表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/200

24話 正体バレしちゃったよ

「あ、そこの精霊様?」

「え、オレ?」


 ……。

 …………!?

 やっ、やっちまった!


 思わず空気が凍る、朝の往来。

 迷宮の入り口から離れて、川沿いに少し離れた小道。

 この先をずっと西に歩けば、橋を渡って街に戻れる。

 そんな、辺鄙で人通りの少ない町外れ、だった。


 行き合った僧侶風の女の子が、声掛けて来るもんだから。

 普通に答えてしまったけども。


 ──自分で正体バラしてどうするオレ!?


「やはり精霊様でしたのね。漸く拝謁出来ましたわ」

「ちょっ、待っ、オレごく普通の一般人だから!」


 頼むから拝むな!

 跪くな!


 ていうか、なんで精霊だと思ったんだよ!?


「精霊殿に仕える司祭ですのよ? 間違えませんわ」

「精霊殿?」

「はい。地水火風の霊を祀る四大霊殿、私は地の者です」


 ……。

 ええと、そういえば。

 確かに、シルフィもオレも、ときどき声掛けとかしてた。

 猿っぽいのと人間っぽいのが大戦争してたときとか。

 あのときは猿優勢だったんで結構全力で人間に加勢した。


 その後。

 その後って、どうしたっけ?

 シルフィに任せてオレは妹たちと遊びまくってた気が。


「精霊の島から去られたと聞き及び、探しましたのよ?」


 ……。

 ああ、確かに。

 親父殿に身体を貰ってすぐ、街に来たわけじゃない。

 主にシルフィとウンディが、人間の情報集めてた。

 それに。


 妹たちにどれくらいオレの精霊核分けるか、って話。

 身長と体型に関係あるからって、結構揉めたんだよな。

 なんか、シルフィが自分とオレの造形を天秤に掛けてた。


 そうか、島の外から見たら。

 大精霊が、全員消えたみたいに見えてたんだな。


「精霊様で、間違いございませんわよね?」

「……なんで分かった?」

「それはもう、魔力の波動が。濃縮されすぎておられます」

「シルフィも、隠すだけ無駄、って言ってたっけ……」


 魔力の扱いに不得手なオレだ。

 それは精霊の力、つまり超絶の濃縮魔力も同じ。

 だから、日頃からそれを隠しておけるはずがない。


 つまり。

 オレの魔力は、普段から放出されまくり。

 主に、地脈を活性化する用にしか使ってないけどさ。


 いや。

 どばどば放出すると、あらゆる植物が全部生育するので。

 ほっとくと、この街も森に沈むことになっちゃうから。

 地脈をちょいと操作して、農家の畑の下に這わせてある。

 ──オレが街に来て以来、周辺の農家はきっと大助かり。


 というか。

 オレ、ぶっちゃけそれ以外の使い道、ほぼ知らないし。


「差し支えなければ、属性をお伺いしても?」

「大地だよ。いいか、内緒だからな?」


 しぶしぶ、オレは正体を晒すことにする。

 満面の笑顔でこっくり頷く女の子の司祭ちゃん。

 ほんとに分かってんだろうな?


「徒に騒ぎ立てを好まぬ奥ゆかしき地霊様、尊敬致します」

「……あー、そういうのいいんで。間に合ってます」


 想定外の信者遭遇だったけど。

 別に信仰の強さを試すとか試練与えるとか。

 そういうネタは、特にやる気がないので。


 オレは、そのまま片手を上げて、踵を返す。

 と。


「……なんでついて来るし?」

「地霊様の往かれるところ、地霊司祭の影ありですわ?」

「地霊様ってやめてくんない? オレはメテル」

「地霊様の御尊名を、私、司祭ラスティがお呼びしても?」


 いいに決まってるっていうか。

 地霊とか呼ばれたら、バレるでしょーがっ。

 オレは静かに暮らしたいのっ。


「メテル様の御心のままに」

「……普通に喋ってくれないかなあ……」


 司祭的に、それは無理らしい。

 ちょっと困ってたので、それはオレも諦めた。


 って、そうじゃなく。

 オレはこれから、大事な用事があってですね?


「差し支えなければ、どのようなご用事で?」

「ん? いや、『裏口』を掘ろうかと」

「──う、裏口? でございますか?」


 割とぐいぐい来るラスティ司祭だったけど。

 オレがやろうとしてることは、それなりに非常識っぽい。

 まあ。

 オレも、そうなんじゃないかなあ、とは思ってた。


 でも。


「オレが、何を司る精霊か知ってんだろ?」

「……豊穣と大地、母性と美の大精霊様!」

「誰だそんな教義考えた奴。責任者呼んで来い」


 誰が母性愛だコラ。

 オレは前世は男だったんだっての。


 でも。

 大地を司るオレだから。

 ──『地中に埋まってる迷宮の裏口』掘るなんざ。

 ちょちょいのちょいっ、あらさっさ、であるっ!!


 ……。

 …………。


「掘れましたわね?」

「まさか三十分も掛かるとわ。どんだけ硬いんだこの迷宮」


 ちょっと泥まみれになったが。

 と、とにかく。

 掘れた。

 破砕工法とかではない、ので。

 逆側の入口の門番さんには、気づかれてないはず。

 では、往くぜっ!


「お供致しますわ!」


 頼んでないんだけど、おまけつきで!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

──少しでも面白いと思ったらっ。評価ボタンを押して頂けますと、感謝感激でございますっ。──


小説家になろう 勝手にランキング

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ