175話 久し振りに、リルとじゃれ合う
「メテル様ー? 隠れても、無駄ですよー?」
「ふふふ、ベッドメイクは完璧ですわ。お試し下さい!」
「お風呂も適温維持してますわよー? 洗いっこできます」
ひぃぃ。
まさかのまさか。
師匠の侍女さんたちが、ガチ百合だったとわ。
オレ、身の危険を回避すべく。
女王城の中を、全力逃避ちぅ。
《人にはさんざんやるくせに、自分はダメなのね》
《ほぇ? オレのはただのスキンシップだぞ?》
無自覚にも程がある、って。
言われても、な?
オレ、ほんとに百合じゃないしー。
と、いうわけで。
やたらでかい女王城を。
ひたすら下へ、下へと下ってる最中。
ほんとは、師匠から黒魔法を教わる予定だったけど。
……兎人族とかの騒ぎで。
女王業務が忙しくなったらしく。
幼女に戻る、暇もなく。
執務室で、書類に追われていらした。
──なんか、親父殿と同じく?
悲哀を感じる、後ろ姿だったなあ。
で。
暇が開くまで、城内自由にしてていい。
と、言われましたので。
探検がてら。
城内、探索ちぅー。
わくわくっ。
……つっても。
なんか、この城?
師匠含めて、五人しか住んでないそうで。
総勢でいうと、数十人ほどは眷属が居るんだけども。
戦闘力が絶大すぎるのと。
エレナさんたち、眷属の侍従侍女さんたち。
普通に、毎日一回、血を飲むので。
エンゲル係数的な、問題により?
数年交代で。
基本的に侍女三人でお城の業務、回してるって。
他人事とはいえ。
たった三人で城の中の全部を、処理してるとか。
なんか、我が家の侍女さんズに匹敵する有能さだなと。
あと。
世の中の侍女さんたちって。
みんな、こんなにまでデキる女性揃いなんでせうか。
メイド侍女さん。
ううむ。
奥が深い。
《ちょっと? なんか、魔力の質が変わったわよ?》
「てか、お前もお前でいつまで一体化してんだよ」
きゃんっ!
なんて可愛い悲鳴と共に。
オレの体から、滴るように弾き出されるリル。
べちゃり、と階段に投げ出された液体金属が。
見る見るうちに、人間の姿を形取る。
おや。
真っ裸のリル、久し振りに見たな。
「ちょっと、出すなら出すって先に言ってよね!」
「出すっていうか、お前ひとりで楽してんじゃねえか」
「リルはちゃんとアンタの力、抑えてたし?」
あー言えば、こー言う。
こういう生意気さは、リルの特徴だよなあ。
「って、服作るまで、あっち向いててよね!」
「え、同性だから別にいいんじゃん?」
アンタの視線は、悪寒が走るのよっ! とか言われた。
謂れなき誹謗中傷、はんたーい。
「謂れありまくりでしょ! 胸に手を当てて考えてよ!」
胸に。
もにゅりっ。
もみもみ。
……先端が敏感なの、どうにかなんねえかな。
たまに油断してるときに擦れると。
変な声が、出ることがありまして。
「こ、これ見よがしに質量自慢して……」
「リルも、これからだろう」
全力で目を逸しながら。
リル、薄いんだもんな。
前も後ろも。
液体金属なんだから、自前で盛れそうなもんなのに。
なんか?
親父殿に錬成された初期体型に、拘りがあるようで。
そういうとこ、本気で親父殿を好いてるんだな、と。
まあ。
異父姉妹、みたいなもんなので。
たまに親父殿に甘えるくらいは、許して進ぜよう。
「なんでそんな無条件に偉そうなのよ、アンタ……」
「いちおーこれでも、長女で地の大精霊なので」
使える特権は、どんどん使いませう。
で。
着替え、っていうか。
表面の服飾変化、終わったかね?
「弾き出されるとは思わなかったから、服入れてないのよ」
ぶっすー。
可愛い顔を仏頂面に歪めた、リル。
そういう顔も、可愛いな。
「はいはい、いい加減にしてよね天然たらし」
誰がたらしだ。
っていうか。
お前?
それ、傍目には服着てるように見えても。
実質的には?
同じことやってるウンディと、同じで。
──全裸状態、なんじゃねえの?
「あ、アンタが言わなきゃバレないわよ!」
胸と股間押さえて、身を捩ってますな。
一応、指摘されると恥ずかしいらしい。
ふーん?
「って、めくらないでよ!?」
意外と可愛いのを、履いてんだな。
縞だった。
で。
じゃれ合いながら、階段を下ってく我々。
──。
軽く、数十メートルは下ったと思うんだが。
これ、どれくらい下まであるんだ?
螺旋階段の、中央から下を覗く。
ひたすら、闇、闇。
あの。
地の大精霊たる、オレですら。
底を、知覚できないんですけど?
「ていうか、これ、魔力がヤバイわよ?」
何がって。
下に行くに従って?
感知される魔力が、すんげえ膨大になってくそうで。
オレ的には、全然まだまだ余裕なんだがな。
「リルは、もう少しでヤバイかも……、って、きゃっ!?」
じゃ、か弱い娘は担いでやろう。
すべすべふとももの感触が、頬に。
……。
ぺろり。
「!? な、なんで舐めたし!?!?」
「いや、味が気になって」
これこれ。
人の肩で、じたばた暴れるでない。
──。
精霊力、ぶち込むぞ?
「ああ、リルってばこの世で一番不幸な精霊だわ……」
「はっはっは。リルは冗談の質が、うなぎ登りだな」
さあ。
そんなこんなで、女王城の探索行。
まだまだ、続きますよぅ。




