22話 今度はシルフィも居ないんだってよ
「コルトさんっ、助けてー!」
「透け透けで艶めかしいメテルちゃん、そっちのお誘い?」
「絶対に違うー!?」
……はい。
昨日の今日で、コルトさんの服飾店に舞い戻り。
もう夕方なので、サラムは家に預けて来た。
ムギリさんが様子を見ててくれるっていうから安心。
っていうか。
今、オレはそれどころではない。
「いっ、一張羅で、きっ、着替え、持ってなくてっ」
「ああ、はいはい。武器は決まった?」
「ふぇ? えと、一応、両腕で棍棒振る感じに」
「んー? トンファーに近いかしら。大丈夫よー」
汗で透けまくって焦ってるオレに、にっこりコルトさん。
武器が決まってから、肌着選ぶつもりだったと。
え。
じゃあ。
「多少透けるとは思ってたけどぉ、随分汗かいたのねぇ?」
「透けるの知ってたなら言って下さいよぉ!?」
にこにこと笑うコルトさんには、効き目がないようだ。
魔法の手付きで下着姿にされたオレ。
そのまま、更衣室に強制連行されましたとさ。
「下着は動きを阻害しなかったでしょ?」
「あ、はい。動きやすかったです」
「うん、なんとなくだけど、全身を使う気がしたのよね」
「……? なんでです?」
「筋肉の締まり具合。日常的に全身運動してる体つきよね」
怪しい目つきのコルトさんが、オレの全身をねっとりと。
ひ、ひぃっ!?
視姦されるぅっ!?!?
「いやぁね、ついつい武闘家目線で見ちゃったわぁ」
「あ。マークさんも、コルトさんに習ったらって」
「マーク? …あ、カームか。あの子、私のことなんて?」
ちょっと、目線が遠い目になったかな?
うーんと。
プライベートだから、当たり障りなく?
「ええと。昔は、かっこよかった、って」
「ふふ。昔は大きくなったらお嫁さんになるってねえ」
うぉぉい!?
そんな個人情報バラしまくっていいんですかね?!
ええ、何、つまり?
マークさん=カームちゃん=女の子?
いやそういえば、確かに……、妙に線が細かったし。
腰つきや肩幅も、言われてみれば丸みを帯びてたし。
……口調は乱暴だけど、声も高いよな。
仕草も、女の子そのままだし。
体の線出る革鎧なのは、重い金属鎧を装備できないから?
あるぇ?
マークさん、性別全然隠せてなくない?
「あの子が男の子っぽいのは、私の逆を張ってるだけなの」
「ぎゃ、逆を?」
「私も昔はあの子の誇りにって、無理して頑張ってねえ」
は、はあ。
思わぬ素性のお話は、さておき。
あ、あの。
コルトさん。
その、両手に構えたなんだか、いやらし系の下着は一体。
「その肢体見て、閃いたの。メテルちゃん、似合うわよ?」
「似合ってもそんないやらし系は、いやだぁ!?」
ううう。
どうしてコルトさんには逆らえないのか。
手も足も出ないとは、正にこのこと。
関節技を極めた武闘家、恐るべし。
再び、オレは全身を堪能された。
ここでこういうの着たとか、絶対に秘密ですよ!?
「最後ノリノリで鏡に妖しいポーズ取ってたじゃないの」
「こういうオレもなんかいいなって、秘密です秘密!」
で。
誂えて貰った服は、武闘家っぽい衣装になった。
下着類はあんまり前と変化ないけど。
上着との間にそれなりの厚みの布地を挟んでる。
これは、汗の水分を吸い取って放出する生地らしい。
なので、身体はぽかぽかぬくぬくだけど、濡れない。
透ける心配とはおさらばだぜ、ヒャッハー!
そこから更に、新規で用意して貰った上着。
これは金属糸を編み込んでて、防御力高いそうな。
それを、胸の上と下で割とキツめにベルト留め。
あと、前は開いてるけど、後裾も結構長い。
膝裏の下くらいまではあるかな?
洞窟内は結構気温が低いので、重宝するらしい。
「で。衣装代なんですけど、少し待って貰えます?」
「さっき魔法屋さん、料金まとめて置いてったわよ?」
なんですと?
親父殿、帰宅したのかな?
どこ行ってたんだろ??
コルトさんにお礼もそこそこに。
オレ、とんぼ返りで帰宅、したんだけど。
「我、お留守番偉かった。メテルねぇ、褒めるべし」
「あれ、ウンディだけか? 親父殿は?」
「父上、まだ用事あると。当面の生活費、預かり置いた」
「……はい?」
えええ?
親父殿、ほんとにどこで何してんの?
ま、まあ、無事が確認出来たから、いいのか?
と、とりあえず。
シルフィが帰って来るまで、待つか。
そう思って、夕飯の準備を始めたんだけどさ。
──今度はシルフィまで、帰宅しねえんでやんの。
おいおい。
っていうか。
シルフィと一緒に、レイドさんも戻ってないと。
午前中はシルフィとコルトさんで、森で薬草収集依頼。
で、一度ギルドに報告と報酬確認とかで戻ってんだよな?
コルトさん、午後から店の営業再開したって言うし。
その後に、午後からレイドさんと別依頼で出掛けたって。
……行き先は?
街で唯一の、迷宮。
ダンジョン未帰還、らしいです。
……心配させんなよ、シルフィめっ!




