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04話 四大精霊姉妹

 風の思いついた、案。

 それは、つまり。

 風圧で海を割き、露出した海底に地脈を通す、と。


 いや、笑うしかない。

 どちらも、お互いの属性をフルに活用した方法だからだ。


 今まで、観ることに殆どの力を費やした。

 だが、地脈を通じて移動できる、ということは。

 地脈を伸ばすことも、可能なのではないか。

 その可能性を風は告げた。


 言われてみれば。

 地脈の根を介して、その先で視点変更できている。

 それは、ネットワーク先のPCを操作しているようなもの。

 リモートコントロール限定、ではある。


 地脈を新規に通すのはやったことがない。

 それに、もうひとつ懸念がある。


 懸念しているのは、水面、海底を這う地脈がないこと。

 だが。

 川を跨いで地脈が延びている箇所は、いくつもある。

 海底ケーブルのような形で。

 一度繋いでしまえば、その接続を維持できるのでは。


 試すことに別に否やはない。

 地脈と言っても、ただのネットワーク回線だ。

 だから、やってみた。


 ……できた。


「いやあ。ほんとにあれ、力技過ぎたよねー」

「まあな、結構疲れたし。……楽しかったけどな!」


 からからと笑う、風。

 大地も、苦笑で答える。


 二柱の合せ技で、目的の島に地脈が通った。

 それで、火山島が今は四大精霊の遊び場になっている。


 たぶん、周囲で大津波が発生したんだろうな、と思うが。

 それはまあ、それで。

 どうせ百年もしたら、跡形もなく環境再生するだろう。

 気の長い話だった。


 この頃には、お互い、発声できるようになっていた。

 時間経過が定かではないが、恐らく数千年掛かったか?

 風は空気を振動させて。

 大地は岩を振動させて。

 やり方はそれぞれ異なるが、『声』を発声出来た。

 ──別に必要なわけではない。

 単に、声を発すること自体が楽しかったのだ。


『……ん。(ちー)ねぇも、(ふー)ねぇも、……すごい』


 ぽつりぽつりと、呟くような念話。

 これが、水の精霊。

 カルデラ湖の水に宿っている。


《声ってなに!? 空ってなに!? 地面ってなに!?》


 けたたましい、怒涛の疑問。

 これが、火の精霊。

 火山島の炎に宿っている。


 風も大地も、頬を緩ませる。

 いやお互い頬どころか顔がないが。

 風が連絡しに行って、二百年も話し込んだのがよく解る。


 成熟した大人の人格を持つ大地、風と異なり。

 双子の姉妹は、知識レベルが低く、とても幼かった。

 そして。


「いや、風の気持ち、オレすげぇ理解できる」

「でしょ? 解るでしょ!? ねえねえ、可愛いでしょ!」


 大きく、頷き合う。

 いやお互い首なんかないが。


 風の言う通り、その一言に集約している。

 可愛いのだ。

 知性も幼く、見聞範囲も狭く、未熟。


 それが、堪らなく愛おしい。

 大地、風、共に庇護欲全開だった。


 故に。

 大地は地脈を通して世界を魅せた。

 風は風力を使って移動を楽しませた。

 水も火も、それぞれ固有の力を発展させた。


 水は水脈を通じ、意識を移動する方法を覚えた。

 火は火山弾となり、自身を打ち上げる方法を覚えた。

 それは、四人の司る力を差別化し、または複合化し。


 後に精霊魔法と呼ばれる、独自の技法を編んでいった。


 この頃には、『眷属』と呼ぶ無意識体の精霊が生まれた。

 四大精霊力の残滓から生まれた、小精霊である。


 それぞれに自意識はなく、むしろ四大精霊の意識の分身。

 これは風精霊によって、世界中に撒かれた。

 それもまた、全員の見識を広げた。

 つまり、彼らは世界規模の共同ネットワークを得た。


 こうして、一つ所に集合した、世界に四人だけの精霊達。

 皆、無限の孤独を埋めるが如く、盛り上がった。

 そして。

 四人がそれぞれを姉妹、と自覚するのも早かった。


「いや、オレ、自意識的に男なんだけど?」

「男女の違いとか、どうやって説明すんのよー?」

『……ん? ちーねぇ、……おとこ?』

《おとこってなに!? だんじょって、なに!?》


 ──性別の説明は、困難を極めた。


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