199話 オレ、幼女にされる
「で。説明!」
くっそ、くそぅ。
周囲の目が、めっちゃにやにや視線。
オレを、みんなで『見下ろして』くれちゃってんのが。
超、むかつくんですけど!?
──。
所変わって、魔王城。
いや、元は女王城なんだけども。
騒動に携わった面々、全員玉座に勢揃いちゅ。
セラさん?
また逃げたって。
ロックさんとウンディ、一緒にまた追いかけてった。
……逃げたっていうか。
アレ、魔王陛下の直属隠密で。
魔王の魔法で隠蔽されてるから?
なんぼウンディと言えども、見つからないのでわ。
なんでも。
そもそも、見た目通りの種族や年齢じゃないそうで。
ロックさん?
……生きてる間に、捕まえられるといいですね……。
「ねねね、めーちゃん? うちの妹にならない?」
「やかましい、オレはこれまでもこれからも長女なの!」
見上げるほどの背丈のシルフィが。
オレを、軽々と胸に抱っこ。
ちくせぅ、背中に伝わる胸の感触。
シルフィが、巨大になったのではなく。
オレ。
大地母神デメテルと、分離した関係で。
師匠や御母君より多少大きい程度の、幼女の姿に。
て、いうか!
女神の身体から分離したのに、なんで女の子なんだよ!?
「あはは。ボクの分け身として分離したからね」
にこやかに、それでいて、若干困った風の女神様。
いやほんとに、大地母神デメテル、なんだけど。
オレの本名と同じで、ややこしいので?
そのうち、名前変えるそうな。
その女神様。
玉座の隣の、王妃席にちょこんと。
その膝には、ぐっすりおねむな師匠。
師匠の眷属、オレが無理やり奪っちゃった関係で。
物凄く、怒られまくったんだけど。
あんまりにもうるさいので?
魔王陛下から、問答無用で眠らされているという。
ちなみに。
女神様の着せ替え人形状態で。
いま、カエルの着ぐるみパジャマを着せられている。
……どっちも魔王の奥さんなんだよね?
正室と側室で、仲がいいんだか悪いんだか。
「そういえば、サラムってどうなってんだ今?」
「おうおう王国で、真面目に学生やってるでしゅよー?」
じたばた暴れるのを諦めて。
シルフィに、されるがままのオレ。
別に?
シルフィに世話焼かれるのが、イヤってわけじゃないが。
扱いが。
幼女っていうか、赤ん坊の扱いだぞお前。
とりあえず。
赤ちゃん言葉だけは、やめろこのやろう。
何がいい子でしゅねー、だ。
オレは長女なんだぞっ!
「あ、いっこだけ注意。地の権能、以前より弱いからね?」
「へ? って、ああ。オレ、使ってましたのことね……」
女神様から、困ったように。
ううむ?
無自覚ながら。
オレ、どうやら。
知らないうちに、女神様の権能を使ってたらしく。
……ぶっちゃけると。
オレの器に余る、強大すぎる力なので。
それで。
海の上とか、地面から離れると急激に眠ってたのとか。
負荷、掛かり過ぎだったらしいのだ。
な、なるほど。
でも、まあ。
女神様が分離して、ほんとに地の大精霊単体になった。
つっても。
全力出すと、人類滅亡確実。
そういう感じで。
あんまし?
力の質的に、大きな変化って感じはしないな。
あ。
ひとつだけ、大きな変化、あったか。
なんか?
オレ、どうやら。
親父殿を、異性として意識してたっぽいのだが。
……分離した影響なのか?
心配して会いに来てくれた、親父殿に会っても。
以前みたいな?
謎のどきどき感、なくなっておりまして。
……なんだったんだろうな、アレ。
まあ。
とりあえず。
御母君との間で。
親父殿を取り合うようなことは。
もう、ないと思う。
──勝てる気なんか、しないけどね?
あの夫婦、ほんっとにらぶらぶなんだもん。
あ。
そうそう。
らぶらぶと言えば。
「つか、そろそろ生まれるんだろ?」
「あ、そうそう。そうなのよめーちゃん!」
だから、早く帰ろう?
って。
ああ。
師匠も、軽くあと十年は寝てるらしいので。
オレ、この島ですること、もうないし。
帰ろうか。
なんでかって。
……ほんとの本気で。
急いで頑張って成長した御母君と。
御母君に無理やり若返らされた、親父殿。
の。
間に。
子供、出来たそうです。
御母君。
頑張って成長促進してたの、このためですかー。
つまり。
生まれる子供は。
オレら四姉妹の、妹。
……やべ。
顔、にやける。
シルフィも、最初からにやにやしっぱなしだし。
よし。
んじゃ。
魔王。
じゃあなっ。
もう、来ないからなっ。
オレ。
王国に、帰るぜー!
「そう遠くない未来に、また会いましょうねメテルくん」
「不吉な神託はやめろぅ!?」
オレらの笑みは、爽やかにこにこだが。
あの魔王の笑みは。
どす黒い、暗黒神の笑みだ。




