12話 うわ、まぶしっ
「……? なんだよ、二人して??」
赤面したままのシルフィとセラさん。
なんか二人して、ごにょごにょ話し合ってたと思ったら。
「おねーちゃんはっ、自覚が足りないっ!」
「自覚っていうか、その、美貌の破壊力がですね」
「……はい?」
あの。それは、オレのせいじゃなくない?
オレの外見を作ったのはシルフィなんだから。
……。
あ、はい。
オレのせいになるんですね?
オレの魂の奥に刻まれた本能。
それが、『ここは逃げの一手』と囁いていた。
「いや、とりあえず。手続き、進めて欲しいんだけど?」
「「はっ!?」」
……完全に失念してたな、あんたら。
「そ、そうでした。ええと、名前と年齢、書けました?」
「はい。まあ、オレが19歳、こいつが16歳なんですけど」
「あ、良かった。冒険者資格、15歳以上なんですよ」
「おぅおおぅ。シルフィちゃん、セーフ?」
「うん、セーフね」
舌出してウィンクして見せるセラさんが可愛い。
シルフィもノリノリでVサインなんかしてる。
……オレも何かやるべきなのか?
どうも、こういう女の子同士のノリにはついていけない。
──妙に疎外感を感じてしまうオレでした。
「ほんとはこの後、依頼と料金とランクの説明なんですが」
「だいだいだいっ、だいじょぶ知ってるー!」
「そうよね、シルフィちゃんここ良く出入りしてるし」
なんでそんな頻繁に出入りしてるんだよお前。
って思ったら。
冒険者って、迷宮から魔法具持ち込むことあるらしい。
ていうか。
迷宮って魔物がいるだけじゃなく、アイテムも出るんだ?
迷宮って町外れの川向こうにある、あの洞窟だよな?
いつも入り口に門番さんが居るところ。
毎回アイテム出るって、それ誰かが配置してるの?
そうじゃない、と。
内部で生まれるって?
つくづく謎な場所だな??
なんで地精霊のオレが知らないかって。
あそこ、精霊力が、全然働かない。
つまり、オレの権能で『見えない』んだ。
地脈が伸びないから。
たぶん、他の姉妹も同じなはず。
なんか、そういう話聞くと、興味湧くなあ?
「じゃ、後でシルフィちゃんに詳しく聞いておいてね」
「あ、はい。シィ、頼むぜ?」
「だーいじょーぶっ、まーかせて!」
すげえ不安の残る返事が来た。
こいつの説明、ときどきふわふわしててわけわからんし。
まあ、依頼票に受注ランクとかがあって。
それの達成実績で冒険者ランクが上がる、みたいな?
そんなシステムで運営してんじゃないか、って思う。
よく考えたら、失敗したら違約金とかありそう。
……うん。最初は簡単な仕事からやろう。
「では、魔力適性を見ましょうか。必須じゃないですが」
「ん? ……魔力の、適性?」
「うん、適性。前衛向きとか、後衛向きみたいな目安ね」
「知ってるー! 死亡率、率率率が上がるんだよね!?」
「はい、シルフィちゃん正解ー!」
……あんたらノリノリすぎませんか?
死亡率って、そんな軽く言っていいネタだっけ?
──まあ、オレらはぶっちゃけ、不滅で不死なんだけど。
「やってみた方が早いわ。この水晶玉に手を乗せてみて?」
「あ、ここで使うんだ」
「そう。例えば私の場合だと」
ぺたり。
セラさんが水晶玉に手を乗せると。
少しして、水晶の中央に淡い赤色の光が灯った。
揺らいだ光は輝きを増して、赤光が室内を照らす。
その光は天窓から入ってくる日光より、全然強い。
「これが、適性?」
「そうよ。私は火系の魔道士なので、赤色なの」
「なるなるなる、なーるほどー。魔力の親和性高い系統?」
「大雑把にね。色で属性、大きさで魔力量」
地=緑
水=青
火=赤
風=白
みたいな色合いになるらしい。
魔力自体は人間なら全員少なからず持ってるから。
この検査で、魔道士向きって判明したりもするんだとか。
上手く出来てるなあ?
しきりにへぇへぇ頷いてたら。
くすり、とセラさん笑ってる。
「魔力が大きい人は後衛向きだから、魔道士お勧めよ」
「あ、そう聞きますよね」
「そこで、この初級魔道士冒険セットが今ならお安く」
「間に合ってます。魔法屋ですので」
商魂逞しすぎます、お姉さん。
胸元から取り出さないで下さい。
いま、谷間見えましたよ。
……妹よ、睨むな。
お前にもまだ、成長余地は残されている。
──たぶん。
「前衛、中衛、後衛って種類あるけど、それは後でいい?」
「後で?」
「一応、これが終わったら装備整えるまでは付き合うから」
「サービスいいですね?」
「そりゃ、変な装備選んで最初の依頼で死なれてもね」
くすくす。
笑いえくぼが可愛いセラさん。
言ってる内容は激しくブラックだけど。
そっか。
冒険者って、死と隣り合わせって言うもんな。
うん。
最初はほんとに、簡単な依頼からやろう。
死なない身体だけど、怪我したら姉妹全員怒るんだ。
そして。
怒るとすげえ怖いんだあいつら。
うかつに怒らせると、──人類が滅ぶ。
「冒険者御用達の道具屋や鍛冶屋の紹介も兼ねてるのよ」
ああ、なるほど。
それも冒険者ギルドが仲介手数料取ったりするんだな?
上手く出来てるなあ、さすが組合。
「んとんとんーっと。じゃ、アタシ先でいい?」
「ん? いや構わないけど。なんでオレに聞く?」
「え、だって。──コレこれコレ、魔力計る道具でしょ?」
「ああ。そうですよねセラさん?」
そうよ? と不思議そうにセラさん。
何をそんなに張り切ってんだ、お前?
「よしよしよーっし。じゃ、シルフィちゃん、全力でっ」
勢い良く、片手を振り回すシルフィを眺める。
微笑ましそうに、シルフィの様子を眺めてるセラさん。
……あれ?
なんか忘れてるような。
「はーんど、ぱぅぅわぁぁぁああああ!」
──あ。
もしかして、オレら精霊って。
人間のレベルを、超越してるのでわ?
そう思い至った瞬間。
ビカァァァァァ!!!!
「!?!?!?!!!??? 目がっ、目がぁぁぁぁ!?」
直視してしまったセラさん。
両目を押さえて悶絶していた。
おおぅ。。。
影が、壁に焼き付いてるぜ。
ここが爆心地か。
って、そうじゃなく。
「???? まぶしっ」
「こら。お前、予想ついてただろ?」
「うん? ……アタシ、姉妹で最大魔力量だし?」
ずびしっ。
オレは次女の脳天に、片手チョップを食らわしてやった。