121話 大地母神って何ですか
「御母君……、ここまでやるかっ、しくしく」
目覚めたるっ。
航海帰還中、ガチ寝っぱなしのオレ。
御母君の魔手から逃れるために。
最下段船底の片隅に設置した棺桶に、隠れたのに。
なんか?
目が覚めたら。
……。
神殿のような場所に、立像として安置されていた。
「女神像が、目覚めた……!」
「像じゃねーから!!」
見知らぬ信者? の方々、口々に。
ありがたや~、みたいな感じでひたすら拝まれている。
いや、だからね。
オレを崇拝しないで下さいよっ。
て、いうか。
ここ、どこよ?
──。
ラスティがめっちゃ慌てて駆け寄って来たので。
どうやら、王都のどこからしいと分かった。
「お目覚めになられたのですね! お喜び申し上げ……」
「それはいいから。オレ、どれくらい寝てた?」
「航海前からお眠りに入られたと聞き及んでおりますが」
え。
通算して、オレ、二年近くも寝てたんですか。
うーん?
最近、寝不足だったからかなあ?
いやまあ。
そもそもオレ、睡眠要らないはずなんだけどな。
まあ、いいや。
過ぎたことは、気にしないっ。
……みんな、変わりなくやってるのかな?
とりあえず。
慇懃なラスティは、相変わらず。
ちょっと衣装が凝った純白で、上質になったかな?
ああ、大司教になったの。
昇進おめでとー。
……。
上が居なくなってエスカレーター式に上がっただけ?
「メテル様を主神と崇める我ら大地母神派との争いがあり」
「なんだそりゃ」
ラスティの話では。
セラさん率いる精霊信仰と、大地母神信仰がぶつかって。
地霊殿、分派したそうです。
……え?
じゃ、ラスティって今、地霊殿のトップなの?
ていうか。
オレが女神って、なんのこっちゃ??
「いえ、ここは王宮の一部でして」
「地霊殿ってどうなったん?」
「元の場所にありますが、査察が入って解体中です」
ああ、なるほど。
元々、街の汚点的な風俗街と密接に結びついてたもんな。
この機会に、国王な叔父上も粛清に動いたのかしら。
まあ。
そういう小難しいお話は。
御母君に、丸投げなのですよ。
で。
話しながら、なんかめっちゃ脱ぎづらい服を脱ぎ脱ぎ。
ほんとに女神様みたいなびらびら衣装なんだもんよ。
歩きづらいったら。
周囲の女性侍祭とかが?
半裸のオレ見て、ぱたぱた倒れてるけど。
……今オレは、それどころではない。
「め、メテル様!? あの、何を」
「ラスティ! オレが目覚めた今、やることはひとつだ!」
「はい! 何でございましょうか!?」
「美味しいごはんが食べたいです!」
何はともあれ。
お腹いっぱいなのが、幸せだと思いまっす。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「お米は八十八回噛んで食べると美味しいんですよぅ」
ふみゅぅぅぅ。
至福。
もぐもぐ。
もぐもぐもぐもぐ。
美味しいぃぃぃぃぃぃぃぃ。
夢にまで見たTKG。
卵かけご飯の、喜び。
もうこれから、三食全部、コレでいい。
「全くもう。お寝坊さんすぎるわよ、メテルちゃん」
「すみません、寝過ごしました」
見慣れた離宮、御母君の執務室。
わざわざオレの大好物を、用意してくれてた。
オレ氏、感涙にむせび泣く、なぅ。
その。
お茶碗片手にひたすら食べまくってるオレの、目の前。
御母君、また成長したんですね。
だいたい、二十代後半くらいかな?
なんか、超がつくくらいの、すらりとした美女。
背丈は、オレとシルフィの中間くらいかな?
そして。
……相変わらず。
素晴らしくスレンダー、ですね。
「どこ見てんのよ!?」
「いえ、変わらないなあ、と」
「どこが変わってないって!?!?」
大丈夫です、御母君。
貧乳は、ステータスですから。
親父殿、そこら辺あまり気にしない人ですし。
「そうそう。あの人が、用事があるって言ってたわよ」
「すぐ行きます!」
「慌てないの。あっちから来るから、ここで待ってて」
ほんとにあの人のこと、大好きなのね、って。
そりゃそうですよ?
オレに体をくれた、大恩人ですもの。
超、尊敬する人だもーん。
なので。
大人しく、じっと待つの子っ。
「ところで。道すがら、何人の女性を餌食にしたの?」
「ふっ。百人から先は数えてません」
めっちゃ怒られた。
毎度まいどのことだけど。
オレのせいじゃ、なくない?




