11話 冒険者さんたち、お世話になります
100ポイント達成ーっ。
どんどんぱふぱふー。
ありありありあり、ありがたやっ。
今後とも、よろしくお願いしまーっす。
「ほーら、高いたかーい!」
「「わああぁぁぁぁ!! もっと、もっとー!」」
……正直、超絶に意外だ。
ごっつい筋肉なおっさん冒険者。
全身傷だらけの鎧に、背中には大きな両刃の斧。
見るからに、歴戦の勇士、そしてベテラン冒険者。
そんな猛者が、上手く妹たちを構っている。
……ていうか。
オレよりあやすの上手いんじゃなかろうか。
なんか、負けた気がしてならない。
「ああ、レイドさんは上の子が同じくらいだからねー」
子持ちの冒険者も、いるんだ?
なんか意外。
結婚して所帯持ったら引退するイメージだった。
「えとえと、えーと。じゃ、しばらく、お願いしまーす!」
「シルフィちゃんの頼みじゃ仕方ねえな!」
野太い声の、豪快な笑い声がセットの返答。
男性冒険者──レイドさんまでシルフィの知り合いかよ。
……オレ、知り合い、少なすぎない?
お向かいの鍛冶屋のおっさんと朝、目礼する程度だぞ。
ていうか、たった半年で交友広げてるシルフィが、凄い。
そのコミュちから、オレにも分けろ。
と。
受付嬢さんが手招きして、オレもシルフィの後に続く。
通されたのは、受付の二階。
裏の酒場兼宿屋は、二階が宿になってるのは知ってる。
けど、冒険者ギルドの二階は事務室になってた。
壁が薄いのか、隣の宿屋の喧騒が壁越しに聞こえる。
無人でもなく、何人かの事務員さんが書類整理してる。
その書類が積まれた机の横を抜けて、奥の部屋へ。
奥の部屋は、どうやら少し狭い倉庫みたいな場所だった。
天井は少し高いが、両サイドの壁は棚でいっぱい。
棚には書類と道具がごちゃごちゃに詰め込まれている。
ていうか、床にもなにかの道具が散乱しまくり。
明かり取りの窓があるにはあるが、とても暗い。
「ええっと、どこにしまったかしら……。ごめんね狭くて」
「あ、いや、別に構わない、です」
「敬語要らないわよー? これから一緒に頑張る仲間だし」
「あ、そうか。専属、みたいな?」
「専属ってわけでもないけど……、あった!」
どうやら目的の物を見つけた受付嬢さんが、振り返った。
「ギルド受付嬢、セラよ。今後とも、どうぞよろしくね」
「「よろしくお願いしまーっす!」」
「うん、いい返事。冒険者は元気がいちばん」
狭い倉庫部屋を奥に進むと少し広がっていて。
一人用のテーブルみたいなものがあった。
天窓がこの真上にあるから、ここだけが明るい。
そのテーブルの上の書類束や本を押しのけたセラさん。
セラさんは、何かの準備を始めているようだった。
テーブルの上に乗せられたのは、水晶玉。
といっても、そう大きなものではない。
せいぜい、片手で掴んで持ち上げられる程度。
「ごめんなさいね、新人が入るって珍しくて」
「いや、入れてくれるだけで有り難いし」
「他の街なら登録専用の部屋があるんだけど」
「あ、それで倉庫で」
「ほんっとに、ごめんね?」
いや、その程度で怒るわけもない。
屋根も仕切りもない屋外で、数万年過ごしたオレたちだ。
この程度、謝られるようなことじゃない。
「いや、全然構わないです。それ、何ですか?」
「魔力を……、計る魔道具? かな、かなかな?」
「あらシルフィちゃん賢い。正解よー」
なんか妙に静かだと思ったら、コレをガン見してたのか。
シルフィのやつ、魔法関係のアイテムに目がないからな。
そういえば、身体がない頃でも魔法具作ったりしてた。
「んじゃ、こっちの冒険者登録用紙に記入してくれる?」
「あ、はい。ええと……」
「名前と年齢だけでもいいわよ。文字は、書けるわよね?」
「はい、書けますよ。オレら一応、魔法屋の娘ですし」
「だよねー。そっか、こんな大きな娘さんたちがねえ」
何か、感慨深げな目で見られた。
そういえば。
親父殿とこの街の住人って、どんな関係なんだろ?
オレらが来る前から、街に何十年も住んでるんだよな?
初めて会ったとき、世界を放浪してる、って言ってた。
こんな身体にされて、無理やり押しかけちまったけど。
もし親父殿が結婚してたら、大騒ぎだったよな。
ていうか、親父殿ってそういう相手、居たのかな?
そろそろ頭頂部の毛がヤバそうな親父殿が脳裏に浮かぶ。
いや、ないな。
うん、ない。
あったら、生涯のネタになると思う。
オレたちの生涯って、たぶん不滅だけど。
不滅の鉄板ネタ。
なんだそれ。
自分で自分のネタにややウケして、くすりと笑う。
と。
途端に、セラさんが赤面して、オレから目を逸らした。
シルフィも、なんで口元覆って俯くんだよ。
「うわあ。なるほど、シルフィちゃんが自慢するの、解る」
「でしょでしょでしょ? ねぇねぇ、解りるれでしょ!?」
がしっ。
女性二人で手を繋いで、解り合わないで欲しい。
なんか、とてつもない疎外感を感じるんだが?
ほんとみんな、何なんだよ。
オレの顔、そんな変なの?




