表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
184/200

184話 血と臓物の祭典

 ずどん!

 べしゃぁっ!!


 振り抜いた棍棒の、先で。

 首から上が、粉々になって吹き飛ぶゴブリン。

 ……ゴブリンって、ほんとどこにでも居るんだな。


 ええと。

 壁の染みになったアタマのパーツから、目を逸らしつつ。

 討伐証明部位ー。

 ……。

 耳も木っ端微塵だっ!?


 しまった。

 次は、頑張って胴体を狙おう。


 ……そして。

 超、くしゃい。

 周囲一帯、血と臓物の匂い。

 お鼻、つまみつまみっ。


 ──やりすぎたかな?

 落とし穴から入り、下層へ放り出された直後。

 ゴブリンとホブゴブリンの群れと、鉢合わせしたので。

 軽く棍棒振り回しの、全滅させたんだけど。


 床には大量の血が溜まるわ。

 壁はおろか天井まで真っ赤に染まるわ。

 スプラッタ風味、全開。


 しばらく、トマトは食べられませんね。


 いやまあ?

 全部の頭を吹き飛ばしたわけでは、ないので。

 ポッケには、何匹かのゴブリンの耳が、ぎゅうぎゅう。

 ……血が染み通って、内股に垂れて気持ち悪い。

 早く合流して、探索終えて外に出たいところ。


 そして今回こそっ、冒険者ランクを上げるんだ!


 と、いうわけで。

 何階層かも解らんし、マップも不明で。


 とりあえず?

 迷宮踏破の鉄則。

 右壁沿いに、進んでるところだけども。


 ……上に上がる階段が、見つからないー。

 ちょっと嫌なことに、思い当たったんだけども。


 迷宮の通路が、全部外壁に繋がってると仮定したとき。

 左右壁沿いのどちらかで、入口出口に到達できる。


 けども。

 通路が外壁に接続してない場合?

 壁沿いに歩いても、出口に到達できず。

 内側を、ぐるぐる回ることに。


 そして。

 迷宮って。

 出現する魔物の死体って、一定時間が経過すると。

 迷宮に吸収されて、消滅してしまうので。

 目印にも、ならないんだよねえ。

 壁につけた傷や印も、同様。


 つーか。

 いま倒したばかりの、ゴブリンたちも。

 既に、血の量が減りつつあるし。


 むー。

 これは、やっぱり。

 ……全力全開で、討伐速度を上げれば。

 吸収前に、元の位置に戻れるかもしれませんね?


 そうと、決まればっ。

 さあ。

 カドから覗いている、そこのスライムさんっ。

 ほら、怖がらずに。

 こっちへ、おいでなさいっ。


 さあ。

 殺戮の、時間だー!



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「正直、嬢ちゃんだとは思わなかったぜ」

「誠に、申し訳なく」


 ざばざば、ざあざあ。

 オレ、通路に座ってひたすら水を、掛けられ中。

 水の権能持ちな、ウンディが居るので。

 水関係は、ほぼ無尽蔵。

 ただ。


「めーねぇ? これ、落ちる気配がない。諦めて」

「もうちっと頑張れよぅ……」

「洗剤にするための触媒が足りない。植物系の魔物が必要」


 しくしく。

 最速の魔物退治あんど踏破、をやってたら。


 なんか。

 倒すの自体が、妙に楽しくなってしまい。


 当初の目的、そっちのけで。

 同じ通路を、ぐるぐると。

 殺戮破壊で、周回してたら。


 ……全身血まみれの、魔物だとロックさんは思ったとか。

 そ、そんなっ。

 こんな可憐で清楚なメテルちゃんを、魔物だなんてっ。


「赤黒い血と臓物が衣服に染み通って、多層になってる」

「むー。この衣装、気に入ってたんだけどなあ」


 廃棄確定らしい。

 取れないんだって。


 そして。

 凄まじい血の匂いで?

 確実に、魔物を引き寄せるので。

 離れて歩け、って言われました。

 ふえぇん。


 でもでもっ。

 一応、最初の討伐証明部位は。

 ちゃーんと、ポケットに入ったままなんだぞっ。


「ん? この島には冒険者ギルドがないから、無駄だぞ?」

「!? な、なんですと!?」

「そもそも冒険者クエストじゃないから達成報酬もないし」


 がぁん!?

 じゃ、じゃあっ。

 討伐自体、無意味じゃないですくぁっ!?


 と。

 ロックさん、めっちゃ呆れ顔で。


「探索任務で潜ってるんだから、宝箱も素通りだって」


 言っただろう、って。

 ふ、ふえぇぇ。


 しかし。

 泣きべそかいてたら。

 ロックさん、A級冒険者のツテで。

 王都に戻ったら、なんか一筆書いてくれるって。

 わぁい!

 ロックさん、大好きですよぅ!!


「めーねぇ? ロックと結婚したり?」

「全力でご遠慮させて頂きますっ!」


 ロックさんも、更に呆れて。

 そもそも身分違いだから、無理だそうです。

 ロックさん、最下層の騎士爵だったっけ。


 そういえば。

 オレら、一応とはいえ身分は公爵令嬢なんだよな。

 既に婚姻っぽいことになってる、次女のシルフィ。

 あれは、どういうからくりなんだろうか。


 ふーむ?

 帰ったら、聞いてみよう。

 忘れてなければ。

 ……忘れそう。


「さて、目的の一部は達成出来たぞ」

「ふぇ? オレを見つけるまでに、なんか発見が?」


 むしろ。

 オレを見つけるため、だけに?

 調査対象を、通過して。

 最下層に近いとこまで、下って来てくれたそうで。

 ……重ね重ね、面倒をお掛けしました。

 ぺこり。


「帰りにもう一度通るんだが……」


 つまり。

 セラさんたちは、発見出来ませんでしたと。

 ただし。

 迷宮内で、捕まえた獣人たちを、尋問して?

 行き先と、内部で何を作ってたかは。

 判明しました、と。


「迷宮内で植物系の魔物を倒してだな」

「我の調査によれば、魔物を原材料とする麻薬の生成」


 はあ。

 そんなもん、作れちゃうんですね。

 て、いうか。

 獣人の、しかも成人にしか効かないそうで。

 ……んー?

 マタタビみたいなもの、なのかしら。


「近い。獣人で恍惚を齎すが、人間には反応しない香料」

「へえ? それで何をしてたんだろう」

「興奮状態中に暗示を掛けると、これに逆らえなくなる」


 ……うわ。

 催眠系の香料、っていうか。

 そこまで危ないと?

 それ、もう毒だよね。


「王国で知られてない、未知の麻薬だな」

「恐らく、この島の獣人に伝わる興奮剤と推測する」


 シャーマンとか巫女さんが、祈祷中に焚くみたいな。

 元々は、そんな使われ方だったんじゃないか、と。


 ああ。

 コーヒーっていうか、カカオ豆も?

 元々は南米の部族がそういう使い方してた、って言うし。

 そういうものがあっても、おかしくはないよね。


 ……え。

 じゃ、じゃあ。

 発見できなかった、セラさん。

 そういう危ないヤクを抱えて?

 島中の獣人族の間を、巡って広めてるのでわ?


「既に相当量の麻薬を生成して、携行してるらしいんだよ」

「精製した粉末は、薬効は同じにごく微量に濃縮される」


 携行性、抜群じゃないですか。

 ぐえー。

 急いで、女王城に戻って報告しないと。


「嬢ちゃんが落下しなきゃ、早く戻れたんだぜ……」

「誠に申し訳、ございませんでしたぁ!」


 その後。

 迷宮内部から裏口を地上にぶち開けるのと。

 ふん縛った捕虜の獣人を、担いで移動するの。

 文字通り、馬車馬のようにこき使われました。


 あのぉ。

 女の子にやらせる所業じゃ、ありませんよねこれ。


「嬢ちゃんたちのことは、人間と見ないことにしたんだ」

「酷いっ、酷すぎますよロックさんっ!?」


 ブラックロックさんだー!?

 これが弓使ってたら、シューターでしたね。


 ちくせぅ。

 とりあえず。

 お城に、戻ったら。

 師匠の、指示判断待ちフェーズですなー。


 その前に。

 オレ、お風呂に入りたいでっす。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

──少しでも面白いと思ったらっ。評価ボタンを押して頂けますと、感謝感激でございますっ。──


小説家になろう 勝手にランキング

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ