんな事実ないやい!!」


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