128話 生徒会執行部を撃沈した
案内された生徒会室。
元々は旅館の賓客室で、改装して利用してるんだとか。
道理で?
他の教室なんかと違って、妙に調度品が豪華っぽい。
高そうな花瓶やシャンデリアに、美麗な絵画などなど。
オレにはひとつも、価値が判らないけどな。
そこに、二人の女性が待っていた。
全員、貴族令嬢なんだよな?
「では、紹介しますわね。こちら生徒会書紀の、マミーヤ」
「マミーヤ・フォン・タタールです」
男の子かと思った。
オレがたまに着る、男装の女騎士な服。
オレほどじゃないけど、女子にしては結構な長身。
170センチ弱くらいかな?
目線がほぼ同じ高さの女の子って、なんか新鮮。
普段から、女子の殆どを見下ろしてるからね。
ただ。
オレと違うのは?
腰に吊ったレイピアがよく使い込まれていて。
どうも、正真正銘の女性騎士みたい。
「冒険者資格を持つメテル様と比較されては」
お恥ずかしい、なんて頬を染めるマミーヤちゃん。
なんか、別の意味で可愛い。
男爵家の令嬢で、実家は武家なんだって。
それで男装なのかー。
貴族もいろいろあるんだね。
貴族剣術で、実用に耐えませんから。
なんて微笑みながら言うけど。
その剣柄や手袋の擦り切れっぷり。
明らかに、相当な使い手かとっ。
そして。
居佇まい、凛としてる女騎士なのに?
謙虚で、恥ずかしがり屋さんとか。
今まで、会ったことがないタイプ。
是非ともっ、仲良くしたいところですね!
「?? 何か今、悪寒が」
「あら、窓は閉まっていますわよ?」
「ユリシーズ様、また何か悪巧みを?」
「人聞きの悪い。策謀と言って下さいな、マミーヤ」
ぶるりと身を震わせたマミーヤちゃん、きょろきょろと。
オレのせいじゃないからね?
たぶん。
「改めまして。もうひとり、こちらがシグヌイ。会計です」
「シグヌイ・フォン・クナシルスキーでございます」
こちらはかなり豪華な衣装を纏った、小柄なお嬢さん。
子爵家の令嬢、実家は広範囲の貿易で稼いでるそうで。
精霊大陸にも、交易船を出してるんだとか。
「メテル様には、是非ともお礼を述べよと実家から」
「え、なんで?」
「精霊大陸よりもたらされた造船技術ほかについて」
ああ、アレ?
あれはオレが考えたわけじゃ、ないんだけどな。
シグヌイちゃんが言うには?
王国の造船業が、かつてない規模で活性化したって。
王国って、南方にひとつしか港がないから。
海軍力や輸送能力で、帝国に負けてたんだけど。
海路でも帝国に匹敵する交易力を得て?
王国の資産が、みるみる増えてるそうで。
シグヌイちゃんの実家。
貴族家だけど、実態は商家に近いんだそうです。
なるほど、技術や交易に力入れるわけだ。
それで、会計さんなのかー。
「生徒会室の調度類も、シグヌイの実家から取り寄せです」
「粗品でございますれば」
ユリちゃんの言葉に?
謙虚に、軽く頭を下げるシグヌイちゃん。
でも。
なんか、雰囲気が。
……悪徳領主と越後屋みたいな風情を、感じる。
ふ、不思議だなあ?
たぶん。
シグヌイちゃんが、伏せながらニヤリと笑ってるからだ。
ユリちゃんは、策謀家って話だし。
あれ?
じゃあ、ユリちゃんとサラムは、役職何なの?
「私が生徒会長、サラは副会長ですわ」
「ボク偉いのー!」
サラを副会長にしておくと、人気が高いですからね。
なんて、そっと呟いたユリちゃん。
オレ、無駄に耳がいいので。
ばっちり、聞こえていますのことよ?
まあ、隠し事ではないらしく。
毎年、生徒会長選出選挙があるんだけど。
サラム、下級生に絶大な人気があるそうで。
そのサラムが推すユリちゃんの会長職。
ここ二年、不動の座になってるって。
選挙戦とかまで計算に入れて活動してるんですか。
ユリちゃんっ、恐ろしい子!
……で。
最後の疑問なんですが。
生徒会で、オレ、何をやらされますのこと?
「メテル様は庶務として、ご自由に」
「ほぇ? なんか、いろいろ仕事とかあるんじゃ?」
「いえ、手伝って頂くことはあるかと思いますけども」
基本的には自由に過ごしてて、いいらしい。
ふぅん?
名前貸しというか、所属さえしていればいい、みたいな?
「現状はそうですわ。いずれお力を借りることがあるかと」
「んー? まあ、それでは」
正式な所属の挨拶だし。
居住まいを正し。
素顔を晒して。
元気よく!
「デメテル・フォン・ホーエンハイム! よろしくねっ!」
……全員その場で腰が砕けた。
なんでやねん。




