104話 エルフの里は、絶景すぎた
で。
エルフの里、ですが。
ダークエルフは川のそば。
ドワーフは岩窟内。
オーガは溶鉱炉脇。
と、それぞれの精霊属性に近い場所に、里があったけど。
エルフの里は、どうなってるか。
……天を衝く世界樹の幹と枝に、集落が点在している。
いやほんとに。
枝の上にぽつん、ぽつんと家々がね?
道らしい道もなく、枝で繋がってるだけ、なので。
風でぎゅいんぎゅいん揺れてて、見てるだけで怖い。
一応、申し訳程度にロープで他の枝とかに繋がってる。
そのロープの上を、命綱なしですいすい渡るエルフたち。
……いや。
絶対、真似したくない。
だって。
下、軽く百メートルはあるんだもん?
オレ、地の精霊だからして、落ちても死なないけど。
これ、落ちたらどうなりますのこと?
風属性、落下速度制御の魔法がある?
なるほど、風属性エルフならではの集落なわけで。
しかし。
この、空中集落、というのは。
「うわぁ。絶景だなぁ……」
「郷里をお褒め頂き、光栄ですわ」
メラニアさん、胸逸らしてにっこり。
──エルフにしては、豊満ですね?
ああ、エルフでもやっぱり珍しいんですか。
いえいえ、結構なモノをお持ちだなあ、と。
シルフィに問答無用で揉まれまくった?
すみませんね、ウチの妹が。
後で、懲らしめておきますので。
こら、サラムも。
ついでに、エルも。
君たち、殺意込めて凝視しないの。
頑張れば、きっと育つから。
……育て方?
オレが知るわけ、ないだろう。
えっと。
どうなんでしょうか、メラニアさん?
「えっ? え、その、殿方に揉んで貰う、とか……」
セクハラ全開でしたね、すみません。
サラム。
親父殿に揉んで貰おうとか、考えてんじゃないだろな?
図星か。
許しませんよ、オレが。
そういう悪い娘は、こうだっ。
「はぅんっ、メテル姉、人前……ッ!?」
相変わらず、美乳で敏感だよなあ。
おっと。
周囲から熱い視線が。
……なんか、エルフって女性比率、高くない?
「男性エルフもおりますけど、基本は女性型で生まれます」
「……なんか、生まれる前から決まってる言い方だよね?」
なんと。
エルフって、世界樹の幹から生まれるんですってよ。
幹の中で精霊力が濃く満ちた場所で、体が生成されて。
木の幹が割れて、幼女状態で生まれるそうな。
っていうか?
精霊族自体が、男女の営みから生まれるわけでなく。
ドワーフは、鉱脈から。
オーガは、溶岩から。
エルフは、世界樹から。
ダークエルフは、水脈から。
それぞれ?
生まれついて精霊力を大量に持って生まれて来るそうで。
へぇ、へえぇ。
と、いうことは。
まさに、オレら大精霊の子供たち、って感じなんだなあ。
シルフィやウンディが、物凄く親身に世話する理由。
ちょっと、理解できた気がする。
しかし。
……ドワーフのおっちゃんたち?
地属性大精霊な、オレのこと。
親っていうよりも。
美味しそうな食料、みたいな目線でガン見してたけど。
「ドワーフは野蛮で粗野ですから……」
「やっぱりエルフと仲が悪かったりするの?」
「種族間戦争するほどではないですが、あまり付き合いは」
まあ。
住居自体、文字通り天と地で離れてるしね。
ああ、それで。
エルがやってる、地上の宴会で交わりが生まれるのか。
エルも、種族間の交流に一役買ってたのね?
「えへへ、ママ、褒めて褒めて」
「うむ。偉い偉い」
なでなで。
いい子に育つんだぞー。
……育てる、で思い出したけど。
地上で寝かしつけた、シルフィの子たち、どうなった?
いや、エルの本体の枝に乗せたから。
エルが、把握してるのは分かるんだけど。
てか。
そもそも、シルフィはまだ地上に居るんだろうか?
え?
子供たち、溶けた?
……溶けた、ってなんだ?
ちょっとエルデガルドさん?
そこんとこ、詳しく。
……ああ、なるほど。
精霊力が、風と地のみでいびつ、だったので。
人体形状を維持できずに、変化したと。
まあ、元はちび精霊の集合だから。
シルフィも言ってたもんな、いずれ消えるって。
オレの権能分けたから、変化で済んだわけか。
……具体的に。
何に、変化しましたのこと?
す、スライムですか。
生命の危機とかでは、ないのね?
まあシルフィの子だし?
エルフがエルの娘たちなのなら。
そっちは、任せようかな。
呼べる?
ああ、世界樹の内部を通せばいいもんな。
オレの権能を部分的に持ってるから。
世界樹の内部に伝う、風脈を通して呼ぶわけね。
では、そちらの移動はエルにお任せするとして。
『おーい。シルフィやーい。エルフの里、案内しろー』
『──「くぁwせdrftgyふじこlp!!??』
……なんか、阿鼻叫喚が返ってきた。
どんな惨状になってるんだろう、シルフィとカイル。
と、とにかく。
オレが呼んでるんだからして。
頑張って、ここまで上がって来るのだ、妹よ。
2020/12/25 リズ→エル。性格が似てるせいか、よく書き間違うんですよねこの二人(´・ω・`)




