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169話 檻の中から、こんにちは

《で? なんでこんなことになってるのよ?》

《寝坊したくせに態度でかいな、リル》


 ごろごろ。

 起きたばっかなのに、だらけまくり。


 はい。

 だって。

 ヤシの木と葉で作った、原始的な牢屋に居るんですもの。

 寝心地、すんげえ悪いー。


 まあ。

 狭いとはいえ?

 二人部屋なのが、救いかなー。

 ……屋外野ざらしで、超涼しいし。


「めーねぇ? 我、退屈にて」

「ああ、寝るのな。はいはい、状況変わったら起こすから」


 返事したときには、もう寝てるウンディ。

 お前、ほんとにどこでも寝られるよな。


 ……二人部屋で。

 オレとウンディ、同室。

 では、リルはどこに居るか、というと。


《アンタの中、意外と居心地がいいのよね……》

《内部で変に動き回るなよ。こそばゆいんだっての》


 そう。

 オレの、身体の内部に同化してるのだ。

 一応、地属性だからして。

 精霊核の隙間に、入り込んだ状態。

 液体金属精霊な、リルだから出来る芸当。


 まあ。

 今はお昼寝中の、ティーマも合わせれば。

 この檻、四人居ることになるんだけどな。


 ぶっちゃけると、いつでも出れるんだけども。

 兎人族の目的が、いまいちよく分からないので。

 捕まったまま、様子見してるところなのです。


 で。

 することもないので。

 きょろり、きょろり。

 周囲を見回してみる。


 ここはどうやら?

 兎人族の、集落のようで。

 砂浜から、森を歩くこと暫し。

 ログハウスだらけの、ちょっとした村になっている。


 集落の中は、意外と人数が多い。

 オレらが?

 中央の広場に、吊るされてるのもあるんだろうけど。


 檻の、下の方で。

 兎人の、小さな男の子や女の子が駆け回っている。


 師匠が言うには?

 基本的に、獣人って多産系だそうで。


 小さな村なのに。

 人数としては、百人以上は居るんじゃないかなあ?

 それくらいの大人数が、忙しなく働いてるみたい。


 意外と言えば。

 さっきの駆け回ってた子どもたちもだけど。

 子どもでも大人の手伝いで、働いてるようで。


 遊んでる人、見渡す限り、居ないような。

 結構、生活が困窮してる気配というか。

 余裕がない、みたいな雰囲気。


「兎人に限らず、獣人は燃費が悪いからのう」

「へえ、一日五食とかです?」


 隣の隣な檻。

 師匠は、ロックさんとペアか。


 女の子と一緒じゃないので、若干不満げなのが。

 ……言っちゃなんだが、ちょっと笑う。

 そのロックさん、檻の端っこでふて寝してますけどね。


「基本的にはひたすら食って出す種族じゃからして」

「おおぅ。それは燃費悪すぎる」

「兎人はまだ、雑食性じゃからマシなんじゃがなあ」


 ほむほむ?

 肉食系だと、環境変化に弱く。

 狩猟できなくなると。

 途端に、口減らしで姥捨て山みたいな事態が発生すると。

 うわ、何気にハードな暮らしなんですね。


「街に出れば食い扶持はあるが、民族の問題じゃからの」

「王国や帝国はもう単一民族化してますしねぇ」


 おや。

 ユリちゃんが、食いついてきた。

 ユリちゃんは順当に、マークさんとペアの檻。


 ……ユリちゃん?

 マークさんに抱っこされて、ご満悦になってますけど。

 偽装結婚のお芝居、もう終わりましたよね?


「ユリ? いい加減、足が痺れて来てんだが」

「マーク様っ、お慕い申しておりますぅぅぅ」

「ダメだこのガチ百合、はやく何とかしないと」


 ……檻が遠いので。

 オレは何とも出来ません。

 頑張って、マークさんっ。


 と。

 そんな感じの、オレらでありました。

 そして。


「というか、いい匂いさせてくれよるのぅ」

「ですよねー」


 師匠の呟きで、あちこちからお腹の音が。

 オレじゃないぞっ。


 近くに見える、集会場らしき、大きなログハウス。

 そこから。

 炊事中らしき、白煙が上がってるんだけども。

 これが。

 食欲を唆りまくる、超いい匂いが漂っており。


 朝飯、抜かされてるオレたち。

 とっても。

 食事に、飢えておるのですよっ。


 と。


「地の恵みだ、感謝して喰え!」


 べちゃりっ。

 下から、女の子の怒声と共に、投げつけられたバナナ。

 檻のあちこちに当たって、潰れております。


 っていうか。

 半分、腐ってませんかこれ?

 いやまあ、腐りかけがいちばん甘いって言いますけど。


 ……ううむ。

 これは、食すのは勇気が要るなあ?


「娘や? 中央の、吸血鬼に連絡してくれんかや?」

「女王配下に何の用だ、人間め! 私には名がある!」


 ああ。

 師匠って、人間に見えてるのね。

 まあ、血色もいいし口から牙出てるわけでもないし。

 そう、見えなくもないか。


 そして。

 居丈高な女の子、名乗ってくれましたけど。

 メルランディアさん。

 態度でかい、理由が分かったというか。


 ──兎人族、族長だそうで。


 どう見ても、年下なんだけどな?

 見た感じ、15歳くらいというか。

 ウンディと、同い年くらい??


 若くして、そんな地位で。

 大変ですね?


「ふむ? いつ代替わりしたのかのう?」

「先週だ! 知らんとは言わせんぞ、豹人のスパイめ!」


 ……。

 つまり。

 オレら?

 兎人族が、縄張り争いしてるらしい。

 お隣さんの。

 豹人族の、スパイと思われているようです。


 ──。

 知らんがな!?


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