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25話 未踏破領域って、なんですか

「メテル様。僭越ながら、申し上げ難くありますけど」

「忙しいから、後にしてくんないかな!?」


 ずごんっ。

 ごぉんっ、どかぁっ。

 おずおずと言いづらそうにしてるラスティを背後に。

 オレはひたすら迷宮内の魔物と戦っている。


 ラスティって僧侶だから、後衛で戦闘苦手なんだってさ。

 それはまあ、いいんだけども。

 君、自分でついて来るって言ったよね、的な。


「どう見ても、その……、迷宮下層、ですわ、ここ」

「下層? っていうか、ここ、地下何階あるの?」

「いえ、本来なら三層しかない、のですけども」


 むむぅ、と眉根を寄せて考えるラスティ。

 その間も、オレは通路の前から押し寄せる豚人(オーク)のお相手。


 ……自分で力いっぱい振り抜いてて、なんだけど。

 オレの武器、野蛮過ぎないですかね?


 首から上がもげたオークが、オレの後ろに死屍累々。

 手足もげたり胴体に大穴空いたりしてるのもいるけど。

 そりゃまあ。

 数十キロの鉄の塊を猛速度でぶち当ててんだから。

 ……当たった部位、もげるよね、的な。

 たぶん数十トンくらいの打撃力出てる、とは思う。


 いや。なんかね?

 地中に迷宮があるせいか、妙に力が入れやすい。

 地上に居るときの、数倍から数十倍のパワー出てる気が。


 外からは地脈が通らなくて、内部視えないのに。

 ほんとに不思議な構造物すぎる、迷宮って。


 而して、必然的に。

 通路は血の海、内臓脳漿びっちゃびちゃ。

 もはや、足の踏み場もございません。


 迷宮って、こんなにも辛い場所なんだなあ。


「いえ、誠に申し上げづらくありますけども」

「さっきから、何なの? 言うならもう、言っちゃって?」


 壁やら床やらをあちこち調査してる風のラスティ。

 物凄く口籠るのが、だんだん鬱陶しくなってきた。

 っていうか。

 通路の奥から後から後から敵出てくるんだけど!?

 ご家族さん、総勢何匹いるのよ君たちっ!?!?


「恐らくながら……、未踏破領域でございます」

「──はい?」

「ですから、そのまま。冒険者が入ったことがない場所と」


 ……。

 しばし、考える。

 あいや待たれい、オークくんたち。

 待つ前に吹っ飛んで床に臓物撒いてるが、さておき。


 そりゃ、裏口と称して無理やり直通路をぶち掘ったから。

 どこの階層に繋がるか、分からなかったけどもさ?


「え、何? じゃ、シルフィたちが居るのって、上?」

「通常の入り口から入ったのでしたら、そうとしか」

「つか、なんでそう判断できるの?」


 ああ、なるほど。

 通常なら、オークみたいな強い魔物が出ない、と。

 そのくらい、低難易度の迷宮と思われていた。

 ……オレが、反則技で下層直通路を掘るまでは!


「もしかしなくても。オレ、遠回りしてる?」

「未踏破領域でありますので、ここから上がるとなると」

「今から上に登る通路だか階段だかを発見する必要が?」


 ありますね、と神妙に告げられてる間にも、新手が。

 今度はなんか、でかいし角生えて棍棒持ってんぞ。


石人(トロール)でございますわ。上位魔物ですわね」

「やってられっか、場所変え、行くぞっ!」


 力はそりゃ、有り余ってるけど。

 きりがないので、オレたちはすたこらと逃げ出した。

 ……。

 方向音痴レベルMAXのオレ。

 適当に走り回るとどうなるか。

 現在地が不明だったのにうろうろと歩き回ること数時間。


「直通路を塞いでおいたのは慧眼でしたわ、流石メテル様」

「魔物が地上に直通したらそりゃ不味いからでしょうよ」

「それにしても。広いですわね、この階層」

「地上までだいたい七階層ってのは解るぞ」

「さすが地上に降りられた地の女神、精霊様でございます」

「誰が女神だコラ。垂直方向の深さは感覚で解るんだよ」


 もちろんながら、道に迷ったさ。

 つーか、シルフィたちが最深で地下三階なら。

 地下七階付近をうろついてるオレとは、当然ながら。

 ……相当離れてることになる。


「しかし。なんか変だな?」

「変、でございますか?」

「ああ。シルフィの居る方向が、上向きじゃない」


 きょとん、と小首をかしげてるラスティを尻目に。

 少し、感覚を集中させてみる。

 シルフィの身体っていうか。

 四姉妹は全員、オレの精霊核を基礎にしてるからして。

 ある程度までは、どこに居るかを把握できるんだよな。


 確実にやるなら、地脈に視界を伸ばす方が早いけど。

 って。


「あ。内部からなら、地脈、伸びるじゃん」

「はい?」

「ラスティ、ちょっとこの場任せていいか?」

「え? は? 任せる、とは?」

「ぶつけたらごめんな?」

「……??? メ、メテル様の御心のままに?」


 湧いて出る、って表現が正しいくらいに押し寄せる魔物。

 それらを行き止まりの通路でラスティを背に守りながら。

 地脈を伸ばして視界を飛ばす、って荒技を実施。


 この技の欠点はだな。


「メテル様ぁ!? こちらは味方にございますぅ!?!?」


 地脈を通して視界を「増やす」ってことは、つまり。

 完全に脇見運転になるので。

 バーサーカーモードが発動してしまうことだ。

 メテル本体の視界の中で、動いたモノはとりあえず。

 ぶん殴っちゃうぞっ♪


「壁にぴったりくっついて、しゃがんでろ!」

「麗しき美の女神よ、信徒をお守り下さいませっ!」

「誰が麗しき女神だコラ!」


 とにかく。

 普段の数割増しな速度で、地脈が伸ばせた。

 あとは、シルフィの姿を見つけるだけだっ。


 ……見つけるのは、そう時間は掛からなかった。

 見つけるだけならな。


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