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13話 錬金術、便利なんですよ?

「はぁっ、はぁっ……。魔法屋の娘さん、侮りがたしっ」

「目、大丈夫ですかほんとに?」


 魔道士って一応、自己ヒールも出来るんだなあ。

 本職の僧侶よりは効き目が劣るんだっけ?

 冒険中は魔力温存で、回復役が居るなら任せるんだって。


 役割分担かあ、勉強になるなあ。

 ぼろぼろ涙流すセラさんに説明させちゃって……。

 罪悪感、全力マシマシ。


「めーちゃんがぶったぁ。親にもぶたれたことないのにっ」

「自業自得だ、どあほぅ」


 こいつはほっとくとして。


「で。……オレの番、ですよね?」

「《魔力(グール)》《結集(トル)》《防壁(ベリア)》、【フォースシールド】!」


 ……詠唱魔法、初めて見た。

 力、行動、結果の三語から成る、んだっけ?

 でもオレらは精霊だから、魔力動かすの無意識だもんな。


 親父殿もいつも、無詠唱だし。

 ……親父殿、よく考えたら何者なんだ?

 しがない魔法屋なのに、無詠唱使いって。


 で。

 警戒心、全開ですねセラさん。

 中止しない心意気、それがギルド受付嬢の誇りですか。


「あ、たぶんたぶん、大丈夫だよセラさん?」

「くっ、現役の頃ならあと数枚重ねがけ出来……ほんと?」

「ほんとほんとほんとー。魔力最大量、アタシだもん」

「ああ、ほっとしたわ。じゃ、気楽にねメテルちゃん!」


 ……でもシールドは消さないんですね。


「……そんな大げさな。オレ、大したことないって……」


 ぺたり。

 ……ぱんっ!


「……ああああ!! それ高価なのにぃぃぃ!?」


 あるぇ?

 一瞬で、木っ端微塵になったぞ?


「大丈夫だったでしょ? めーちゃんは出力最高値だから」

「ちょっと、ほんとにらめえぇぇぇ!?」


 セラさんが全力で破片をかき集めている。

 ううむ。

 予想外すぎたぞ。

 人間の道具って、脆いな。


 まあ。

 そんなときのための、オレだ。

 一家にひとり、オレ。

 どこのご家庭でも、便利なオレ。

 そう。

 オレは、親父殿直伝の錬金術士だからして。


「……【錬成】」

「ああ、どうしよ、ひとつしかない水晶玉……、えっ?」


 しゅるしゅるしゅるっ……、きぃぃん!


「たぶん、直りましたよ?」

「ええええ、何その魔法ー!?」


 何って、ただの錬金術の【錬成】ですが。

 材料さえあれば、何でも元通り。

 制作過程もすっ飛ばせちゃうスグレモノ。


 ……そうなんだよな。

 錬金術って、親父殿オリジナルだから。

 今んとこ、オレと親父殿しか使い手が居ないんだ。


 シルフィや下の妹たちも覚えられないくらい、難しい。

 ──いや難しいっていうか。


 術式を「美しく」編んで使う魔法的には……、邪道。

 なんか、いろいろすっ飛ばしてて美しくないらしい。

 便利なんだけどなあ?


「ただの、錬金術ですよ?」

「錬金術って、こんなに凄かったんだ……」

「そういえば、特に宣伝してないか。今後ともご贔屓に?」

「ええ、今度壊れ物とか持ってくわね!」


 おお。

 本業の営業に繋がったぞ。

 いや、修理業でも稼げるな、これ。

 ほくほく。


「……じゃなくて」

「えっ?」

「セラさん。オレらの適性って、結局何なんですかね?」

「……あっ」


 ──結論。

 わかりませんでした。

 と、いうわけで。

 オレは錬金術士、シルフィは魔道士で登録、と。


 まあ。

 EランクからSランクまで六段階のランクがあって。

 最低レベルの依頼は達成難易度が低いらしいから。

 依頼をこなしてるうちに、追々掴めてくるだろう。

 そんなお話をして貰った。


 で。

 守秘義務で、オレらの能力は内緒にしてくれる、って。

 店の方で隠してないから、バレバレな気がするけども。


 冒険者になったら、他人の能力も聞いたら失礼らしい。

 それは、礼儀として覚えておこうと思った。


「こんな超弩級新人さん、Eランクでいいのかしら……」

「ご指導ご鞭撻、よろしくお願いしまーっす」

「お願いだから、備品は大事にね!? ウチ貧乏だから!」


 はーい。

 さて、今日はとりあえず、帰ってメシにするか。

 明日、セラさんが初期装備集めを手伝ってくれるらしい。

 それもそれで、楽しみだな。


 と。

 階段を降りて、待合室に下った先。

 オレたちの最愛の天使が待っているはずの、その場所。


 そこは、異様な緊迫感が、みなぎっていた。


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