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116話 ラティーナちゃんの笑顔は眩しい

 ぱくぱく、もぐもぐ。

 小動物みたいに、小さな口で、ちまちまと。

 ラティーナちゃん、試作のアイスクリームを食しちぅ。


 いつもの、精霊の広場。

 今日は、人は割と少なめ。

 昼前だからかな?


 二人掛けのテーブルに、オレとラティーナちゃんで。

 向かい合って、着座。


 ……。

 まだ、目は赤いけど。

 とりあえず。

 落ち着いたみたいで、良かった良かった。


「こっちは全然ぜんぜん、落ち着かないんだけど!?」


 あ、スマンなシルえもんよ。

 わざわざアイスの出前、ご苦労であった。


 ……女の子が泣いてるときは。

 とりあえず、アイスを出すと。


 目の前で少しずつ溶けるアイスを、放置出来ないので。

 はむはむと、食べてるうちに。


 気持ちが、少しずつ落ち着いて来るんだよ。


 なんて。

 シルフィが、言うもので。

 試して、みたら。

 効果、てきめーん。


 どこでそんな知識、覚えて来るんだお前?

 内緒?

 なら仕方ない。


 しかし。

 腹と背中にひとりずつ。

 両腕に二人、ついでに腰にひとり抱きついてる様は。

 熟練の、保母さんみたいだぞ。


「めーちゃんが、考えなしに精霊力与えたからでしょ!」


 怒られた。

 えええ。

 だから。

 オレは、魔術素人だと何度言ったら。


「体を維持できる程度の量で良かったのようようょぅ……」


 そんな、深々とため息つかなくても。

 しかし。

 風の子、全員。

 育ったなあ。


 長女、アネモイ。十歳くらい。元気いっぱい。

 次女、ヴァーユ。同じく十歳前後。きょどきょど。

 三女、フェイリャン。八歳程度かな? おませさん。

 四女、フラカン。四歳程度。無口ちゃん。

 五女、ルドラ。二歳くらい。好奇心旺盛。


 ……。

 ううむ。

 大家族、壮観だ。

 大変だな、お母さん?


「だーかーらー! もう、用事なくなったなら、行くよ?」

「ああ、助かった。後で、姉妹で手伝いに行くから」


 絶対ぜったい、期待してるからねー、って。

 あれは行かなかったらほんとに酷いな。

 何がどう酷いって。

 うっかり、大気を真空にしてしまいかねない。


 人類の命運、うちの次女のご機嫌に掛かっていたり。

 ……。

 いつものことか。


「ねえ、あなた」

「んあ? 何かな、マドモアゼル」

「マドモアゼルって、どこの言葉よ」


 ええと。

 フランス語だっけか。

 いつもの調子が、戻って来たかなあ。


「反則だ、贔屓だって、正直、妬んでたわよ。認める」


 ガラスの器に入った、半溶けのアイスの残りを。

 器を口に傾け、一息に。

 あらあら、お嬢さん?

 少し、はしたないですわよ。


 でも。

 こくり、こくり、と。

 真っ白な細い喉が、嚥下する様って。

 なんだか、妙に。

 ……えろいなあ。


「エロいって何よ!?」

「ああ、いや。ええと。いやらしいというか」

「酷くなってんじゃないの!?」


 むっきー。

 そんな勢いで、怒るラティーナちゃん。


 そして。

 アイス一気食いの、宿命。

 おもむろに。

 こめかみを押さえて、テーブルに突っ伏す。


 アレか。

 アレですね。来ちゃいましたね?

 きぃぃぃん!

 って奴が。


 悶絶するラティーナちゃんを、観察することしばし。


「ねえ……。ほんとに、あなた達、大精霊なの?」

「そだよー。オレが大地、今来てた次女が風で」


 三女が水、四女が炎。

 最近は割と制御を覚えて来て?

 すわ大災害の気配、ってのは少なくなったけどね。


 ──。

 なんか。

 いちばんヤバいのは、オレらしいんだが。

 他は相互補完的に、収束方法があるけど。

 オレが地殻動かして大地震でも起こした日には?

 物理的に、止める方法がほぼない、とか言われたな。


 いや、まあ。

 大丈夫。

 また数十億年掛ければ、きっと元通りですよ。

 ……たぶん。


「ふふふ。あーあ、なんか馬鹿らしくなって来ちゃった」


 ラティーナちゃん。

 親父殿と御母君の弟子になることを目指して?

 小さい頃から、魔法の英才教育受けてて。


 今の年齢、なんと17歳。

 この歳で、既に冒険者Bランクなんだから。

 ほんとに、魔道士として頑張ったんだな、と感心。


 けども。

 王宮の薬学部に多数の弟子がいる、御母君と違って。

 親父殿は、ほんとに孤高の黒魔道士。

 今まで、一度だって弟子を取ったこと、なかったのに。


 ……オレ、なんだよなあ。

 地上唯一。

 親父殿の、弟子で。

 大陸に二人しかいない、錬金術士の片割れ。

 俗に言えば。

 愛弟子、って奴よね。


「魔術素人の脳筋が、どんな裏技裏金で、って怒ったけど」


 じっとー、とかオレ、ものっそ冷たい目で見られて。

 うええ。

 他人様にまで、脳筋言われたよしくしく。


 ただ。

 ふはっ、と息を吐いたラティーナちゃん。

 眉根を下げて、苦笑気味に。


「まさか、大精霊様だとは思わないわよ。誠に失礼を」

「あー、敬語とかそういうの、マジでいいので」


 いつも通りの口調でお願いします。

 いや、憎まれ口は勘弁ですけどね。

 でもまあ?

 憎まれ口叩かないラティーナちゃんも、なんか変だな?


「なんですかそれー。おっかしぃー」


 けたけた。

 こっちが、素の喋りなのかな?

 砕けた喋り方。

 いかにもこの年齢の、女の子っぽい。

 好感度アップですよ、おぜうさん。


 そして。

 笑うと、ほんと可愛いなあ。

 って。

 伝えた瞬間に、めっちゃ赤面され。


「うわ、ほんとだ。ホリィ様が言った通り」

「御母君、なんて?」

「女性キラーだから十分に警戒しなさい、って」

「……オレ、全然普通だよぅ、しくしく……」


 なんでそんなこと伝えますかね、御母君?

 これは。

 久しぶりの。

 男装ヅカ女バージョンの、オレ様で。

 御母君が鼻血を振り絞るまで、迫りまくるしか。


 そんな話をしてる間も。

 ラティーナちゃんは、くすくす笑い続けていた。


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