158話 マミちゃん予選突破のお祝いを進呈
「いや、巧いこと予選突破出来て、良かったね」
「全てメテル様のおかげです。感謝を」
深々とお礼してる、マミちゃん。
選手控室。
予選のときと違って?
本戦からは、それぞれ個室が割り当てられてる。
武具や防具の交換も許可されてるので。
オレ、マミちゃんが外した装備を見てるところ。
……。
マミちゃん?
結構、着痩せするのね。
女の子で、スタミナがないので。
予選は軽装備で出てたんだけど。
その、薄い板金鎧を脱いだ、現在。
薄手の下着のみ。
そして。
動きの邪魔にならないようにか。
……めっちゃ、際どいんだよな。
ハイレグビキニ、みたいな。
「あ、あの? 汗で透けてるので、注目しないで頂けると」
「うん? うん。見テナイヨー」
裸眼ではな。
極近距離の、地脈視点で。
上から下から、ガン見してるんですけどね。
うん。
眼福、眼福っ。
「気のせいでしょうか? 視線を感じるんですが……」
「気ノセイダヨー」
さすが武人。
気配に、鋭い。
舐め回すように見るのは、これくらいにして。
本編。
武具類の、アップグレードをやりませうー。
「あの、具体的に何をなさるのでしょう?」
「訓練中は重い方がいいって、セバスさんが言ってたから」
そういえば、セバスさんも会場のどっかに居るんだよな。
愛弟子の勇姿、ちゃんと見てたかな?
御母君付きで、治療士の手伝いしてるはずだけど。
「んとね。これ、鋼鉄製の武具類だけども」
こん、こーん。
オレが軽く拳で叩いてる、両手持ちの長剣。
長い柄に、滑り止めのためなのか、宝石が並んでいる。
マミちゃんの家に伝わる、宝剣なんだっけ。
多少なりと魔力を感じるので。
魔法剣だよな、これ。
なんか?
振りながら、握りをスライドさせる。
そんな、変則的な振り方で。
リーチを伸ばす技を習ったらしい。
マミちゃん、女の子としては長身、170センチ台だけど。
体格的に、他の男性出場者より頭一つ小さいから。
リーチを少しでも伸ばすための工夫、だそうだ。
ほんとは?
槍とか、長柄武器が向いてたそうなんだけど。
槍は扱いが難しくて、一週間では無理、ということで。
実戦向けの小技を、いくつか習得してるって。
「本戦まで使ってはいけない、と厳命されまして」
とても苦労しました、と。
口調は疲れ切ってるけど。
表情は、疲労してはいるものの、晴れやか。
そうだね、ここが一番の懸念だったもんね。
じゃあ。
昼過ぎに、本戦開始だから。
ぱぱっと、いじってしまおうか。
さあ、オレ、集中、集中。
何をするかって。
錬金術で。
魔法剣の、魔術式はいじらずに。
材質のみを、軽量化する。
つまり。
「ちたん? とは、何でしょう?」
「ああ、知られてないのか。ええとね」
ごんっ、にゅりん。
軽く、叩いた作業台。
そこに、白銀に輝くチタンの延べ棒を、錬成。
マミちゃんに、持たせてみせる。
「わっ、軽い……! 軽銀、でしょうか」
「あー、アルミじゃないんだな」
軽銀はアルミの別称。
実際?
同じ質量なら、チタンよりアルミの方が軽いんだけど。
アルミニウムはねえ?
曲がった途端に、強度が激減する特徴があって。
アルミは、一度曲がったり折れたりしたら、おしまい。
なので。
強度と同時に、粘りが必要な武具の材質としては。
チタンの方が、個人的にお勧めなのだ。
ただし。
アルミもチタンも、融点がめっちゃくちゃ高いので。
そこら辺の鍛冶屋さんでは、精錬できません。
今んとこ?
オレと親父殿しか作れない、材質。
だから。
超、希少ですよ。
「す、凄いのですね……」
「うむ。期待しててよ」
話しながら。
掌に当てた宝剣と、鎧。
錬成のための、下準備中。
親父殿なら?
【錬金】で、材質まるごと変質させちゃうんだろうけど。
残念ながら、錬金術の技量で劣る、オレには無理。
だから。
表面に魔法術式が刻まれた部分は、そのままで。
内部の、芯材だけを入れ替えよう、としている。
……。
難しいんだけど。
何と言いますか。
燃えるぜッ!!
的な。
さあ。
行くぜっ。
両手に、錬成式。
深く、息を吸って。
一発、一気に。
ごぉんっ!!!
「……出来た、と思う。着けてみてん?」
全身から、熱い汗が迸る感覚。
いや、オレは人間じゃないので。
汗腺とか、体にはないから。
実際には、溢れた精霊力が噴出したんだけど。
ときどきやるけど。
これ、股間から背筋を抜けて、脳天まで刺激が奔る感覚。
すんげえ、気持ちいいんだよね。
何というか。
癖に、なっちゃいそうな。
その、快絶の余韻に浸ってるオレの前で。
軽さに驚くマミちゃんが。
いそいそと、装備を身に着けている。
……。
着用してく様子も。
なかなかに、そそりますね!




