表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
148/200

148話 地下通路を、発見しました

「しくしく。女性陣で仲良くお風呂の予定が」

「地下水道で風呂る、嬢ちゃんのがおかしいんだからな?」


 むぅぅ。

 そうなのだ。

 ロックさんの、言う通り。

 結局、のんびりお風呂したの、オレだけ。


 サラムが豪快に沸騰させて、煮沸消毒したので。

 全然問題ないと思うんだけどな。

 いやまあ、あの温度に浸かれるのはオレだけだろうけど。


 サラム?

 知らん人と一緒に浸かりたくないそうだ。

 気持ちは解らんでもない。

 この歳で、つるっつるだもんな。

 どことは言わんが。


 まあ、それはそれとして。

 全身綺麗に拭い拭いっ。

 衣装も水洗い、乾かし再装着っ。

 ハイパービューティメテルちゃんっ、再誕っ!


 ……目をきらきらさせてるサラムしか、反応してくれん。

 ツッコミ不在のボケは虚しいですよね。


 で。


「地下水道まで降りて来ましたが。目的地は?」

「それが判らなくて困ってんだよ、嬢ちゃん」


 やれやれ、と肩をすくめるロックさん。

 抜け道を、探してるんでしたよね。


 聞けば。

 もう何週間も、この辺りを探索してるんだとか。

 最初はスライムの巣窟で、すっげ難儀したそうで。


 ああ、ということは。

 下水道と、どっかで繋がってるんでせうね。


 下水掃除のために?

 だいたい、どこの街でも。

 スライムを、放し飼いしてるらしいので。


 スライムって移動は遅いけど、雑食性なので?

 ドブネズミとか、Gとか。

 病原菌の運び手を、残らず食べてくれるんだって。


 あと。

 意外と綺麗好きというか?

 水中の病毒や廃棄物を全部食べて、浄水するそうで。


 下水に限らず。

 浄水槽や池があるような、大きな邸宅や、施設。

 そういうとこでは、地上でスライム飼ってるって。


 いかにもファンタジーな、魔物の使い方だなと。

 妙に、感心するオレでした。


 ただ。

 周囲の毒物や汚物、生物を片っ端から捕食する関係上。

 スライム本体って、基本的に猛烈に汚いらしく。


 ……ロックさんたちの、最初の方の探索は。

 スライムの持つ病毒との戦いでもあった、とか。


「大変だったのよ? ロックは全身に発疹出るし」

「その話はするなセリ、背中が痒くなっちまう」


 はいはい、なんて両手を広げて呆れるセリさん。

 なんか。

 お似合いの、夫婦っぽい感じですねえ?


「あはは、やめてよ。下の子たちも、いつ結婚するかって」


 短弓担いだセリ班の子たちが、明日ーとか来年ーとか。

 いやいや?

 これは脈有りなんじゃないですか、ロックさん?


「ないぞ? これでも騎士爵持ちだ、平民と婚姻は厳しい」


 あらら。

 騎士爵って、最下級の貴族だっけ。

 だから、王国の全騎士って全員貴族なんだよね、一応。

 一代限りで、世襲しないらしいけど。


 騎士といえば、剣聖カイオンさん。

 あっちも、一代騎士なのかしら?


「カイオンもそうだな。あっちはそろそろ秒読みだったか」

「えっ? まだ結婚してませんのこと?」

「ああ。奥方になるハクラの、後継者が居ないそうだ」


 あらら。

 オレ、二年以上も寝てたから。

 その間に、とっくに結婚してると思ってたのに。

 意外なところに、障害があったんだなあ。


「さて。俺たちの仕事っぷりは、拝めたか嬢ちゃん?」

「みんな頑張って探索してるんですねえ。感心感心」

「嬢ちゃんに感心されてもな。奥方様に、よろしくな」


 ふぇ?

 ああ、探索行、ここで終わりというか。

 ここから放射状に、通路っぽいたくさんの道があるけど。

 全部、瓦礫や崩落跡で行き止まってしまっていて。

 どこかにあるはずの、抜け道を未だに探索中、と。


 ……ふはははは。

 それこそ、オレ向きの依頼ですよロックさんっ。


「そういえば、奥方様の娘御は全員、魔法使いだったな」


 なんか、役立ちそうな魔法があるのか?

 って。

 いや、魔法というわけではないけども。


 だって、地下道ですよ?

 大地の大精霊たる、オレ。

 隠された道筋を、発見するのなんか。

 お茶の子さいさい、でございますっ。


 つまり。

 ぺたり。

 しゃがんで、床に手を。


 意識を集中、させる手間すら要らず。

 地脈越しに……、空間を探すっ!


 ──。

 ビンゴ!

 ごどおおおん、ごごごん、ごぉぉん!


「な、なんだ!? 全員集合、伏せろ!」


 あ、失礼。

 そういえば、人間の視力じゃ闇の中は見えないですね。

 カンテラの明かりの範囲外で。

 オレが、抜け道に繋がる床を、破壊した音です。


「サラム? 明かりを」

「分かったー!」


 ごぉぅ!

 サラムの片手に生まれた、球焔。

 それを、サラムが思いっきり。

 今、新しく出現した地下への階段へ、投げつける。


 焔は狙い違わず、地下通路へ着弾し。

 その入口の周囲を、目映く照らし出した。


「ふふーん。見直しましたか、オレたちを?」

「……ああ。なんてこった、更に下だったのか」


 嬢ちゃんたちに、助けられたぜ。

 なんて、苦笑してるロックさん。

 軽く、片手を打ち合わせて。


 では。

 探索、継続ですね?


「いや、嬢ちゃんたちはここまでだぞ?」

「な、なんででございませうか!?」

「この先は未踏だからな、お嬢ちゃん連れて行くと」


 ……あー。

 雇用主な、御母君に怒られてしまう、と。


 うーん。

 仕方ないかなあ?

 時間的に、そろそろオレらも門限近い気がするし。

 無断外泊すると、意外と怒るんだよね我が家。


 いや、怒る人は親父殿や、御母君ではなく。

 主に、食事や風呂その他の準備をしてる侍女さんズが。


 侍女さんズの、ご機嫌を損ねると。

 ある日ある朝、目覚めたオレが起き抜けに着飾られたり。

 そんな、地味な仕返しが恐ろしいオレガイル。


 じゃ。

 そういうことで。


「更に進展があったら、連絡するって伝えてくれ」

「はいはいー。じゃ、また遊びませうねー!」


 ぶんぶんっ。

 力いっぱい、両手を振って。

 セリさん以下。

 セリ班のちびっ子たちが、笑顔で送ってくれた。


 ……ラグさん以下は、とうとう無視されたままだったな。

 ううむ。

 次回こそは、もっと仲良くなってやるっ。


 さあ、サラム?

 我が家に、帰るべさ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

──少しでも面白いと思ったらっ。評価ボタンを押して頂けますと、感謝感激でございますっ。──


小説家になろう 勝手にランキング

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ