表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
180/200

180話 なんかオレ、おじゃま虫でした

「おお、嬢ちゃん。助かったぜ」

「……どぉゆぅ状況??」


 たったかたー、っと。

 精霊通信による、ウンディのナビゲーションで。

 オレ、ロックさんが隠れてた岩場に到達。


 岩場、っていうか。

 山岳の途中の鍾乳洞、みたいな場所。


 その、奥から山岳の裾野、下手側を覗くと。

 森を切り出したみたいな?

 真新しく、ぽっかりと開けた空間が見える。


「原始的な神殿、だと思うんだよな」

「んー? ああ、確かに。あっちが祭壇で、中央が広場で」


 額に手を翳して、指差しながら説明するロックさん。

 狭い岩場で、ロックさんに寄り添いつつ。

 指差す方向を、確認。


 祭壇の奥に、ログハウス風の丸太小屋があるけど。

 普通の小屋と違って、大きく祭壇側が開いていて。

 ここからじゃ、角度が悪くて見えないけども?

 奥に、祭祀みたいなもんがあるんじゃないか、的な。


 祭壇の両脇では、大きなかがり火が焚かれてるし。

 武装した獣人が、警戒するように周囲をうろついてる。


 けど。

 神官風の、ローブを着た獣人が通ると?

 一斉に、武装した獣人がひれ伏す。


 なるほど。

 宗教施設、というか。

 神殿な雰囲気ですなあ。


 ……。

 え?

 もしかして。

 セラさん、地霊殿のお偉いさんになってたし?

 ラスティ率いる、大地母神派と宗派争いしてたらしいし。


 つ、つまり。

 地霊殿の信仰、みたいなもんを広げたのなら。

 祀られてるのって。

 オレ、ですのこと?


「その可能性は高いと思うんだが……、問題はだな」

「はい?」

「獣人ってな、元から精霊信仰っていうか」


 ロックさん、なんか難しそうな顔。

 確かに、島の女王陛下な師匠の話によれば。

 精霊信仰っていうか、シャーマニズムというか。


 万物に宿る精霊に感謝を捧げながら、利用する。

 そんな感じの、土着の宗教みたいなもんがあったかと。


「恐らくなんだが? セラがやってるのは、新興宗教だな」

「……カルト?」


 むぅ。

 な、なんか話が小難しく。

 セラさん、あれでも割と高位の冒険者で、魔道士だから。


 ロックさんの、推測では。

 魔道士が少ないこの島で?

 原住民……、つまり獣人の集落を巡って。


 精霊の奇跡、みたいなもんを魔法で実演しながら。

 地霊の信者を獲得しつつ?

 勢力を、増してるんじゃないかと。


 最終目的が何なのか、とか。

 そういうのは、まだ不明だけど、と注釈付きで。


 ああ。

 言われてみれば。


 確か。

 城に置いて来ちゃったけど。

 兎人族の、メルちゃんたち。


 男衆が先代族長に、率いられて。

 精霊の生まれ故郷を、破壊しに行った。

 みたいな、話をしてましたよね?


「ああ、なんつーか、破壊と再生、みたいな話で」

「??」

「多分だぞ? 選民思想を、広めてるんじゃねえかなと」

「ほえ? 選ばれし勇者よ、とか」

「当たらずとも遠からずだな」


 忌々しげに、ぺっ、とツバを吐くロックさん。

 んー?

 ああ。

 そういえば?

 襲ってきた豹人族も、男衆ばっかだったような。


 元々、集落の中で力を持ってるから?

 選ばれし勇者、とか。

 地霊に選ばれた強者、とか。

 そういう、特権階級みたいな立場。

 認定されると、ものすごくいい気分になりやすい?


「そういうこった。王国で喩えるなら、お貴族様だな」

「……あれ。ロックさん、一応貴族さんなのでわ?」

「俺のは任務上仕方なくだな」


 はぁ、と大きくため息。

 まあ。

 ロックさん。

 今も、腕利きの盗賊、みたいな風体だし。

 どうやって騎士認定されたのかは、聞いてないけど。

 生まれは、平民なんでせうね?


「平民どころか俺らは戸籍外、貧民窟の出だぜお嬢ちゃん」

「あ、ごめんなさい?」

「いや別に構わねえけどな」


 嬢ちゃんたちは、普通の貴族様とかけ離れてるからな?

 って。


 まあ。

 我が家、かなり普通の貴族と違いますもんね。

 正真正銘の、貴族のご令嬢なら。

 こんな最前線まで、身一つでは来ないやな。


 いや、護衛つけられたって。

 オレら、緊急時の移動は地脈や水脈、空中移動だから。

 護衛さんが、ついて来れない問題あるし。


 ……そういえば。

 調子崩してた、正真正銘の貴族令嬢なユリちゃん。

 大丈夫かな?

 環境変化で疲れが出たのかな、と思うけど。


 マークさんと二人っきりになりたがってたので?

 割と、放置気味にしてたけども。

 帰ったら、様子見に行ってみようか。


 と。

 ロックさんと、推測を繰り広げてたらば。


 ぎゅむっ!


「おい、こらウンディ? 狭いんだから」

「めーねぇ、ロックにくっつきすぎ」

「んあ? 仕方ねえだろ、足場が狭いんだよ」


 なんか、眉間にシワ寄せた、ウンディが。

 オレとロックさんの間に、無理やり割り込み。


 ……あれ?

 ウンディ、お前、背丈伸びた?

 身体つきも、ちょっと大人びたような。


「ロックが子供扱いするから。我、急いで成長した」

「……じろり?」

「な、なんだよ嬢ちゃん? 俺は子供には興味ねえぞ?」

「ロック? 今の我は、子供ではない。相応の扱いを望む」


 おや。

 なんか、これは。

 面白い状況の、気配。


 元々盛ってた胸の膨らみを、更に増量したウンディ。

 ロックさんの腕を取って、思いっきり押し付けている。

 ロックさん、気にしてない風を装っておりますが。


 オレ、気づきましたよ?

 さり気なく、少しずつ。

 腕を抜こうと、絶妙な体捌きで後ずさり中。


 だが、しかし。

 ロックさん。

 その手は、悪手でございます。

 何しろ。

 ロックさんの、後ろは。


「っと、おわっ!?」

「……!?」


 ロックさん、下がって踏みしめた後ろの足場。

 脆い砂岩だったので、崩壊してしまい。

 絶賛寄りかかり中だった、ウンディを咄嗟に抱き締め。

 背後の赤土の上に。


 どさり。


「ふぁっ……、ろ、ロック? こういうのは、我まだ早い」

「断じて違ぇ! 嬢ちゃん、笑ってねえで助けろ!!」


 いや。

 助けろ、って言われたって。

 お互いを想い合う、男女が。

 強く抱き合って、寝転んでいる状況。


 ──おじゃま虫は、退散しますので!


「だーかーらー、違うっつってんだろ!!」


 いやぁ、まさかウンディがなー?

 しばらくロックさんと二人っきりにしてたからか。

 なんか?

 そういう系の、イベントあったのかなあ。


 これは。

 後で?

 シルフィにも、連絡取って。

 ウンディから、全力で聞き出さねば、ですねっ!


「め、めーねぇ? 我、そういうのではない。……多分」

「うんうん、おねーちゃんは分かってるからな?」


 珍しく、困惑全開な潜め眉のウンディ。

 不安げながら。

 肩と腰に回されたロックさんの、腕を。

 振りほどこう、としない辺りが。


 超可愛いぞ。

 うむ。

 ウチの妹、超絶可愛い。


 と、いうわけで。

 オレ、仲睦まじい二人を、残し。

 ひとり、洞窟の外へ。


 ウンディ、割と何考えてんのか解らんとこあったから。

 仲のいい男性、というか。

 そっち系の成長、するんだったら。

 全力で、応援したい所存。


 ……。

 ひとりで外に出ても、密林。

 暇だな。

 ここは、一発。

 神殿の内部、単身探索。

 して、みませうかね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

──少しでも面白いと思ったらっ。評価ボタンを押して頂けますと、感謝感激でございますっ。──


小説家になろう 勝手にランキング

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ