39話 断じてオレは、変態さんではない
ほのぼのまったり、お風呂回です。
約一名、真剣に悔しがってますけど。
「あれあれあれっ。お母様、実は着痩せするタイプ?」
「ふふふ、そういうシルフィちゃんも結構あるのね?」
おお。
女風呂の、女同士の会話。
聞いてるだけで、『妄想』が捗る。
いやあ。
女だけ、女性陣全員が固まって。
上下関係なく触れ合い、語り合うリラックスの場。
慰労、いいもんですねえー。
──。
何故に、オレはそこから除外されているのか。
オレが今浸かっているのは。
その女風呂から軽く1キロメートルは離れた、個人風呂。
地面に適当に穴開けて、熱湯注ぎました。
そんな感じの、適当感極まりない湯船。
……え、だって。
街道脇に停めた馬車(という名の大型バス)の脇。
だだっ広い手つかずの平野を、とりあえず駐車場に整地。
それから屋外食事用の厨房スペース設置。
一通り終わったところで、露天風呂スペース確保。
そこまでは、まあ、順調だったんだよ。
でも。
「おねーちゃんはっ、遠くで入ってねっ!」
なんて次女に強くお願いされてしまい。
現状に至ってしまっている。
──。
だって。
「わたくし、メテルちゃんの裸と、比べられたくないわぁ」
「アタシ、もうおねーちゃんのスキンシップはイヤだから」
「我、のんびり湯船を堪能したい」
「ボク、湯沸かしとかで忙しいの!」
って。
暗に『あっちに行ってろ』みたいな話されると。
正直、凹むぞっ、しくしく。
……えー?
オレの裸とか、全然ごくふつーな体型だし?
姉妹でお触りって、ただのスキンシップじゃん。
ウンディやサラムはふたりの成果だから、解る。
……だからって。
長女をのけものにしなくても、いいじゃんー?
まあ、いい。
オレだって、シルフィの風魔法なくたってっ。
精度は悪いが、地面の振動から遠隔で聴けるもんね。
ここから、男風呂や女風呂の会話、盗聴できるしっ。
地脈を通して、覗き見もし放題さっ。
「……とか考えてるんじゃないですかねえ、メテルさん」
「なるほど、さすがお館様。ご理解が深い」
ぐへっ。
男風呂の親父殿とセバスさん、お見通しかよっ。
ていうか、女風呂だと皆さん隠してないのに。
男風呂の面々、全員タオル装備以前に、そもそも足湯だ。
身体拭いたりしてる面子はいるけど。
装備外して浸かってる人、皆無とは。
いや男のナニとか見たいわけじゃなかったが。
せっかくうちの妹たちが露天風呂掘ったんだから?
ちゃんと浸かってリラックスしろよぅ!
「……と思っているかもしれないですが、湯が汚れます」
……どんだけオレのことを理解してるんだ、親父殿。
なんでこの距離で、オレの思考と対話が成立するんだよ。
て、いうか。
あ、そうか。
ウンディとサラムが女湯行ってる間。
その時間帯は、お湯を入れ替えられないもんな?
……むさい男衆が全力で満喫したら。
そら、どろどろになるわなー。
次は掛け流しタイプで作ろうな、ウンディにサラムよ。
では。
男湯の覗き見はこれにて。
さあ、至高の女湯へ、視界をっ!
「あまり派手にやっちゃ駄目ですよ、メテルさん」
親父殿、ほんとにオレの思考読んでるんじゃないの??
そして。
視界を地脈越しに、いざ女湯へっ!
……。
なんだこれ。
けむい。
水面上、全て真っ白な湯気に覆われている。
権能の関係上。
水が満たされた湯船は、水の大精霊ウンディの領域。
だから、嬉し恥ずかし水中視点、は最初から無理だ。
なのに。
後で視点移すようにさり気なく設置した、湯船脇の岩場。
全部、水蒸気しか見えないんですけど?
「我思う。ぜったい、めーねぇは覗きに来る」
「うんうんうんっ、アタシも同意ー。湯気の制御はお任せ」
「メテル姉、ときどきスキンシップねちっこいとボク思う」
うぉぉぉい!?
姉妹の楽しいスキンシップくらい、いいじゃんよ?!
オレの精霊核の分体なんだからして?
成長具合の確認って、大事だと思うんだけど!!!
「貴方達の話聞いてると……、大精霊って、俗物よね?」
「ううん、お母様? めーちゃんが突き抜けて変なだけ」
がっくり。
姉妹に名指しで変人呼ばわりされてしまっているぞ。
くそう。
許すまじ次女め。
オマエ、今晩寝られると思うなよ?
「うわうわうわっ、今なんか悪寒きた!」
「あら大変。シルフィちゃん、今晩一緒に、寝る?」
「あ、それ嬉しい! 最近、めーちゃんの抱きつき癖がね」
「メテルちゃんって、何でもひとつに集中すると駄目ね」
……ちくせぅ。
落ち込んでるけど、オレは元気です。
そんなこんなで。
露天風呂に入った一日、オレはひたすら孤独に過ごした。
700ポイント突破しましたぁっ。
ほのぼの大好きなっ、皆さんのおかげですー。




