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40話 姉妹で結婚は出来ない不思議

「メテル姉、ねぇねぇっ! ボク今日、お泊りしていい?」


 駄目に決まってるでしょう。

 ……。

 とは、サラムの真剣極まりない顔見てると、言えず。


 え、何ですか?

 反抗期?

 えええ、うちの子、みんな素直で可愛かったのにっ!?


「こらこらっ、さーちゃん。めーちゃん凍っちゃったよ」

「……ふぇ?」

「ちゃんちゃんちゃんとっ、理由言わないとっ」


 ……。

 う、うむ。

 そう、正当な理由さえあれば。

 許諾するのも、やぶさかではないぞよ、妹よ。


「なんかメテル姉、喋り方、変」

「さーちゃん、これ動揺してるの……、指わきわきっ!?」


 オマエの身体はオレの分体。

 つまり。

 身体の弱い部分は、知り尽くしている。

 それを踏まえて。


「……なんか言ったか、シルフィ?」

「うううううんんん、アタシ何も知らなぁぁぁい!?」


 うむ。

 素直でよろしい。

 そういうわけで。

 ……振り出しに、戻る。


「確かに今日は街の宿で宿泊予定だけどもさ、サラム?」

「うんっ。でもボク、お泊りしなきゃなの」


 少し潤んだ、大きな眼差し。

 ちょっとだけ上気した、朱に染まる頬。

 柔らかく濡れた、ぽつんと紅い唇。

 両手を拳に顎の下で、揃え。

 最終奥義──、上目遣い。


 ──。

 堕ちないわけが、あるかっ!?

 精霊の魔性がっ、オレの精神を蝕んでいるっっ?!


「いやいやいや、めーちゃんの妹可愛がりは異常だから」


 なんか次女が小声でツッコミ入れてるが、全スルー。

 なお。

 ウンディは街の船着き場兼荷揚げ場で、魚と戯れている。

 いつでもどこでもマイペースだよね、ウンディ。

 夕飯までには連れて帰らないと。


 そう。

 今日は朝に街に到着して。

 仕事関係があるから、って。

 親父殿と御母君、珍しく揃ってお出かけしてんだよな。

 ……夫婦水入らず? なので。

 オレら、大人しく街で過ごしている。

 いや、オレらだけはね。


 侍女さんズは、補給物資の買い出しに忙しい。

 セバスさん以下、執事さんズは情報収集してるって。


 護衛の冒険者……、まあ、セラさんパーティなんだけど。

 そっちは、街に到着したのでギルドに寄って?

 中間報告とか、なんかいろいろ手続きあるみたい。


 王都の神殿に行ったっきり帰って来ない、レイドさん。

 それを迎えに行くついでだってさ、オレらの護衛。

 順番おかしくない、それ?


 オレら自身?

 完全オフで暇なので、四人で朝から街を散策ちゅ。

 普通に、何の問題も起こさず、大人しく。


「めーちゃん、朝から街で女性の失神者続出させたよね?」

「オレは過去を振り返らない長女だ」


 ふっ。

 斜め45度。

 長身のオレ、妹たちを軽く見下ろす。

 目は細めて、軽く、ウィンク。

 これだけで、普通の女性はイチコロさ。


 ──。

 いや、これが面白くてさあ!

 女物着て普通にしてると、男女ともに及び腰なんだけど?


 今のオレの姿は、貴族の男装騎士風衣装。

 これでポーズ決めると、女の子たち大喜びすんのよ。

 なんかこう、舞台俳優にでもなった気分? みたいな。


「着実におねーちゃんが悪女になってる……」

「オレはマジメで善良な姉ですっ。で。サラム、理由は?」

「う? うっと。えっと。あのね」


 ん?

 なんか、言い出しづらい事情でも?

 と。

 サラムの視線の先、を追うと。


 街の、大通り。

 街灯の、角。

 年若い、赤髪の娘さんがいらっしゃった。

 

 全身、ぴっかぴかに輝く白銀の金属鎧。

 腰に長剣。

 背中に丸盾。

 年齢的にはオレと同じ歳か、ちょい下くらい?

 どう見ても、この街の正騎士さんでしょう、あれ。


 そんな娘さんが。

 サラムに向けて、膝をついてアタマを下げていた。


「……サラム?」

「うー。うっかり、負かしちゃって? 剣を教えることに」


 この子は、ほんとに。

 まだ君、剣を覚えて一ヶ月経ってないよね?

 マークさんも言ってたけど。

 天才すぎるでしょう、ウチの妹っ!


「……泊まりで?」

「だって明日、移動しちゃうでしょ? 今日しかないって」


 そりゃまあ、確かに。

 元々はオレのわがままから始まってるとはいえ。

 行き先の予定は、王都。

 到着まで、約一ヶ月の長旅。

 ここは、食料その他の補給に立ち寄っただけの街。


 悪いけど。

 他所の領地の騎士な娘さん。

 その「個人」のお願いで逗留を伸ばすほど、ではない。

 優先順位。

 そこで考えたら……、無理だよねえ。


「ねぇっ! いい子にするって約束するから、お願いっ!」

「んー。心配だなあ……」

「えー、じゃ、じゃあー!」


 そんな。

 清水級の決意で、サラムが出した交換条件は。

 ……。

 えええ、オレってなんだと思われてるんだろう?


『帰ったら、オレとべったり添い寝する』


 ですってよ?

 成長具合確認が捗りますね。

 ……マジメな理由ですからね?


「めーちゃんめーちゃん、口元、よだれ」

「シルフィ姉、メテル姉が変だよぅ」

「諦めよ? こうなっためーちゃんは、もう止まらないの」


 誰が変態だぉぃこら。

 呆れ顔のシルフィを、じろり。

 オレは心優しい頼れるお姉ちゃんなんだぞ。


 まったく。

 明日、親父殿たちが帰る前に戻るんだぞ?


「うん、分かった! メテル姉、愛してる!」

「オレも愛してるぞサラム、けっこ」


 姉妹で結婚は出来ないんだった。

 なんて欠陥システムだ、ちくせぅ。


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