114話 御母君に、人外認定された
「ああ、地と水系の欲しい素材は確保出来るのね……」
御母君が、しみじみ。
……なんで、頭抱えてるのかなあ?
え、出来るんだよな、ティーマ?
《はい、マスターのご要望の通りに》
「出来るってダンジョンコアが言うとりますよ御母君」
「どこの言葉なのそれ。……確かに、暴れては居ないけど」
はああ。
深々と、ため息つくほどのことでせうか?
「ほんとに、何でも常識の外に居るのねメテルちゃん……」
「え? オレ全然普通ですけど」
「あのね、普通はっ!」
……はあ。
御母君が、仰るには。
ダンジョンコアを討伐した人間は、歴史上多数居ても。
ダンジョンコアを従えた者は、史上初なんですって。
わぉ。
オレ、歴史上初の成果っ。
「いいこと!? 絶対に秘匿するのよ!?!?」
えー、はい。
それはもう。
だって。
世界にたった二人の、錬金術士で。
大精霊で、美少女? で。
世界樹の精霊が母と慕って。
火の大精霊に、なんでか狙われてて。
ダンジョンコアが、しもべになって。
……。
設定、盛りすぎだろういくらなんでも。
誰だよこんな変な奴。
──オレだよっ!?
えええ。
オレ、全然ごく普通の地の大精霊ですのに。
なんでこんなに。
いろんなフラグが、立ちやがりますのこと?
「めーねぇ? 精霊な時点で、人間の普通から外れている」
「それを言っちゃぁおしめぇよぅ」
べらんめぇ、てぃっ。
……って、まあ、それはともかく。
とりあえず、帰ってご飯にしませんかね?
正直言いまして。
体動かしたので、お腹が空きましたのですよ。
「まあ、そうね。しばらくここには滞在するから……」
調査自体は、継続出来るだろう、とのこと。
まあ。
世界樹の迷宮。
ぶっちゃけると、ここひとつだけじゃないですからね。
親父殿が事前に潜ったのが、ここだというだけで。
あれ?
じゃあ。
ティーマみたいな存在が、他にも居るってこと?
《否定。私は全にして個、個にして全》
「オレに分かる言葉で」
《端末は複数ありますが、意識上は全て私です》
「ほうほう、なるほど」
つまり、あれだ。
ガラガラの部屋、たくさんの電話機。
電話番してるのは、たったひとりのティーマ。
……すんげえブラックな職場だな、オイ。
《そのイメージは実態と異なりますが。お望みであれば》
望みませんよっ。
ホワイトに九時五時定時、ノー残業でよろしくです。
《マスターの、御心のままに》
そんな感じで。
ティーマとは、一旦迷宮の入り口で、お別れ。
……ティーマ、一緒に出たがったんだけど。
なんか精霊力的な制約で?
迷宮内部から、出られなかったのだ。
うーん。
可哀想なので、ここら辺はなんとか対策したいところ。
「めーねぇ。持ち帰るコアの核で、工作可能の可能性」
「お。期待してるぞ我が家の魔法巧者」
……ほんとにいちばんは、シルフィなんだけどな。
姉妹以外には、判らないだろうけど。
大威張りで、ご機嫌になってるウンディ。
魔法に関しちゃ、お前も頑張ってるもんなあ。
じゃ、よろしく頼むぜっ。
……。
その、シルフィはというと。
エルフの里に作られた、拠点に戻ったらば。
五つ子の世話で、疲労困憊になっていた。
「わぁぁん。子供の世話が、こんなに大変だとは……」
「お前、しばらくそれ以外何も出来そうに、ないな?」
「ううう。せめてもう少し育ってくれないと、心配で」
成長の仕方に、少しバラつきがあるみたいで。
長女のアネモイは、早々と二歳前後まで育ったけど。
末っ子のルドラは相変わらず零歳児のまま。
風のちび精霊のことは、オレには判らないからな?
手助け出来るものなら、やってやるんだけど。
「ほんと? おねーちゃん、有り余る地の力、分けて!」
「いや確かに余ってるけど。分けるって?」
……。
オレが力の分け方、不得手なので。
五人全員に、キスすることに。
口移しでないと、力を分けられないオレのせいですが。
──。
赤ん坊状態なら、まだ見た目的にセーフな気がするけど。
ぬらぬらスライム状態の精霊に、キス、というのは。
なんだか、妙な感じが凄く。
こんな体験、そうそうあるもんじゃ、ねえよなあ。
まあ。
他ならぬ、姪っ子たちのためだっ。
伯母さんのっ、愛を、たっぷり受け取るのだー。
「注ぎすぎに注意してね、めーちゃん?」
……魔術ド素人のオレに、適量なんか。
分かるわけが、ないだろう。




