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109話 迷宮内は、今んとこ楽勝

「冒険者の事情は訊かない、のが不文律だけどな」


 マークさん、物凄く言いづらそうに。

 いや。

 気持ちは、判らなくもないです。

 オレも?

 最初に見たとき、どうしたんだと思いましたし。


「メテルちゃんの妹たち……、亜人になったのかい?」

「えー、まあ。そういうことですね」


 むしろ、初めて見たときによく訊かれなかったな的な。

 ウンディは褐色肌に長耳になってるし。

 サラムなんか、額に角生えてるもんな。


「そ、そうか。亜人って、後から成れるんだなあ……」


 いえ、たぶん我が家の妹だけでせう。

 ラティーナちゃんっ、メモに書き込んでるけど。

 魔道士として、研究熱心なのはすぎょいけどっ。

 その情報、たぶん何の役にも立ちませんのことよっ。


「まあ、うちの子たちはいろいろ特殊だからね」


 へへんっ、と胸逸らしな御母君。

 割と、自慢入ってません?

 確かに。

 オレら四姉妹っ。

 どこに出しても恥ずかしくない、権能持ちですが。


 と、いうわけで。

 世界樹の迷宮、探索ちぅー。

 ……。

 今、唐突に気づいたけど。

 全員女性パーティですね、今回?


「俺は男だ!」

「あーはいはい、そういうことにしときませう」

「聞けよ!? 俺は男なんだって」


 マークさん、必死の抵抗。

 全員、笑って流してますけど。

 だって。

 革鎧の、胸の辺り。

 ほんのりと、膨らんでるんですもん。

 腰の細さも相まって。

 めたくた、ないすばでぃですよねマークさん。


「大胸筋だっ!」

「ずいぶんご立派な筋肉ですね」

「仕方ねえだろ、勝手に膨らむんだもんよ!」


 本人も割と邪魔に思ってるそうです。

 あの。

 マークさん?

 自前で偽乳盛ったウンディはともかく。

 御母君と、ついでにサラムが殺意の目線を向けてるので。

 そこら辺で、おやめになられた方が。


「お、俺が自分で膨らませたわけじゃねえんだから!」


 必死の抵抗も虚しく。

 マークさん、オレの中では既に、脱いだら凄い女子です。

 ……。

 ああ、女性パーティなんだし。

 後で、お風呂作ろうか?


「……えっ? そんなこと、可能なの貴方?」

「ああ、だってオレとウンディとサラム居るし」


 ラティーナちゃんは、知らないよな。

 前回も、平原でこのメンツで露天風呂作ったし。

 迷宮内だけども?

 権能が効くなら、全然余裕でしょ。

 なあ、ウンディ、サラム?


「我は問題なく」

「あー、ボクはちょっと試してみないと……」


 ほえ?

 サラム、どした?


 ふんふん。

 世界樹の迷宮内、ですけども。

 辺境のダンジョンと違って?

 土と水の精霊力が、極端に強いので。

 炎属性の精霊力、なんか効きが悪いと。


 ああ。

 言われてみれば。

 言う成れば、エルの体内、みたいなもんだもんな。

 エルは、世界樹の精霊。

 炎は、樹木なエルにとっちゃ禁忌。

 そりゃ、炎属性と相性悪いか。


「……ねえ、その子、魔導剣士なの?」

「何そのかっこいい職業名」


 ダメですよラティーナちゃんっ。

 そんな、ウチの厨二末妹が食いつきそうな名前出したら。

 ……ほら。

 めっちゃ、興味しんしんな目つきになってますやん。


「……詳しくは知らないけど、昔あったクラスのひとつで」


 ラティーナちゃんが言うには。

 王国や帝国が大陸に出来る前の、大昔の冒険者の職で。

 攻撃魔法と剣技を組み合わせた、邪法の剣士だったって。

 現代の騎士も、多少は魔法を使うけど?

 専ら、身体強化に特化してるもんね。


 ……。

 身体強化、覚えたかったな。

 結局、未だに覚えられてない。


 いやまあ?

 常時、地属性の権能使ってるから。

 ある意味、常時強化されてるようなもんだけど。

 ……呪文唱えて身体強化って、かっこいいので。


 で。

 ほんとに、六人で迷宮内、探索中なんですよ。


「唸れ真牙! 喰らえ狼牙!!」

「我、もはや手遅れ感有り……」


 ……。

 前方で、双子が全部仕留めてるんですもん。

 中衛のオレんとこまで、獲物が回って来ないよ。


 ついでに。

 マークさんも後ろに下がって。

 ラティーナちゃんと、いろいろ雑談してるっぽい。


 階層が浅いからか、スライムがメインで出てるけど。

 たまに、精霊獣みたいな四つ足の動物が出たりする。


 けども。

 サラムの剣技と。

 ウンディの水槍で、ほぼなんでも一撃粉砕してるのだ。


「まあまあ。楽に進めるのは、いいことよ」


 うー。

 パーティリーダーの御母君が、言うのならっ。


「それにしても。迷宮の土壁にまで、根が侵食してるのね」

「エルが言うには、死んだ根っこだって」

「ああ、それで枯死してるのね」


 周囲は、御母君の言う通り。

 迷宮らしい、石壁の迷路。

 でも。

 壁や天井を貫通して?

 大量の根っこが、這っている。


 調査探索なので。

 御母君とラティーナちゃんが。

 メモ片手に、いろいろ書き込んでる。


 一応、ラティーナちゃんがマッピング担当だけど。

 御母君と会話してるの聞く限り?

 かなり深い迷宮知識持ってるぽいんですが。


 で。

 二人の、メモ書き。

 ちらっと、横から覗いてみたけど。

 なんか、学術論文みたいな細かい文字、びっしりで。

 全然、理解出来ませんでしたっ。


「メテルちゃん? あの人の研究の一環なんだからね?」

「ううう。が、頑張って勉強しまする……」


 くぅぅ。

 一応、オレ、大陸で二人しか居ない、錬金術士。

 創始者な親父殿の一番弟子、なので。

 なんか、王国戻ったら?

 研究員として、学校入るの確定してるって。


 元素周期表くらいなら、全部暗記済みなんだけども。

 ……この世界、未知の元素とかたくさんあるっぽいから。

 オレの前世知識、役に立つのかしらん?

 ──。

 殴って砕くのなら、超自信あるんですけど!


「脳筋も大概にしなさいね」


 御母君にまで脳筋認定されてしまった。

 しくしく。


 まあ。

 そんな感じで、賑やかに。

 広々とした、迷宮の階層を下ってった。


 状況が急変したのは、その後の話。


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