119話 御母君はそこまで飲めない
「おまおまおまおま、お祭りだー」
「「「「「っだー!」」」」」
いや。
断じてお祭りではないはずだが。
──慰労会、だったよね?
シルフィと、五人の子どもたち。
総出で、飛び回りまくりなのは微笑ましいが。
街の仮完成祝いと?
オレら帰還組の、慰労とか見送りとか。
そんな名目で。
いつもの世界樹広場。
エルフ、ドワーフ、オーガ、ダークエルフ。
ついでに、王国民な人間たくさん。
五種族入り乱れの、立食パーティーちゅ。
いや。
広場つっても、以前のだだっ広い平地じゃなく。
今や、小さいながらも村と街の中間みたいな感じ。
もう、住んでる人も居るんだよね確か。
まだ数件の建物と、間に合わせの外壁しかないけど。
御母君の完成予想図に従って?
ごりごり、建物と外壁、建てたんだぜオレ。
石造りなら、任せて下さいっ。
「有り難いんだけど、街路が微妙に歪んでるのよね……」
「楽しいお祭りですよ、はい、御母君、お酒!」
子守しながら建てたら歪んだ、とか言えない。
だ、大丈夫ですよ。
こっちにはウンディもシルフィも残るんだし。
さいあく、地下水動かして?
無理やり、道と建物を動かすという手もっ。
「液状化現象でしょ、それ? 地盤沈下するんじゃないの」
「さあ御母君、もう一杯!」
「それ、コップじゃなくて瓶……、がぼごぼっ!?」
はっはっは。
御母君の細腕で、オレの両手を剥がせるわけもなく。
完全にラッパ飲み状態。
瓶の中身が、ずんずん減ってくのが面白い。
いい勢いで、呑みますね御母君。
いやあ。
御母君も割とお酒、弱いんだよね。
真っ白い肌が、みるみる赤くなってくの見てて楽しい。
……。
後でウンディ呼んでおこう。
二日酔いにでもなったら、後が怖そうだ。
オレ?
呑みませんよっ。
……こんな姉妹勢揃いの宴会の場で、うっかり呑んだら。
妹たちも、一緒にがぶ飲みしまくるに決まっている。
人類の命運や、如何にっ?
「メテル姉がいちばん危ないんだけど……」
「なっ! あんなに素直だったサラムが、ツッコミを!?」
て、いうか。
お前、久しぶりの人見知り、発動してるな?
そういえば、周囲に少なくない人間が居るもんな。
基本的に、ほぼ全員学者さんなんだっけ。
博物学者とか、植物学者とか。
何気に一応、新大陸発見だったから。
持って帰るものが、めっちゃ多いそうで。
「……はああ……。帰るまでに、レポート書かなきゃ」
「よっ、ラティーナちゃんっ、呑んでますかー?」
「……能天気にそんなことする暇が、ないのよ!」
ラティーナちゃんの場合。
御母君の、推薦で?
帰ったら、学校に入学するので。
こっちの大陸で得た、見識を。
レポートに纏めて提出する必要があるそうで。
小論文的なので、いいんじゃないの?
軽くまとめる感じで。
「貴方が元凶でしょ!? 実在する大精霊のレポート!!」
「……え、オレ? ほーらこんな顔だよー」
「それはもういいっ! ああ、もう! ほんとになんで」
いや、怒られても。
て、いうか。
オレら?
帰ったら、四大精霊だって公開するそうです。
……んー。
なんか、勢力大きくなりすぎてる精霊殿の牽制とか。
教義にかこつけて王国の予算、要求しまくってるから。
……ここらで、一発。
オレら、そういうの関与してませんよ?
……的な、話にするって。
政治と宗教のお話、なんか難しい。
ので、そこら辺は御母君に丸投げなんだけどね。
あと。
……。
地霊殿で?
なんかセラさんが、ものっそ幅を効かせてるそうで。
王国最大宗派なので、なかなかに対応が難しいとか。
……。
やだよオレ、あの人の相手するのっ。
なんかそこら辺も、御母君が巧いことやってくれる?
と、信じている。
そうですよね、御母君?
「がぼごぼっ……、こぽぽ……」
やべえ。
呑ませすぎた。
逃げるぞ、サラム。
「えっ? うん。どこに?」
「ここじゃないどこかにだっ!」
あ、そうだ。
エルとティーマに、会う約束あったんだった。
精霊核材料についての話とか、あったからな。
そうと決まれば。
さあ行くぞ!
「メテル姉? ママが泡拭いてるけど」
「ウンディを呼んである! 意識を取り戻す前に!!」
──めっちゃ帰りづらい状況を生んだ気がするが。
ま、まあ?
どうにか、なるさっ。




