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153話 オレの意外な特技に、興味を持たれた

「メテル様! いつ産んだんですか!?」

「オレが産んだと仮定して、相手誰なんだよ……」

「ええと……、処女懐妊?」


 んなわけあるかーっ。


 と。

 師匠を抱っこしたオレ。

 生徒会室に入るなり、ユリちゃんにツッコミ。


 今日は、なんか珍しく?

 みんな、真面目に文書作業してるようだ。


 かりかり、さらさら。

 机の紙に向かって、ペンを走らせる音が響く。

 ユリちゃんも、シグヌイちゃんも、マミちゃんも。


 ……なんか、美少女三人が、静かに文書作業してる姿。

 可憐というか、耽美というか。

 絵になる、って。

 きっと、このことを指す単語なんだな。


「お世辞言っても、何も出ませんよ?」


 くすくす。

 軽く笑ったシグヌイちゃんが、お茶を入れてくれた。

 わぁい。


 マミちゃんを見ると。

 軽く目礼したっきり、書面を難しい顔で眺めている。

 ……けど。


 マミちゃん?

 ポーカーフェイスを気取ってますのこと?

 あの。

 耳まで、真っ赤なんですけど。


「……っ! あのっ、職務中ですのでっ……」


 はいはい。

 オレは何も見てない。

 うん。

 ほんとだよ?


「なんじゃ、美少女三人を侍らせるとは、隅に置けんの?」

「侍らせてませんから師匠。ああ、シグヌイちゃん?」


 はい?

 と。

 可愛らしく、小首を傾げるシグヌイちゃん。

 君に、師匠が用事あるんですよ。


「甘味処ですか? 近場に数軒ありますけど」

「なんと重畳! いやさ、職務明けに案内頂けようか?」


 メテル様の客人でしたら、喜んで。

 そんなシグヌイちゃんの返事が聞けて。

 良かったですね、師匠。


 ──喜ばしいからって、なんでオレの胸を揉みますか。

 大きいのが罪?

 そんな、オレのなんて大した質量ないでしょ。

 それこそ、ルコア先生クラスならまだしも。


 ……あれは害悪?

 討ち滅ぼすべき、敵?

 師匠、実行には移さないで下さいね?


 ……ところで。


「それ、何の書類なの?」

「生徒会の計上予算ですわ。冒険者収入が多いんですけど」


 ぽんっ。

 決済印らしき、ハンコを押したユリちゃん。

 とんとん、と書類束を揃えて、箱に入れ。

 ……机の下から、更に大量の紙束を取り出し。


 もしかして。

 ほんとはオレも。

 同じ作業しないとダメ、なのでわ?

 一応、生徒会の一員である、わけだし?


「あ、いえ。お気になさらず。適材適所ですわ」

「数字が苦手なサラも、ここにはおりませんし」


 言われてみれば。

 あいつ、今どこで何を?


「単独で迷宮最深部を目指す、って言ってましたね」

「素材回収せずに、真の強さを得るんだ、って」


 何のことやら?

 みたいな顔で、マミちゃんシグヌイちゃん、口を揃え。


 ……サラム?

 お前、影響されやすいのは、どうにかした方が。

 オレの影響だよな、間違いなく。


 まあ。

 とりあえず、師匠が甘味欠乏症で、うずうずしてるので。

 微力ながらっ。

 オレも、お手伝いしませうー!



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「メテル様、意外な特技をお持ちなんですね……」

「まあ、昔取った杵柄で」


 まじまじとオレを見上げるユリちゃんの、頭を撫で撫で。


 てくてく。

 学園を出て、王都。

 今日は珍しく、全員徒歩。


 貴族の子女だから、普段は馬車なんだけど。

 師匠が、町並みを歩いて観光したい、と仰るので。

 背がオレと近いマミちゃんと、手を繋いで。


 ……やべえ、マジで普通にお子様扱いしてる。

 不遜とか怒られたりしないよな、これ。


「意外というか、あの計算尺? 覚えたいのですが」

「いいよ? 玉の動かし方自体は、難しくないし」


 ユリちゃん、ほんとに興味出たんだな。

 何にかって。

 ……数字の計算大量だったので。

 ティーマと協力して、錬金術で、そろばんを作ったのだ。

 権能の問題で、総金属製になったんだけどね。


 意外や意外。

 そろばんみたいな計算道具、王国になかったらしく。

 当然、珠算も存在せず。

 オレが怒涛の勢いで計算してくのを、唖然と見られた。


 いや?

 珠算に慣れたら、脳内でも計算出来るんだけど。

 やっぱり実物があった方が、検算も兼ねられるので。


 で。

 シグヌイちゃんはというと、早速販売を考えてるらしい。

 今も総金属製のそろばんを、しゃかしゃかといじってる。


「これは王国の経済に与える、影響が大きいですよ!?」

「そんな大げさな」

「本当です! 四則演算が出来て、屋外で使えますし!」


 ああ、そういうことか。

 計算に、紙もペンも要らないし。

 究極的には悪天候でも、玉は動かないしな。

 まあ、木製のそろばんは、屋外で使うと痛むんだけども。


 ただ。

 シグヌイちゃん、四則演算って言ったけど。

 割り算掛け算は、九九を暗記してるの前提なんだよね。

 ……小学校のころ、覚えられなくて居残りしたなあ。


 かた落とし、両落とし、やり方はいろいろあるけども。

 ユリちゃんやシグヌイちゃんくらい、頭脳明晰なら。

 すぐに、覚えられる気もするな。


 まあ。

 玉の動かし方と、九九を教えるくらいは、軽いもの。

 頑張って、王国にそろばんを伝えて下さいましー。


 と、いうわけで。

 師匠所望の、甘味処。

 もう、すぐに到着ですよー。


「あ、では私はここで。そろそろ、練習時間ですので」

「そうだった。じゃ、マミちゃん、はいこれ」

「お借りします! 必ずや、成果をお見せしますので!」


 そんな気負わなくても大丈夫だよ。

 で。

 具体的に、どんな塩梅なんです?


 ……。

 全身小刻みに、ガタガタ震えてますよマミちゃん。

 なんか、変なトラウマ植え付けられてない?

 大丈夫?


 セバスさん、剣技に関しては意外と鬼畜らしいので。

 ヤバイと思ったら、全力で逃げるんだよ?


「あの方を前に、逃げられたら大したものです……」


 諦めてるっぽい。

 ううむ。

 強く、生きてね?


 俯いて歩き去る、マミちゃん。

 背中が妙に、煤けていた。


 さて、師匠。

 執拗にオレのスカート、めくるのやめて下さいよ。

 まあ、めくっても下はスパッツですが。


 邪道?

 師匠がめくるの分かってるからですよ。

 リルなんか、めくられまくって泣いて家に帰ってるし。

 今頃、急いで履き替えてると思う。


 オレが移動してるのは、分かると思うので。

 リルが来るまで、大人しく王都観光しましょうね。


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