131話 恥ずかしがり長身女騎士が可愛い
「おや? ご機嫌よう、メテル様」
「あれ? マミーヤちゃん、おうちこの辺?」
なんと。
ルコア先生のおうちのお隣。
マミーヤちゃんの邸宅でした。
元々、学園に入学する以前から家族ぐるみの付き合いで。
親の代から家同士で仲がいいんだとか。
へぇー、意外な繋がり。
で。
サラムはなんで居るし?
「んとね、ボクとマミ、剣のお稽古してるの!」
「とんでもない。サラムさんの胸をお借りしております」
相変わらず、謙虚な子だなあ。
マミーヤちゃんち、武家だから。
邸宅の庭が、練兵場みたいになってるそうで。
それはいっぺん、お邪魔してみたいな。
「是非に! メテル様も凄腕と、サラムさんから」
いやいや。
オレとサラムが、純粋に剣技だけでやり合ったら?
一瞬で勝負決まると思います。
それ以前に。
オレ、剣は使えませんので。
……ちくせぅ、妹に負けてるって悔しい。
「サラムさんに聞いた通り、ご謙遜が巧いですね」
「いや謙遜でも何でもなくだな……、ええと」
美少女に疑いのない眼差しでじっと見つめられると。
ううむ、対応に困ってしまうな。
で。
ルコア先生んちに行く、つったら。
サラムとマミーヤちゃんも、ついてくことに。
意外に大所帯になってしまったな。
オレ、シグヌイちゃん、マミーヤちゃん、サラム。
手土産も何も用意してないわ、そういえば。
近所に、なんか適当なお店、ないかね?
「ええと? さっき、マミと一緒に買い物したお店が」
「サラムさん!? それは内緒でとお願い……!?」
んん?
何ですかね?
マミーヤちゃん、めっちゃ狼狽して。
って。
シグヌイちゃんが、可笑しそうにくすくすと。
ん?
耳?
はいはい、なになに?
「マミは甘い物と可愛いものに、目がないのですわ」
「へえ? 別に、女の子らしくていいじゃんね?」
「それが。武家の女子らしい外面を気にするタチで」
ああ。
それでか。
普段の格好からして?
ガチ武闘派女剣士! って感じがバリバリだもんね。
佇まいも、いつも凛としてて。
しかし。
ギャップ萌え……、アリですな!
「マミのお部屋、ぬいぐるみでいっぱいなんだよー!」
「サラムさんっ……、ううう、内緒なのですよぅ」
長身の美少女剣士が、赤面内股もじもじしてます。
お持ち帰りますか?
>>YES/NO
……いや。
持って帰ったら多方面から怒られそうなのでしないけど。
なんだ生徒会役員。
可愛い子だらけすぎる。
オレ、ひたすら愛でたくなりつつ。
「ふふ。マミが一押しのケーキ屋さんが、近所なんですわ」
「お、いいね。寄りませう、そうしませう」
「あのねあのね、ボク、あそこのチーズケーキ大好き!」
顔を覆っちゃったマミーヤちゃんを、囲んで。
両腕に腕を絡ませの、背中を押しーの。
さあ、いざや行かん、甘味の旅へ!
「あの、ほんとに内緒にしてくれます……よね皆さん?」
「「「もちろん!!」」」
声を揃え、にっこり。
──ただ。
これだけ分かりやすい反応する子だから。
知らぬは本人ばかりなり、で。
周囲に、いろいろとバレバレなんじゃないのかしらん。
……伝えないでおこうっ。
そっちのが、可愛いとこまた見れそうなのでっ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あら? いらっしゃいませ、皆様方」
「ルコア先生っ、こんにちはぁーっ!」
召使いさんに通して貰った、ルコア先生のおうち。
北方に領地あるから、王都の別宅なんだそうで。
お隣のマミーヤちゃんちほどは、大きくないけど。
さすが貴族の家らしく、内部はしっかり天井が高い。
でも。
使用人は、年配な召使いのお婆さんが一人だけ。
二人暮らししてるらしい。
ちょっと、手土産多すぎたかな?
マミーヤちゃんおすすめのケーキ、数が多くて。
全種類、一品ずつ買ったからな。
「では、狭い家ですが、ケーキ会ということに」
婆やと二人では、食べ切れませんので、と。
苦笑する様子も大人の魅力だ。
「急に押しかけて、ごめんね先生」
「いえいえ。私、本日は非番でしたので」
賑やかな食事会は、嬉しいですよ、って。
奥の食堂に通されて、皆で着席。
持ち寄ったケーキ箱を、御開帳~。
すぐに部屋中に充満する、甘い香り。
婆やさんが入れてくれた紅茶の香りと混じって。
うーん。
なんか、いかにも女子会って感じですなあ。
ぱくぱく。
もぐもぐ。
甘いっ。
旨いっ。
さすが、マミーヤちゃん御用達っ。
「あの? ですからメテル様、その……、内緒に……」
「身内しか居ないから! 大丈夫、心配ないっ!」
全員の目線が、生暖かく恥ずかしがるマミーヤちゃんへ。
でも。
ケーキを口に運ぶ手が止まらないのが、可愛い。
今度?
精霊大陸産の食材で。
適当に、甘い物作ってあげようかな。
確か?
女子寮に、生徒用の厨房あった気がする。
「それで? 本日は、どういったご用向きで?」
「……はっ!?」
完全に忘却してましたとも。
和やか女子会の雰囲気で。
普通に、女子っぽい話題で盛り上がりつつありました。
そうではなく。
あの。
お願いがですね?
「うーん、追試の免除ですか。少し、難しいですが」
「あー、やっぱ無理ですよねぇ……」
……ん?
難しい、って仰いましたのこと?
無理、ではなく?
「つまり、試験が必要のないことを証明すればいいので」
ちょっとだけ困り顔の、ルコア先生。
一定以上の黒魔法の知識と実力を示せば良い、って。
ああ。
学科試験だもんね。
単位を得るなら、相応の実力があることを示す必要が。
……しかしっ。
くぅぅ。
精霊魔法込みなら、ちび精霊たちに命令するだけだから。
楽、なんだけどなあ。
黒魔法。
ぶっちゃけ、調整が難しすぎて。
効果の完成型を三語に分解して?
詠唱と掌相で魔力魔法陣を合体させて?
全ての回路に魔力を充填して、放出。
──できるかーっ!
黒魔道士の皆さん、ほんとに間違いなく天才揃いだよ。
オレ、覚えられる気が全然しないもん。
「リルさんと同室でしたよね、メテル様?」
「ふぇ? そうですけど」
「リルさんと共同で、研究レポートを書いてみては?」
「うえぇ? あいつとー??」
あいつ、今も図書館だったかな?
昼に戻って来なかったからな。
ええと。
図書館って、王宮と貴族街の間にあるんだっけ。
そこまで遠くはなかった、と思ったけど。
「私も調べ物がありますし。一緒に行ってみますか?」
「あ、それは是非ともっ!」
オレだけだと、たぶん了承してくれないからなあ。
あれ?
ルコア先生が協力的なのは、なんで?
「一応、生徒会顧問ですからね」
「むー? なんか、含みがありそうな」
そのうち分かります、って。
むー?
なんだろ。
まあ、そのうちほんとに分かるんだろう。
とりあえず、目先の追試回避が優先ですよっ。
そういうことで。
マミーヤちゃんとサラムは、修練の続きするのでお別れ。
シグヌイちゃんも、自分の商会に行く用事あるそうで。
でわ。
ルコア先生と、いざ図書館へー!




