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162話 妹と話したかっただけなのに

「私、ユリシーズは! マーク様を好いております!」


 ますっ、ますっ、ますっ……。

 って。

 エコー効きすぎじゃないですかね。

 風の拡声魔法って、芸達者だなあ。


 などと。

 軽く、現実逃避。


 ユリちゃん?

 マークさんと偽装結婚したい計画は、聞いてたけど。

 剣技大会の、インターバルで発表するとわ。

 全然、聞いてなかったぞ?


 見なさい。

 会場、めっちゃ騒然じゃないですか。

 貴賓席に来てる、小国の王子くんも。

 傍らに居る師匠に、なんか慌てて聞いてる風。


 ……マークさん、相変わらず美青年風男装だけども。

 あなた、暗殺されるんじゃないですか?

 大丈夫?

 国際問題に、なってる気がしますよ?


 で。


 片付けや次の試合準備中だった、武舞台。

 ユリちゃんの、発言からしばらく。


 どうも、貴族社会の慣例をごりごり曲げたというか。

 爆弾発言、過ぎたらしく。

 剣技大会の進行が。

 一時、中断してしまい。


 ……。

 通路に来たのが間違いだった。

 サラムが入って来るはずの、選手入場門まで、行けない。

 なんでかって。


 ユリちゃんのご実家?

 ライエルバッハ伯爵家の、私兵騎士団と。

 マークさんに加勢する、冒険者の一団が。


 抜剣してないまでも?

 すんげえ険悪なムード全開で、押し合いへし合い。

 どうやら。

 伯爵家の騎士は、ユリちゃんたちを捕まえようとして。

 冒険者の方は、二人を守る感じで対抗してる様子。


 ……。

 あの。

 オレ、とりあえずこの場では、無関係なので。

 通して、頂けませんでしょうか?


「ここは通行止めだ、他を当たれ!」

「貴様ら、公務執行妨害で連行するぞ!」

「愛し合う二人を引き裂く奴らは、馬に蹴られな!」


 ──。

 だめだこりゃ。

 ええと。

 コロッセウムの内部通路って。

 どう、繋がってたっけか。


 ……。

 貴族席から王族席に抜けて。

 そっちから、回った方が早そう。


 ううむ。

 単に、妹に会って話すだけなのに。

 なんでこんなに、邪魔が入りますかねえ。


「──ユリの邪魔する人はー、ボクが相手だっ!!」


 んあ?

 今の、サラムの声か?

 ええと。

 人混みの、ずっと向こう側だな。


 って。

 な、なんだぁ!?

 騎士も冒険者も一緒になって。

 よろめくように、ごちゃまぜの人たちが、一斉に移動。

 これ、サラムが人波を押してんのか!


 ただでさえ、狭い通路。

 しかもみんな、全身武装してるもんだから。

 人波に呑まれたオレ。

 む、むぎゅぅぅぅ。


 っていうか。

 何人か、途中で倒れた人が踏まれてる気配。

 鎧着てるから、踏み潰されることはないだろうけど。


 もみくちゃの、わやくちゃ。

 人混み越しで、全然見えんが。

 サラム、めっちゃ怒ってるみたいだな。


 ──あいつ、ユリちゃんの話がお芝居だって。

 分かってないんじゃ、ないのか?


 人波に翻弄されること、暫し。

 ……ようやく、押す力が弱まって。

 人混みを掻き分け、向こう側に出たときには。

 サラム。

 もう、姿が見えないでやんの。


 おーい?

 お姉ちゃんは、お前に話があるんだってばよ。

 どこに行ったんだ、あいつ?



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「おかえりめーちゃんっ! さーちゃんに、会え会えた?」

「いや、かなり近くに居たっぽいんだが。どこ行ったやら」


 掻い摘んで、話す。

 貴族席。

 さっきのユリちゃんマークさん騒動のせいか?

 妙に、空席が目立つ。


 ここと王族席の間にある、賓客席の方も騒がしいし。

 てか。

 ユリちゃんたち、どこに行った?


「せんせん選手控室の通路に、逃げてったみたいだよ?」

「げ。行き違いか。たぶん、サラムの控室だろ」


 そこ以外じゃ、どこに逃げても追い詰められそうだし。

 じゃ、さっきの冒険者は陽動みたいなもんで。


 マークさんは、男装解いたら普通に美女だし。

 男女セットじゃなく、女子二人になって?

 どっかから、こっそり脱出してる気がするなあ。


 ううむ。

 そっちの計画はまあ、オレは深く関与してないので。

 別に、いいんだけど。

 サラムと、会えなかったのが痛いな。


 しばらく、通路は封鎖されるんだろうし。

 困ったな?

 地脈移動……。

 オレは衆目環視で全裸になる露出狂ではない。


 声。

 ああ、そうだよ。

 声が伝わればいいんだから。

 シルフィか、親父殿?

 魔法で、伝声出来ないか?


「あ、無理無理っ。アタシ、そんな細かい制御できなーい」

「だよな。むしろ、お前は闘技場全域に拡声するよな……」


 オレだって同じように、細かいことは苦手だし。

 じゃあ。

 親父殿ー?


 ……。

 あれ?

 シルフィ?

 親父殿、どこ行った?


「お母様のところじゃないかな? 珍しく二人で公務だし」

「あ、そうか。同じ場所で仕事してるって実は珍しいのか」


 むむむぅ。

 では、邪魔出来ないなあ。

 ほんっとーに、困った。


 そんなこんなで、シルフィと悩んでるうちに。

 二回戦、三回戦と試合は進んで行き。

 サラムと話せないまま。

 来てしまいましたとも。


 四回戦、準決勝。

 シード選手、サラム、対。

 期待の新人、マミちゃん。


 ……遠くからでも、分かるぞ?

 サラム、マミちゃんを見て。

 超、びっくりしてんな。


 そして、オレらを睨むな。

 そういう意図じゃ、ねえんだってばよ。


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