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161話 ラスティがちょっと怖い奴に

2,300ポイント超えでーっす。

いつもありがとーございまーっす!

「風魔法……、ちょっとコツ、教える」

「ありがとうございます、アネモイさん!」


 打ち解けたアネモイとマミちゃん。

 マミちゃんが、魔力消費の少ない風魔法を教わってる。

 まだ頬や右腕の包帯、取れてないのに。

 勝利に、ほんとに貪欲だなあ。


 こういう貪欲さは、サラムにはないもんな。

 サラムには、というか。

 オレら四姉妹、常に精霊力が有り余ってるから。

 そもそも『少ない魔力をやりくりして』って発想がない。


 ただ。

 魔法を撃つと、威力が絶大すぎるので。

 人間相手に、撃ったことは全員一度もないはず。


 ……一撃で。

 形も残らず、消滅させてしまうかもだし。


「ううう、動かれると困るるるる……」

「あ、ごめんなさいヴァーユさん!」


 その、元気よく動いてるマミちゃんを治療してるのが。

 ヴァーユ。

 シルフィの次女。

 ……次女の次女、ってなんか変な感じ。

 姪っ子だから、可愛くてたまらんけどな。


 この子。

 どうも、姉のアネモイと真逆の性格っぽく。

 仏頂面で照れてる風の、アネモイと異なり。

 くすくすと笑っている。

 双子って言っても信じられるくらい、姉とそっくりな顔。


 けど。

 治癒術士らしく、傷を癒やす力は一人前以上。

 そして。

 意外と、治療に関しては容赦がない。


「あいたっ、いたたたた!?」

「ききき、傷は痛いもの。次かららら、注意すべししし」


 いや。

 ヴァーユ?

 マミちゃんの腕を関節技で、極めたら。

 傷云々、以前に。

 そりゃ、痛がるだろうよ。


「あの、動かないので外して下さいー!?」

「ししし、信用できない」


 あっちは任せといて、大丈夫そうだな。

 さて。

 こっちの話、だけども。


「めーちゃん? このこの流れ、サラムの敵になるの?」

「あー、そういうわけじゃねえんだけどなあ……」


 闘技場、コロッセウムの上からやって来たシルフィ。

 途中で、迷宮から戻る途中のサラムを視認したそうで。

 サラムの出番は四回戦、準決勝からだから。

 到着時間的に?

 たぶん、オレんとこ来るよなあ……。


 ううむ。

 マミちゃんを応援したいのは?

 健気に全力で頑張ってる女の子だから、だけども。

 サラムもサラムで、別にサボってるわけじゃないし。


 て、いうか。

 サラムはオレに憧れ持ってるわけで。

 そのオレが、敵になる子を応援してたら。

 ──心中、穏やかじゃねえよなあ。


「うーん。内緒にしてるからダメなんじゃないののの?」

「……あ、そうか」


 久しぶりに会ったけど。

 さすがだな、妹よ?


 別に、勝負に介入して八百長するわけじゃないんだし。

 オレが、中立でいればいいんだから?

 会場入りするサラムを、捕まえて。

 マミちゃんの事情を、オレから説明すればいいのか。


「たぶたぶ多分、それでいいと思うのー」

「じゃあ、善は急げだ。ちょっと、行って来るわ」

「うんうんうんっ。客席で待ってるねー」


 ひらひらと手を振るシルフィに応えて。

 オレ、会場の入口へ向かった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「お見限りで、寂しく思っておりました……」

「いや、ラスティ。オレ、急いでんだけど」

「私、メテル様の一の信徒ですのに。信頼置けませんか?」

「いやいや、そういうこっちゃなくてだな」


 うおぉ。

 そうだった。

 ラスティのこと、起きてから延々放置してたもんな。


 会場内の、通路。

 いま、一回戦の残り試合が続いてるから。

 通路の上の観客席から、歓声が聞こえて来る。

 そこで、オレはラスティと鉢合わせしてしまった。


 うーん。

 彫像にされて神殿に飾られてた件とか?

 いろいろ、問い質したい話とか、積もってたんだけども。

 ラスティには、悪いけど。

 日常が、割と忙しくてな?


「メテル様を女神と崇める宗派の長として、頑張りました」

「だから、何がどうなってそうなったんだよ」


 久しぶりの、アイアンクロー。

 ……ダメだ、こいつコレ、喜んじゃうんだよな。

 てか、掌をぺろぺろ舐めんなっ。

 こそばゆいわ!


「ああ、女神の祝福、堪能しました」

「オレの信徒って、全員ドMなのかよ……」


 アイアンクローもダメ、お仕置きで興奮するとか。

 もうこいつ、手が付けられなくない?

 こうしてる間にも、サラムが会場入りするんだから。

 ええい。

 最後の手段っ。


「めっ、メテ……!?!?」


 むっちゅー。

 ちゅっぱちゅっぱ、ちゅるるるる。

 ……あれ。

 余所の女の子にディープキスは、初めてなのでわ。


 と、思いながら。

 手首を掴んで壁に押し付け。

 顎を持ち上げてっ。

 じゅるるるるー。


 待つこと暫し。

 へにゃり。

 全身真っ赤にして、腰が抜けたラスティ。

 通路に、へたり込む。

 よしっ。

 この隙にっ!


「一生、おそばでお仕え申し上げます……」

「こええよ!? ていうか、普通に男性と結婚しろよ!」


 後ろから呪詛みたいに聞こえる言葉に、戦慄。

 嫌だぞ!?

 おはようからおやすみまで?

 暮らしを全部、延々ラスティに見つめられるとか!?


 そんなこんなで。

 オレ、全力で通路をサラムに向かって駆けたんだが。


 ……。

 間に合わなかったんだよなあ。


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