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34話 親父殿が全てを諦めていた

 黒の塔の地下。

 そこには巨大な地下実験場があって。

 オレたち四姉妹は、当然ながら。

 なぜか? そこそこ距離を空けて。

 親父殿・御母君のペアが相対している。


 ……あれぇ?


「オレと、ホリィさん……、御母君が模擬戦するのでは?」

「わたくし、白魔道士(ホワイトメイジ)よ? 黒魔道士(ウィザード)とペアは当然でしょ」


 おおぅ。

 衝撃の事実。

 魔道士にも白と黒の違いがあって。

 一般的に。

 白が治癒・防御系統、黒が攻撃・妨害一般を担当すると。


 白魔道士っていうのは、初めて聞いたけど。

 僧侶の治癒術とは、微妙に系統が異なるそうな。


「あれは精霊の奇跡とかいう、胡散臭い時代遅れよ」

「いえ、ですからホリィさん。精霊は実在してですね」

「実在するっていうなら、目の前に連れて来てみなさい」


 ……。

 …………。

 あのぉ? 御母君??

 オレら精霊四姉妹、地水火風の四属性。

 全員、目の前に、居るんですけどー?


「貴方、連れて来ても信じないじゃないですか」


 親父殿が、本気で途方に暮れている。

 というか、今更ながら、この半年、ずっと。


「ホリィさん、他人の魔力量も測れませんし……」

「貴方が最高峰、わたくしが二番目。これは譲れないわ?」


 このふたりで、このやり取りを繰り返したんだな、と。

 完全に、理解出来てしまう。


 間違いなくいい人、なんだけど、御母君。

 マジで、他人の言うことを全然聞かないんだなあ。


「はあ。こうなったからには、覚悟を決めます」

「……ん? 何の覚悟を?」


 そう呟く親父殿に、聞き返してしまう。

 でも、オレの目線は衣装に釘付け。

 これが、普段の格好とは大違い。


 上質そうなラメの綺羅びやかな漆黒のローブ。

 節くれだった杖の先端には、真っ黒な輝く石。

 心做しか、全身から波動が見えるような気がする。

 表情は、真剣そのもの。

 これが……、本気になった親父殿か。


 ──ホリィさん、御母君がめろめろになるの、解る。

 かっこよすぎる!

 ……いつもその姿で居れば、昼行灯呼ばわりもないのに。

 いや。

 行灯がないこの世界、オレが心中で思ってるだけだが。


 で。


 その、真剣極まりない親父殿。

 ふにゃぁっ。

 唐突に、表情が、笑顔に溶けた。


「最愛の妻と大好きな娘たちに囲まれ世界滅亡。本望です」

「うぉぉぉおい! 初手から諦めんなぁ!?」


 それは、確かにオレも思ったけど!


 って、いうかですね。

 ウチの妹たちは、何してるんだろう。


 きょろ。きょろり。


 首を巡らせると。

 珍しく、ウンディがオレの横で裾を握り締めている。

 で、シルフィとサラムは?

 広い地下実験場の、左右に散っていた。


『空間は、アタシとサラムで支えるから!』

『メテル姉、ボクがんばる! 多少なら大丈夫!』


 お。久しぶりの直通信。

 オレら四姉妹の肉体は、オレ自身の精霊核を分けたもの。

 だから。

 ある程度の距離なら、地脈を通じて意思疎通できる。


 なるほど。

 具象を司る風と火のふたりで、空間を固定する腹か。

 じゃあ。

 直接物理は?


「我。……ちょっと、自信ない」

「あー、オレも頑張るから。ウンディも頑張れ?」

「頑張らなくていい。これ、めーねぇを抑える布陣」

「……は?」


 今更ながら。

 オレ、魔法、ド素人なんだけど。

 ……もしかして。

 ド素人故に、危ないと思われてますのこと?


「そういう意味もある。めーねぇ、出力大きすぎる」

「相談は終わりましたかしら? そろそろ、行きますよ!」


 ウンディの呟きに被せるような、御母君の宣言。

 気が進まない、といった風な、親父殿の大仰な詠唱。


 唐突に開始を宣言された魔法の模擬戦。

 とりあえずも。

 魔法戦なら、魔道士相手なら。

 距離を詰めるのが、セオリー。


 だから。

 オレは、即座に地面を蹴って。

 拳に錬金術を乗せて、親父殿の懐に潜り込んだ。

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