15話 劇的(以下略)なことになった
200ポイント超えましたぁ。
ありがとーございますぅー。
今後ともっ。
ひとつ、よろしくおねがいしまっす。
「どうして、こうなったし」
呟く。
服飾屋の、更衣室。
カーテンの向こうには、怒髪天の鬼がいる。
「デメテル姉さま、何かおっしゃいまして?」
「いいえ妹よ、何も言っておりませんとも」
……怖い。
マジ怖い。
きっかけは、店に入るまでのやり取り。
『で、めーちゃんは今、どんなの履いてるの?』
『オレ? 履いてねえけど?』
凄い勢いで怒られた。
あんなマジ怒りしたの、長い付き合いで初めて見たぞ。
つっても。
女物の下着って、なんかずり落ちそうでイヤなんだよな。
着け心地が、なんか緩いか窮屈か、どっちかでさ?
どうせならきゅっ、と締まるのがいいんだが。
「メテルさん、気に入ったのありましたかしらぁ?」
「どわっ!? いやまだ履いてないですよ!」
しゃっ、とカーテンをいきなり開けられて、狼狽。
めっちゃ全裸なんですけどー!?
その、オレの視線の向こうには。
金髪ポニテでタレ目、華奢で儚げなお姉さんがいた。
これが服飾屋の店長、コルトさん。
レイドさんの子供用に猫耳編んだ、手作り命な職人さん。
店に並んでる下着や衣類はほぼ全部、ハンドメイド。
……だが、男だ。
つまり、お姉さんにして、おネエさん。男の娘さん。
ぱっと見、そんな風に見えないのが服飾の達人たる所以。
胸も尻も、きっちりと中身が詰まっていて柔らかい。
その、中身の真実は一体何なのか、気になりすぎる。
元々は革鎧の職人兼、冒険者だったらしいけど。
既製品が体に合わなくてちょくちょく自作してたらしい。
そのうち作業の幅が広がって、店舗持つに至った、と。
その理由もなるほどの、だいなまいとばでぃ。
ばんきゅっばーん、なんだもんな。
ぽんきゅっぽーん、なオレとは質量が違う。
「あら、メテルさんはそのままが素晴らしいですわよぉ?」
「いや、お褒めの言葉は嬉しく思いますが、ヨダレ」
「じゅるりぃ。あら、ごめんあそばせ、ハァハァ」
……ぜったいヤバい人だ、この人。
初めて会ったときから、なんか熱い視線感じるし。
この体になって危機感って、コルトさんの目線くらいだ。
それは、襲われそうとかそういうのじゃない。
どっちかってーと。
『全力で、着飾られてしまうっ!?』
みたいな。
あ、妹を店員さんと遊ばせてくれてるのは助かってます。
猫耳も猫手袋も、マジ感謝です。
シルフィが血反吐吐いて悶絶しましたからね。
子供好きで子供に好かれまくりなんだよね、コルトさん。
見た目はほんっと普通の女性だもんな。
──冒険者時代は武闘家で、ガチ前衛だったらしいけど。
「めーちゃんまだ掛かりそうだから、アタシも選ぶー!」
「あ、こら待てシィ! 二人っきりにすんなー!?」
くそう、逃げられた!
「……ふーっ……」
「うひぇほぉぅ!? 耳っ、耳に息はらめぇ!?」
「ほんと、お肌もキレイで羨ましいわぁ、若い子って」
「ひやぅん!? 指先で背筋も、ら、らめぇぇぇ!!」
「フフフ。大丈夫よ、おネエさんが優しくしてあげるから」
「不吉な予感しかしない! 勘弁してつかぁさいぃぃ!」
敏感なのはぁ、長いこと触感とかなかったからだからぁ!
──逃げられなかったよ。
たっぷり、一時間半。
オレは、全身を蹂躙され尽くした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「こ……、これが、オレ?」
全身鏡の前に、立つ。
そこには。
全身を純白のドレスに身を包んだ、美少女。
目は、驚きに見開かれている。
ああ、間違いなく……、オレ、のはずだよな?
耳の横から後ろに編んだ髪が後ろで更に束ねられて。
アタマの上からぴょこん、とアホ毛が出ている。
基本は元々着てた白ワンピースに近いけど。
肩と背中を出して、帯でスカートを吊る形のドレス。
スカート丈は膝より少し上くらい。
今までみたいに足に纏わり付かずに、なんか楽。
下着もオーダーメイドみたいになってしまった。
初めて着けた乳バンドは、意外にも苦しくない。
胸の下に硬い革? みたいな支えが入っているようだ。
それが、軽く下から胸を持ち上げるようになっている。
首紐と背中紐で、支える力が絶妙に分散している。
着けてる、って感触はそりゃあるけど。
動いたらズレる、って不安はないに等しい。
いちいち胸がゆさゆさ揺れるのが邪魔だったんだけど。
これなら、着けておこうかな? と思えてしまう。
動きの邪魔にならないくらい、付け心地が軽い。
極めつけは、ぱんつ。
Tバック? って言うんだっけ?
なんか、ふんどしみたいな造形。
尻の割れ目に沿った紐が尻の上端で分かれて、前へ。
両腰の上端に軽く引っ掛けた形。
覆う面積は最小限。
でも。
普通のより確実に保持されてる感覚で、不安は少ない。
それに、上から更に、短めのスパッツを重ねて履いてる。
これは革帯を股間に通すタイプで、かなりの食い込み感。
前から股間を通して後ろに抜け、尻下で両側に分かれる。
その帯は、腰の横で腰ベルトに繋がってる。
それが。
股間を完璧にガード、尻肉を吊り上げてます、って感じ。
足を広げてもズレる心配ないし、動きに制限ないし。
個人的にはなかなかに、お気に入り。
あと、膝丈のスカートから下は、足だけど。
ガーターと腰ベルトで、厚みのあるストッキングを保持。
風でスカートめくれるのが嫌いだったから、これも安心。
生足じゃないので、凄い安心感があるし。
……あれれ?
着飾られはした、けども。
これって、冒険向きセッティング、なのかな?
「後は手袋とマントかしら。武器を選んだ後にまた来てね」
「あれ? 冒険者になる、ってオレ言いましたっけ?」
「魔法屋さんからお願いされたわ。明日の予定だったけど」
別に、今日やってもいいじゃない。
そんな風に、柔らかく笑うコルトさん。
うん。
この人、全然男性に見えない。
シルフィより可憐に見えるんですけど。
ほぼ全身新調だけど、出世払いでまけてくれるらしい。
ありがたやっ。
でも。
オレの全身寸法測ったその紙、シルフィには見せないで。
絶対、恨みの目で見られるからっ。
そして親父殿。
あなたはどうしてそんなに顔が広く慕われてるんだろう。
マジで、何者なんだ?




