174話 なんだか、身の危険を感じた
「ああ……、女王陛下、噂に違わずお美しかった……」
メルちゃん、完全に堕ちてますねコレ。
快適馬車を堪能してた、幼女と同一人物なんですよぅ?
つっても、聞こえてなさそう。
メルちゃん以下、兎人族の女戦士さんたち。
謁見の間で、正式に兎人族の保護を依頼したそうで。
女王陛下、快くお城での保護を約束してくれたとか。
被災した兎人族の村も、後で人を送って復旧手伝うって。
良かったねえ、メルちゃんたち。
……全員、目がハートになってんですけども。
──ここまで、ガチで心酔してると。
その女王を檻にぶち込んで、腐ったバナナ与えたとか。
事実に気づいたら。
……頑張って内緒にしよう、そうしよう。
で。
《その娘、津波のときに気になること言ってなかった?》
《んえ? 何だっけ?》
アンタはその物忘れの激しさ、何とかしなさいって。
リルが毒づけば、ティーマが代わりに応酬するお約束。
キミら、ほんとに仲良くなったよねえ。
《《誰がこんなのと!》ですか!》
ハモってやんの。
あっはっは。
ていうか。
津波のとき。
ええと?
ああ!
メルちゃん?
「先代の族長とか、精霊がどうとか言ってなかった?」
「え、あ……。あの、はい、そうなのですが」
もごもご、もごもご。
口の中で、言葉を転がす気配。
皆さん、急に居心地悪そうに。
んー?
何か、醜聞的なものなのかな?
ていうか。
オレに敬語は要らない、つったのに。
直らないよなあ。
ここら辺、もちっとフレンドリーに接して欲しい物。
《どこの世界にフレンドリーな大精霊が居るのよ……》
ここ、ほらここに。
ででーんと。
《アンタら、もう少し力の制御出来てから言いなさいよ》
ぐさっ。
それを言われると。
実際、兎人族の集落、全滅させちゃったので。
弱いですな。
……ただ。
個人的には。
兎人族の集落「だけ」で済んで、運が良かったな。
などと。
ウンディが力加減、間違えたら。
島ごと海底に沈んでても、おかしくなかったので。
「その、先代、つまり父上は……、人間の女について」
「男衆を引き連れて、村を出て行ってしまったのですわ」
なんか不満が爆発したのか。
恐縮してるメルちゃんを庇うように。
お付きの女戦士たちが、不満をぶちまけちぅ。
って。
……げっ。
ど、どう考えても。
セラさん、だよな。
何やってくれちゃってんの、あの人。
て、いうか。
豹人族が襲ってきたのも、そうだけども。
あの人?
獣人を懐柔したり、配下にする手段を?
何か、手中に収めてんのかしら。
《麻薬とか、そういうのじゃないの?》
いい噂、聞かないってリルが。
そういえば。
王都の、地霊殿。
初めて、訪れたとき。
風俗街に、同化しちゃって。
裏で表で、悪いことたくさんやってたような。
そこら辺の、黒い繋がりかなあ?
しまったな。
ロックさんに、詳しく聞いとけば良かった。
とりあえず。
ええと。
ティーマ?
《はい、何でしょうかマスター!》
エルと世界のデータベース作ってたよね?
アカシックレコードみたいなの。
そっちに、何か関連する情報とか、入ってない?
《しばらくお時間を頂ければ! アクセスしてみます!!》
うん、よろしく。
しばらく、こっちのティーマはお休みか。
魔法関係が、使えなくなっちゃうな。
《リルにお任せ! こんなのより、ずっと巧いんだから!》
あ。
そうか。
同化してるから?
リルが代わりに、詠唱してもいいのか。
まあ。
とりあえず、差し迫った用事はないから。
必要になったら、頼むぜリル。
で。
もういっこ、気になる話あったよね。
メルちゃん?
精霊が、お怒りって何の話でせう?
オレ、別に何も怒ってないんですけど?
「父上らは、精霊の故郷を破壊しようとしているのです」
──ぇ?
オレの?
ていうか。
精霊の故郷って、なんじゃらほい?
精霊島じゃなく?
と。
そこに。
「メテル様? お食事の用意が、整いましたので」
「あ、はいはい。お世話になりますぅー」
馬車で少しお話した、師匠の侍従さんたち。
エレナさん、フィーナさん、グレタさん。
お三方で、呼びに来てくれた。
マークさんとユリちゃんは、別室だっけ。
マークさんはともかく。
ユリちゃん、環境が急に変わって?
体調、崩しちゃったんだよね。
なにげに、長旅初めてだったそうで。
しばらく移動は、ないはずなので。
ゆっくり、養生してくれたまい。
そして。
侍従の皆さん。
吸血鬼だって、すぐには分からないくらい?
血色も良くて、美人さんですよねえ。
「あら、お上手ですね」
「メテル様? 我々、本気にしますわよ?」
「メテル様も、そっちの気がお有りで?」
……いえ。
そんな誘いをしたわけじゃ、ないんです。
そんな。
獲物を狙うような、妖しい目つきで。
オレの全身を、舐め回すように見ないでっ!?




