表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
173/200

173話 師匠の従者さんたち

2,400ポイント到達ですー、ありがとーございますぅ。

「ユリシーズ様が、馬車からお離れにならない理由が……」


 解りました、って。

 メルちゃん以下、兎人族の女性陣。

 すっかり、我が家の馬車設備の虜でございます。


 そりゃ?

 元々は、親父殿と御母君の長距離移動用なので。

 厨房から風呂から、これでもかって豪華設備。

 さすがに兎人族も合わせたら、ベッドが足りないけども。

 寝室まで完備で、快適全力だからねー。


 ──ただし。

 親父殿、自前で移動魔法を複数持ってるので。

 実際に、親父殿と御母君が同時に使用した回数って。

 片手で数えられる程度しか、ないそうな。


 ……。

 親父殿、そりゃ御母君も怒るよ。

 もう少し、家庭を顧みた方がいいと思います。

 長女的にはっ。


 それは、ともかく。


「そろそろ到着じゃが……、メテルや?」

「ふぁいっ!?」


 朝ごはん中に、突然師匠に呼び出されるオレ。

 カツ丼のカツを口の中に無理やり押し込み。

 もぐもぐ、もぐもぐ。

 ……ああ、丼物は日本人の心だなぁ。


「食べながらで良いが。儂、そろそろ消えるからの?」

「むぇ? そりゃまた何ででせう?」


 って。

 ああ。

 島の現在の長、女王陛下な師匠。

 幼女姿でお忍びしてるの、島民には内緒なので。


 一旦ここで、オレらとお別れして。

 大人姿になって、女王城で待ってるそうで。


「こんな騒動がなければ、戻りたくないんじゃがのう……」

「あっはっは。自業自得ですよぅ」


 ぎろり、と睨まれた。

 幼女姿で睨まれたって。

 ただ、可愛いだけですよぅ。


 と。

 馬車の二番貨車。食堂車。

 に。

 にゅるんっ、と膨大な魔力が集まる気配。


 な、何ですかね?

 でも。

 師匠、あんまし慌ててないし。

 何事か、分かってるのかな?


 と、思ってたらば。

 そこかしこの、家具の影から。

 むにゅるるるっ、と真っ黒な人影が、盛り上がる。


 なんか?

 リルの、人体変化を見てるような。


《リルのはあんなに怪しくないわよ!》

《はいはい、そうだね、リルは可愛いねー》

《マスターの仰る通り、ミスリルに酷似して怪しいです》

《誰が怪しいって!? たかが妖精風情が!!》


 こらこら。

 二人で喧嘩、すんな。


 それに。

 ティーマは妖精つっても?

 精霊大陸全土のダンジョンを司る、妖精女王だし。

 霊格で言うと。

 リルと、大差はないと思うぞ?


 とか言ったら。

 火に油であった。

 しばらく、精霊通信カットしとこ。


 で。

 家具から沸いた、影。

 見る間に、数人の美しい女性の姿に変わる。


 肌は、なんか青っぽいけど。

 真っ赤な唇から覗く、鋭い牙。

 ああ。

 これは、アレですね?


「シルバーカリス女王陛下。お迎えに上がりましたわ」

「……呼んでもおらんのに、誠にマメじゃのう、お主ら」


 師匠、超渋面。

 師匠付きの、吸血鬼の侍従さんですね、この人たち。


 素早く師匠のそばに、くっついたと思ったら。

 てきぱき、てきぱき。

 ボロ布みたいな衣装の師匠を、いい服に着替えさせてく。


「儂がこういう服、嫌いじゃと知っとるじゃろうに」

「女王陛下の品格というものに関わりますので」

「全く、どうせ城に戻ればまた着替えるんじゃろうに」

「女王陛下であれば、お召し替えは当然ですわ」


 口からは、文句ばかりだけど。

 師匠、めっちゃ大人しく従ってますね。

 いい主従ですねえ。


「失礼、あなたは?」

「え、オレ? ええと、師匠の弟子になりました」


 ざわっ。

 従者さんたち。

 顔を見合わせて。

 めっちゃ、困惑顔。


 え?

 なんかオレ、変なこと言いました?


「そ、それは……、お気の毒です」

「はぇ? な、何故に?」

「余計な入れ知恵はせんでも良い。さあ、帰るぞえ」


 凄く慌てた風な師匠が、従者さんの裾を引き引き。

 ちょっと待てぃ?

 なんか、不穏な発言がありましたよ、今?


「普通の人間ではない様子? 生き残れると良いですね…」

「え、オレ、死ぬ目に遭わされるの確定なんでせうか?」

「メテルは精霊じゃて、滅びることはなかろう」


 ……。

 むしろ?

 オレが、師匠たちを滅ぼす危険の方が、大きいと。

 思ってたんだけども。


 従者さんたちの、口ぶり。

 普通の人間だと、どうなるんでせう?


「私ども、元は人間でしたのですが」

「女王陛下に付き従った結果、死亡しまして」

「吸血鬼として、再誕し」


 ぉぉーぃ。

 師匠ぅぅ?

 めっちゃ、ブラック職場じゃないですかぁ。


 なんですか、こんな美女さんたちを、死亡させるとか。

 いけませんよ、そんな酷い扱い。


「ええい、風評を振りまくでない! 理由があるんじゃ!」


 あ。

 これは。

 遊ばれてるな師匠。


 だって。

 顔背けて、くすくす笑ってるんだもん従者さんたち。


 しかし。

 面白いので。

 オレも、便乗してしまい。

 しばらく、ムキになる師匠で楽しみました。


「全く、性格の悪い従者どもが」

「陛下に似たんですわ」

「やかましい! ほれ、帰るぞ!」

「了解しました。では、メテル様? 城にて」

「歓待の用意をして、お待ちしておりますわ」

「お早く、おいで下さいませ」


 はぁい。

 つっても。

 もう、城は、目と鼻の先。

 坂を下った先に、正門が、見えて来てるので。

 入場するだけなんですけどね。


 師匠を中心にした、大きな影に。

 皆、するり、と。

 吸い込まれて消えるのを、見送って。


 さあ。

 兎人族さんたちを、引き連れて。

 女王城へ、入場だっ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

──少しでも面白いと思ったらっ。評価ボタンを押して頂けますと、感謝感激でございますっ。──


小説家になろう 勝手にランキング

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ