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23話 迷宮にオレは入れないようだ

「この度は、誠にご迷惑をば」

「いや、俺たちもまさかペアで迷宮行くとは」


 ぺこぺこ、ぺこりっ。

 マークさんとオレで、お互いに頭を下げ合う。

 ……なんか、きりがない気がしなくもないぞ、これ。


 シルフィとレイドさんが迷宮未帰還になった、翌日。

 今、オレたちは朝もやの中、迷宮の入り口に来ている。


「だから、未帰還者の捜索なの。許可要らないでしょぉ?」

「そうは言っても、規則だからな?」


 ……迷宮の入り口、門番さんと折衝してるセラさん。

 頑張ってるのは剣幕で解る、んだけど。

 そのお相手の、鎧と槍装備した門番さんの目線、オレへ。


「あれは今回の依頼者(クライアント)。問題ないでしょ」

「問題しかないだろう。Eランクを迷宮に入れられるか」


 うん。

 そうなんだよな。

 昨日の午前中の冒険で、シルフィはDランクに昇進した。

 だから、午後からの冒険で、迷宮に入ってしまった。


 いや何言ってんだ、って感じなのはそうだが。

 初回依頼で昇進って前代未聞の珍事、らしいんだけど。

 依頼の内容を見極めた同行冒険者が認めたそうだ。

 同行者ってつまり、レイドさんとコルトさん。


「ほんとに、シルフィちゃんってばぁ、凄かったのよぉ?」

「ま、まぁ、そうでしょうねえ……」


 にじり寄るコルトさんを避けて、後ずさるオレ。

 どうも、苦手意識がですね。

 だって。

 油断すると、コルトさんオレの肌とか触るんだもん。

 ……こそばゆいっ!

 敏感肌って分かってて触るんでしょ!?


「声を殺して身じろぎする様子が、かわゆくて?」

「声を上げたらもっとエスカレートするからでしょ!?」


 ていうか。

 シルフィがたった半日で昇格したのは、驚きではない。

 シルフィの魔法はオレら四姉妹で随一。

 そして、親父殿を凌駕する風魔法使いだからな。


 あれ?

 人間の身で風の大精霊に匹敵する親父殿も、凄いのか?

 魔道士って実は親父殿以外知らないから、比較しようが。


「セラの魔法を見慣れてると、凄さがケタ違いだったわぁ」

「悪かったわね、ごく普通の魔道士で!」


 セラさん、耳、良すぎ。

 門からここまで、結構離れてるのに。


 そんなことを考えながら、胸元の「認識票」を弄る。

 オレの名前と「E」の文字が彫り込まれただけの、木製。

 これが、ギルドから与えられたオレのランク票だ。


 木製のEランクが、つまり初心者、最底辺冒険者の意味。

 これはランクが上がると素材ごと替えられる。

 つまり。


 Eランク。木。

 Dランク。銅。

 Cランク。鉄。

 Bランク。銀。

 Aランク。金。


 もっと上だとAAで白金とかいろいろあるらしいが。

 そこら辺まで行くと、辺境の冒険者には関係ないって。

 辺境で認定できるのは、Aランクまでらしいから。


 で。


 マークさんパーティで最上ランク保持者。

 Aランクなセラさんが、迷宮門番さんと交渉中の内容が。

 ……つまり、Eランクのオレを入れてくれって話で。


「昨日はこの子の妹ちゃんを入れたんでしょー!?」

「認識票は銅だった。一日で昇級認定したギルドが悪い」

「ほんとに、軍人さんってば融通が効かないったら!」

「ギルドの昇級システムがガバガバなんだろ」


 あー。

 頑張ってくれてるけど。

 あれは、駄目だろうなー。

 ううむ。

 ぶっちゃけ、シルフィは不老不死だからして。

 そこまで生死を心配してるわけでは、ないんだけどさ?


「悪いな、メテル? 連れて行けそうにねえ」

「あ、いや、マークさんのせいではないので」


 深々と頭を下げるマークさん。

 ほんっと、誠意の人だよなあ。


 一緒についてってるレイドさん、ただの人間だから。

 そっちの方が、心配だよね仲間として。

 オレも、申し訳なく思ってる。

 たぶん。

 シルフィの、無茶を断れなかったんだろなと。

 あいつ。

 結構、オレら姉妹以外には、無茶苦茶やる奴だから。


 ──正直なところ。

 一緒に「連れ回されてる」レイドさんの生死が、心配。


 うん。

 じゃあ、邪魔になってるのは、オレだ。

 同行するのは、諦めるとしよう。

 と、セラさんに告げる。


「……ほんとにいいの? 妹さん、心配でしょ?」

「あ、いや。探す方法は、ありますし」

「えっ? どうやって?」

「あー、えーと。とにかく、あるので」


 愛想笑いするしかない。

 言っても理解できないっていうか。

 ……正直、「オレ自身が人間じゃない」ってバラすのは。

 人間って、異分子を超絶嫌うっていうか、迫害するから。


 ──街から追い出されたりとか、そういう不安がね?

 他の姉妹はともかく。

 オレ、結構、人間に混じって暮らす今の生活……。

 超、気に入ってるのでっ!


「んじゃ、オレ、準備あるので一度、帰ります」

「あ? ああ。安心しろよ、必ず連れ戻るからな、妹さん」

「……はい。よろしくお願いしますね!」


 ぺこりっ。

 全力でマークさんたちに頭下げて、それから町外れへっ。

 サラムとウンディはムギリさんに頼んである、問題ない。


 ──オレ単独で、精霊魔法使うの初めてだな。

 魔法苦手なんだけども、制御できるかしらん?


 でもっ。

 腐っても、四大精霊、地の大精霊なオレの権能。

 地下なら、オレの領域だ。

 長女の意地で、頑張るぞー!


 ……こういうときこそ、「男の意地」とか言いたかった。


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