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187話 早々と、メルちゃんと二人きり

 がたごと、がたごと。

 荷馬車はゆーれーるー。

 ……いやこの馬車、生半可なことじゃ揺れないんだけど。


 親父殿が作った永久磁石? みたいなの。

 それが、サスペンションに入っていて。

 リニアモーターカーみたいな感じで、常時?

 荷台と車軸が、磁力で浮いてるそうです。


 まあ、車輪が空気タイヤじゃなく、普通に金属製なので。

 普通の馬車より遥かにマシ、って程度であって。

 絶対に揺れないってわけではないんだけども。


 いいとこ、前世の電車レベル、かなあ?

 ゴムが発見されてないので、タイヤはオレも作れない。

 ただ、材料があったところで?

 気密ゴムタイヤとか、オーパーツもいいとこだけどな。


 話が逸れた。


 そんなわけで。

 豪華絢爛、親父殿謹製のゴーレム馬車で。

 ただいま。

 島の北東部へ向かって移動ちぅー。


 この馬車、設備も飲食物も、ガン積みしまくりなので。

 旅路には、何の支障もないのである。


 ただ。

 予想外の、難点が発生したんだけども。

 それは、何かと言うと。


「ううぅ……、うえぇっぷ……、けふんけふん」

「あー、無理せず全部吐いちゃいな? 楽になるから」

「移動早々、申し訳ないです……」


 マークさんに背を支えられて?

 よろよろと、トイレへ向かうメルちゃん。

 意外や意外、というか。

 メルちゃん、馬車に乗ったことがなかったそうで。


 乗り物酔いで、超絶苦しんでいる。

 なので。

 移動速度、普段の半分以下、なんだけど。


 乗り物酔いって。

 なりやすい人って、移動速度がどう、ってわけじゃなく。

 三半規管が乗り物に対応出来ないのが、原因だから。

 ほんとに。

 乗り物自体に慣れるまで、収まらないんだよねえ。


 ちょこちょこユリちゃんが回復呪文、唱えてるけど。

 根本原因が、除かれないから焼け石に水。


 うーん。

 このままだと、旅程の予定日数を超過しそうだし。

 ここは、一発。

 ペア予定のオレが、一肌、脱ぎませうか?


「メテルたち、ここから別行動すんのか?」

「うん。ウンディがそっちに付けば、地理は大丈夫っしょ」


 マークさんに伝えて。

 半開きの扉越しに、メルちゃんちらり。

 ……めっちゃえずいてるなあ。

 馬車降りた後も、軽く休憩が必要だろうな。


 んでも。

 師匠の配下が今んとこ、三人しか居ない関係で。

 可能な限り、島内で獣人同士の戦闘は避けたいと。


 そういうわけでー。

 オレらが女王の名代で。

 島の各地の獣人集落を巡って。

 情報収集と、ついでに避難民の招集を、と。


 そんな感じの役割を、仰せつかってるので。

 あんまし、日数を引き伸ばせないんだよねえ。


 なので。

 メルちゃんには、悪いけども。

 大人しく?

 オレに、担がれるべしっ。


「あのな、いいか? 女の子は優しく繊細に扱うんだぞ」

「??? いつも優しくしてるけど?」

「メテルのは優しくっていうよりも、陵辱というか……」

「ふぇ?」

「ああ、もう。ほんとに無自覚なのが腹立つな」


 マークさんがキレた。

 あの。

 オレの代わりに、ティーマに言い聞かせないで下さい。


 ティーマも。

 マークさんから見えてない筈なのに。

 きりっ、と右手で敬礼してんだよ。

 お前は、ご主人をもう少し信用しろと。


《マスターが女性好きなのは、よく存じております!》

《だから、ほんとに誰なんだよそういう噂流してんの》


 きょとん、と目を見開いて。

 軽く小首を傾げたティーマが、ちょっと可愛かった。

 指で頭や身体をつんつんしておく。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「じゃ、ここで一旦別れるが……、ほんとにいいんだな?」

「大丈夫だよー、メルちゃん休ませたらすぐ追いつくので」


 立ち上がる気力もないメルちゃんを、お姫様抱っこで。

 オレら二人、ここで途中下車。

 遠ざかってくゴーレム馬車を、しばらく見送る。


 さて。

 ここで降ろして貰ったのは、水場があるからで。

 ええと。

 地獄イヤー!


 さわさわさわ……。

 ざぁぁぁぁ……。

 うむ、あっちか。


 日差しもほどほど、風はそよそよ。

 腕の中には、うさ耳美少女。

 若干、悩ましげな表情ながら、よく寝てる。

 いいシチュエーションですねえ。


 ……ていうか。

 警戒心、なさすぎじゃねえのメルちゃん?

 オレの迸るリビドーが、爆発したりしたら。

 身の危険ですよ、メルちゃんっ?


「……メテル様になら、全てお任せしても……」

「うさぎさんがタヌキ寝入りしてんじゃねえっ」


 こつんっ。

 軽く額をぶつけて、そっと地面に降ろす。

 多少ふらつきながらも、歩けるまで回復したようだ。


 ……なんですか、その残念そうなお顔はっ。

 ぷぅ、って頬を膨らませない。


 んじゃ。

 軽く、水場で休憩して。

 体調戻ったら、出発しよか。


「メテル様、野外宿泊の経験は?」

「んあ? そういえば、この姿ではないかも?」


 この姿?

 って、ちょっと首を傾げられたけど。


 いや。

 以前は身体がなかったし。

 そもそも屋外で意識を得たから。

 屋内で寝てる時間の方が、実は圧倒的に短いんだけど。


 メルちゃん的には。

 体調が戻ったら?

 野外キャンプ的なおもてなしを、したいようで。


 うーん?

 移動速度で言えば?

 獣人なメルちゃんの、全力疾走と。

 精霊なオレの単純な走りで。

 軽く、ゴーレム馬車の最高速度をオーバーするわけだし。


 元々、休憩で時間使う予定だったんだから。

 野営くらい、してもいいかな?


「では、狩りを張り切りますね!」

「ちゃんと体調が戻ってからね」


 道を逸れて、草木を分けて沢に降りてく途中。

 足がもつれて転びそうになるメルちゃんの腰を、支える。


 そこから。

 何故か、オレの腕にびったり張り付きっぱなしに。

 あの。

 さすがに、そこまでされると。

 オレも、動きにくいよ?


「メテル様……、お慕い申して」

「はいすとっぷー! オレはそっちの気、ないからぁ!?」


 なんで周囲の女の子、どんどんそっちに転んでくのさ。

 これはきっと、暗黒神の呪いに違いない。


 くそぅ、魔王めっ。

 だめだあいつ、早くなんとかしないと。


 と。

 そんなことを思いながら。

 とりあえず、野外キャンプをやってみよぅー。


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