167話 ひたすら後片付けな、顛末
本章エピローグ的な回ですー。
「まさかほんとにご飯抜かれるとわ、しくしく」
「ちゃっちゃっちゃっ、ちゃっちゃと働くー!」
「メテル姉、ボクも頑張って手伝うからねー!」
崩れた廃墟みたいになってる、コロッセウム。
ただいま、姉妹三人でお片付け中。
あと。
シルフィんとこの、アネモイとヴァーユも。
自主的に、手伝ってくれておる。
ありがたや。
オバさんが、後でたっぷり可愛がってやるからなー。
「「!? 背筋に、悪寒??」」
なんでだよ。
ただの、スキンシップなのにっ。
つーか。
建造物の土台の、更に下の地脈ごと動かしたので。
土台付近からもうグズグズに壊れておりまして。
柱は歪んでるし、天井もあちこちで落っこちて。
──新造した方が早いですよ、これ?
的な。
いやまあ?
新造同様になるまで、ちゃんと補修しなさい。
って、言われたし。
言いつけ通り、頑張りますけどねー。
「でもでもでもー、セバスさんっ、意外だったねー」
「ボクのお師匠さんだからね!」
瓦礫や埃を、風でまとめてるシルフィが。
割れた武舞台に溶かした鉄を流し込んでるサラムも。
君ら?
軽作業ばっかで、楽でいいよねえ。
話題にのぼった、セバスさん。
剣技大会、優勝したんだけども。
……優勝者に与えられる、褒美で。
弟子なマミちゃんが、全快した後に。
現剣聖なカイオンさんとの、模擬戦を願ったのだ。
国王な叔父上が、快諾しない筈もなく。
現在、入院中のマミちゃんの退院待ちになっている。
マミちゃん、命に別条はないんだけども。
結構重傷だったので、全治数か月の見込み。
女の子だから。
御母君たちが、全力で。
身体に傷が残らないように?
慎重に経過観察しながら癒やすそうで。
──その、入院期間の間に。
オレが、このコロッセウムを全力修繕しないとならんと。
「はいはい、めーちゃんはさっさと石材組んでっ!」
「くうぅ、ほんとに全破壊した方が早いのにぃ」
「メテル姉がそれやったら、王都が沈むと思う……」
前科ないはずなんだが。
なんでこんなに、姉妹に信用がないのか。
しくしく。
と。
そんな折に、来客が。
「更地に戻して新造した方が早いのではないか」
「そうなんですよっ! 師匠もそう思いますよねえ!?」
今日も、ちびっこい幼女姿の師匠。
積み上げた石材の陰から、ぴょこりと。
なんか、師匠。
遠縁にあたる、小国の王子様に対応してたらしく。
師匠自身も、割と遠国のお偉いさんなのに。
王国的に、ちょっと借りを作っちゃった感じだそうで。
「何、儂はお忍びじゃからしてな」
「全然忍べてないですけどね」
「可愛い弟子を連れ出す駄賃と思えば、この程度はな」
軽いものじゃて、って。
そうなんだよな。
オレ、師匠に弟子入りして?
黒魔法の真髄、とやらを学ぶために。
師匠の故郷、北方の暗黒島へ旅立つ予定でございます。
──親父殿と、御母君から。
いい加減、きちんと魔法を学びなさいっ! って。
ティーマも揃って、怒られてしまった。
ティーマはティーマで?
オレの要求になんでも応えすぎ、ってことだそうで。
まあ、確かに?
殆ど一心同体なティーマが。
そこら辺、おkかどうか判断してくれたら。
オレも、暴走せずに済むかなー、とは思ったさ。
ああ、いや?
ティーマのせいじゃないからな?
ほらほら、落ち込むなー。
撫で撫で。
あと。
偽装結婚騒動の主原因な、ユリちゃんマークさんも。
ほとぼりを冷ますために。
しばらく、王国を離れなきゃいけないそうで。
オレの修行に、同行する予定だとか。
まあ、そりゃそうだよなあ。
家としては、醜聞も醜聞で。
家名に、傷つけた感じになってるし。
マークさん的には、しばらく男装できなくなってるとか。
──。
普通に女性衣類着て、武装解除したマークさん。
ユリちゃんの実家から?
娘を誑かした不埒者、扱いで捜索されまくり。
なので。
あれからずっと、女性として過ごしてるんだけども。
ほんとに、目を瞠る美女なんだよな。
あのままいれば、引く手あまただろうに。
いや、本人不本意なのは、分かるけどね。
いつもの、『俺は男だ!』が言えないというか。
かなりストレス、溜まってそう。
彼氏役を務めた冒険依頼としては?
すんげえ額の、謝礼を貰ったらしいけども。
伯爵家了承済みで、金子の出どころは伯爵家のお財布。
でも。
対外的には、捜索しないわけには行かないそうで。
マークさんが困ってるのは、ちょっと珍しいかも。
あと。
意外なところで、接点というか。
地霊殿の地下を探っていた、盗賊団なロックさんたち。
もしかしたら?
逃げ出したセラさんたちが、暗黒島へ行ってるかも?
みたいな情報があり。
……可哀想に、ロックさんたち。
自動的に、オレらの移動に同行が決定。
騎士団に戻りたいのにー、って慟哭してたな。
不憫すぎる。
いや、命令してるのは宮廷魔術師な御母君なんだけど。
御母君?
もう少し、部下は大切に扱ってあげて下さい。
「どれ。儂も少しは手伝ってやろうぞ」
「ありがたうございまする、師匠ー!」
「うむ、崇め奉うが良いぞ!」
ででーん。
久しぶりに見たな、師匠のそれ。
そんな感じで。
ひとまず?
王国での騒がしい日常は。
これにて、一段落でございますー。




