表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
166/200

166話 エキシビション、終了

《全くのう。もちっと、周りをよく観察してみぃ》

「そんな余裕は逆さに振っても出て来ねえっすー!」


 だって。

 目の前の、超絶楽しそうな笑顔のセバスさん。

 さっきより。

 格段に、剣速が速いんですよ。


 ……。

 精霊のオレが、捉えられない速度ってどうなのー!?

 人類の枠。

 大股で、はみ出してますよセバスさんッ!


「なかなかにやりますな? では、これでどうでしょうか」

「げふぅっ!? あのね、傷つかないけど痛いんですよ!」

《リルは剣、リルはただの剣……》

「こら、現実逃避すんなリル! セバスさんを止めろ!!」


 止めて頂けませんでした。

 可視化出来るんじゃねえか、ってくらいに。

 盛大に、大剣から魔力を迸らせたセバスさん。


 実に楽しげに。

 逃げ惑うオレを、武舞台の隅に追い込みながら。


 ……。

 ひぃぃん、痛いよう、怖いよぅ。


 普通。

 大剣って。

 隙がでかくて振りが遅い代わりに、威力がでかい。

 そんな、両極端な武器じゃありませんのこと?


 セバスさんの場合。

 間合いの長短、どちらも自由自在。

 振りは神速。

 威力は絶大。

 ……隙が、ないんですけどぉぉぉ!?


《じゃから、よく見ろと言っておるのじゃ》

「直視したくないです師匠、あの凄惨な笑顔!」

《顔ではないわ、愚か者。魔力の濃淡じゃよ》

「ほぇ?」


 とととんっ、と横っ飛びして。

 なんとか?

 武舞台の中央まで、回り込むことに成功。

 オレをカドに押し込めてたセバスさん。

 再び、大剣を肩に担いで。

 にやり、っていい笑顔で笑ってらっしゃいます。


 ──ぜったい?

 わざと逃したな、アレ。

 って。

 師匠が言う、魔力って。

 もしかして?


「ティーマ? 魔力の可視化って、出来る?」

《やってみます、マスター!》


 ……。

 なんだか知らないが?

 それっぽい術式を、完成させたらしいティーマ。


 程なく。

 オレの視界に、青みがかった黒い霧のようなものが。


 最も濃いのは、大剣の周辺。

 それと、セバスさんの両目付近。

 そこら辺から、放射状に噴出している。


 ………………。

 あの。

 凄みエフェクト視覚効果、みたいで。

 セバスさんが、魔王みたいに見えるんですけどぉ?


《濃淡に、よく気をつけるんじゃぞぃ》

「……うぉっと!?」


 目線からしゅるり、と飛び出した霧の先端が。

 オレの、左の首筋付近を撫でる。

 と。

 遅れて、大剣が唸りを上げて……。


「おや? よく避けられましたな」

「当たったら首飛びますよ今の、ぜったい!!」


 慌てて逸らした上体。

 鼻先を、でかい大剣が鬼の速度で通過してった!!

 あんな勢いで、首に食らったら。

 ……頭部が生き別れになっても、おかしくないというか。


 金属で傷つかない権能持ちですが。

 逆に。

 さっき曲げられた、チタンみたいに。

 オレも、首付近で「く」の字に曲がったところを想像し。


 ──全力で、避けますぉ!!!!


「ふむ? では、もう少し速くしてみましょうか」

「アンタ絶対、人間じゃないだろ!?」


 褒め言葉と受け取っておきます。

 って。

 全力絶対完全無欠にっ。

 褒めてないですぅぅ!!

 誰か、本気で助けてぇぇぇ!!!


「しかし。些か面白みに欠けますな。その程度ですか」


 やれやれ。

 なーんて。

 呆れたような、笑い方。


 ……むむっ。

 かっちーんと。

 来ちゃいましたですよぅ?


 逃げるの、中止っ。

 セバスさんっ?

 オレだって、本気出したらですねぇ?


 えーと。

 親父殿には、禁止されたけど。


「ティーマ? 地脈、動かすぞ」

《了解です! いつでも!!》


 ティーマに、言い置いて。

 ぱらり。

 目隠しを、外す。


 同時に。

 オレを中心に、放射状に伸びる、地脈の根。


 別に、動きが直視で見えなくたって。

 師匠が今、教えてくれた通り?

 魔力放出の、濃淡で攻撃予測出来たって。

 そんなもん、関係なく。


 ──大地の大精霊。

 地面が繋がってれば。

 全て、オレの顎の中だ!


 びし、びしびしぃ!

 ごごご、ずごごごごご!!


 武舞台に亀裂が走り。

 コロッセウム全体が、不気味な鳴動を始める。


 視界の中には、何千にも分断されたセバスさん。

 周囲数百万の砂粒全てが、オレの視点。

 どっこにも、逃がさねえぞ!


 さあっ、喰らいやがれ!

 星の、地脈全開!

 大地の、あぎと……。


 ──ごんっ!


 なんか、後頭部に鈍い痛みが。

 目の前に、星が飛んでる?


「あのですねぇ。誰が後始末すると思ってるんですか」


 振り返ると、奴がいた。

 っていうか。

 拳骨を勢い良く振り下ろした、親父殿。


 あ。

 怒ってらっさる。

 ふ、ふえぇ。

 だってだって、セバスさんがー。


「せっせっ、セバスさんどころかっ、人類滅びるってば!」


 シルフィが、親父殿連れて飛んで来たのか。

 文字通り。

 くぅぅ。

 多少、地脈動かした程度でバレるとわ。

 なんという、慧眼!


「地形変えてバレないわけ、ないないないでしょー!!」


 しくしく。

 言いつけを破った罰で。

 オレ、このあと後片付けさせられるそうで。


 と、いうわけで。

 剣技大会、優勝は。

 セバスさんで、確定しました。


「ほらほら、さっさと片付ける! ご飯抜くわよ!?」


 ぴぇぇ。

 妹が、いじめるんですー。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

──少しでも面白いと思ったらっ。評価ボタンを押して頂けますと、感謝感激でございますっ。──


小説家になろう 勝手にランキング

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ