表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/200

118話 それぞれの、進路

1,800ポイント超えー!

2,000まで、あと少しっ。

「はあ。くたびれたぁ……」


 ため息ついてる、サラム。

 この子がこんなに疲労困憊してるのは、実は珍しい。

 炎の大精霊、活動力の塊だからなあ。


 ……それだけ?

 シルフィの子どもたちが、元気いっぱいすぎたんだけど。


 只今。

 エルフの里から、ダークエルフの里へ直通の。

 ドワーフ謹製、エレベーターをお楽しみちぅ。


「てか。密閉型じゃないんだもんな……」

「人間が乗りたがらないの、ボク分かる気がするー」


 いや、オレだって分かるぞサラムよ。

 エレベーターの、形状がちょっと、特殊だもんな。

 図面を書かなかったオレも、悪いんだけど。


 つまり。

 真ん中の極太ワイヤーに?

 真ん中が膨らんだ円筒形の、人が乗る部分が。

 ぱちり、と上下で固定されている感じ。


 ワイヤーを下の方でぐるぐると引っ張って、上下移動。

 滑車とか入ってるんだと思うけど、意外と揺れない。

 ただ。

 問題は。


「これ、足踏み外したらただじゃ済まないよねえ……」

「ああ、だろうな」


 オレの腰に手を回したまま、片手はワイヤーに。

 そんな格好で、こわごわと足元を覗き込むサラム。


 円筒形の乗り場に入ってる、とは言え。

 扉があるわけでもないし。

 軽量化とか優先したのか?

 物凄く、隙間だらけなんだよねここ。


 円筒形だけど、縦にかなり大きめのスリットがいくつも。

 乗り降りは、その隙間から出入りする感じで。


 ワイヤーに捕まってれば大丈夫、なんだろうけど。

 足を踏み外しでもしたら、遥か数百メートル下まで。


 ……うっかり、落ちたら?

 人間の形、残らないだろうなあ。


「密閉出来たら、もっと安心なんじゃないのメテル姉?」

「どうだろうな? そこら辺、ちょっと話してみるか」


 密閉したらしたで、風圧の影響受けやすくなるから。

 密閉というか?

 垂直チューブの中を通した方がいいんじゃないかな、と。


「あ、メテル姉、さすが!」


 チューブの中なら、暴れても安心だね!

 ってお前。

 暴れる予定でもあるのかよ。

 違う?

 ああ、火の権能で、自分単独で上がれるかもってか。

 お前それ、壁面にぶつかりまくる前提じゃないのか。


 っていうか。

 自分を火の権能で動かすのなら。

 それ、ジェットエンジンみたいなこと出来るんじゃ?

 推進剤、火の権能的な。

 ジェットエンジンって何かって?

 ググれ。


 ……ググりようがないよな、ネットないし。

 簡単な構造しか知らんが?

 確か内部に羽根がたくさんあってだな。

 ──ドワーフに丸投げしよう、そうしよう。


 蒸気機関の原理伝えただけで機関車作っちゃう、変態。

 そんな超絶技術者揃いだから?

 概念伝えればどうにかしてくれる、と思うっ。


 と。

 そんな取り留めのない話をしてたら。

 エレベーターの終着乗り場が、見えてきた。

 ダークエルフの里、水辺の里。

 今んとこ、精霊大陸唯一の、港湾施設。


 そして。

 港湾に、ずらりと並ぶ、交易船。

 全部で、十二隻。


 交易輸送船、って言っても。

 ウンディ以下?

 水の精霊使いなダークエルフが運用する、船団でもある。

 全長60メートル級の、キャラック。


 海賊を警戒して、そこそこの防御力があるんだよね。

 ……なんかウンディがノリノリで、いろいろ積んでたが。

 ──そもそも、何と戦うつもりなんだよ。


 水竜の姿に戻った?

 全長20メートルのピューイよりもでかいのに。

 そこら辺の海賊が?

 そんなでかい船持ってるわけないだろ。


 船団そのものが、オーバースペックすぎるんだよ。

 オーパーツ、と言ってもいい。


 あと。

 ……帆船と言ったら、大砲でしょっ!

 つっても。

 魔法がある世界だから。

 大砲以前に、火薬が実用化されてないんだよなあ。


「硫黄、硝石、木炭の化合物? 魔法の方が安定している」

「分かってるけど、あの匂いはロマンなんだよ」


 迎えに来たウンディを、問答無用で抱え上げ。

 ついでに、腰に纏わり付いたまんまのサラムも、肩に。

 どうだっ、おねーちゃん、力持ちだろー。


「メテル姉の胸は、やはり心地よい。造成の秘訣は?」

「人の胸を堤防だか埋立地みたいな喩え方すんな」


 どっちも、港湾作成んときに錬成しまくったけども。

 オレの体はシルフィが整えたんだから?

 そっちに聞いてくれ。


 まったく。

 出港準備中だからって、上に来なかっただろ。

 三人で子供五人の相手は、疲れたんだぞー。


「ディーは面倒事、すぐ逃げるもんねー」

「ラームは要領が悪い。所詮、末っ子」


 人の上で喧嘩すんな、どあほう。

 ……こういうやり取りも、なんだか久しぶりな気が。

 街作りその他で、最近妙に忙しかったもんなー。


 ざざあ、ちゃぷり、ちゃっぷん。

 ダークエルフの里の先、入り江に作った港湾。

 砂避け、波除けに防波堤や、テトラポット並べて。

 着々と、交易準備は進行中。


 欲を言えば、灯台や物見台が欲しいところだけど。

 まあ、そういうのはまた、追々。

 今んとこ、優先してるのは。


「もうすぐ帰るんだねえ、ボクたち」

「随分長居したけどなー。学校が、始まるんだとさ」


 オレとサラム、しみじみ。

 そして、苦笑。

 ウンディは、我関せずと海を眺めている。


 そうなのだ。

 姉妹で脳筋派な、オレとサラム。

 親父殿と御母君の、意向で。

 帰ったら、そっこー学校に放り込まれることに。


 親父殿が、何やら観念したとかで。

 辺境に戻って、魔道士の義務で教師をするそうです。

 後進を指導する義務があるんですってよ、王国魔道士。


 周辺国から、王侯貴族の子息女を集めるそうで。

 ……常識を叩き込む、って御母君が息巻いてたっけ。


 御母君が、初代校長なんだってさ。

 こっちで街作りしてたと思ったら、あっちでは学校作り。

 御母君、ほんっとぱわふるだよなー。


 でも、まあ。

 勉強は、嫌いだけど。

 今回は、嫌がってるわけではない。


 オレ的には。

 そろそろ、腰を据えて錬金術を初歩から勉強したいのだ。


 ラティーナちゃんみたいな?

 親父殿の弟子になりたかった人たち。

 に、顔向け出来る腕前を、身に付けねばなあ、と。


 尊敬する親父殿が教鞭を執るんだし?

 一番弟子としては、やっぱり真面目に教わりたいしな。


 そして。


「ディーはこっちに、残るんでしょ?」

「寂しがり屋のラーム、いつでも会いにくればいい」


 姉は歓迎する、とかなんとか。

 シルフィとウンディは、精霊大陸に残るんだよな。

 まあ、どちらも権能ですぐに移動出来るんだけど。

 二人は、精霊大陸発展の方に興味が出たらしい。


 ついでに、マークさんもこちらに居残り。

 交代の冒険者が来るまで、拠点の護衛なんだとか。

 冒険者ギルドの精霊大陸支部を、作るんだっけ。

 冒険者さんも、大変だなあ。


 て、いうかだな。

 こら、ウンディ。

 こっち向け。

 絶対、照れてんだろ、お前。

 サラムが感涙してんだぞ、ちゃんと見てやれっての。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

──少しでも面白いと思ったらっ。評価ボタンを押して頂けますと、感謝感激でございますっ。──


小説家になろう 勝手にランキング

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ