103話 仲間に入れて欲しそうにこっちを見られた
結論から言うと。
ダークエルフの村からほど近い、海辺。
世界樹の分身、エルがほぼ無制限に供出する、大量木材。
オレが磯浜を造成してぽんっとこさえた、建造ドッグ。
そして、大まかな外見イメージの、図面。
そういう材料を用意したら。
四大精霊族が、寄り集まって、頑張って。
すごい勢いで、輸送艦の建造が進んでいる。
四大属性、四大精霊族。
組み合わさったら、およそあらゆる物が作れるのでわ?
作るのは、全長約60メートル、排水量1,500トン前後。
前世でいう、戦時中の駆逐艦みたいなサイズの、船。
キャラック船、って奴だね。
輸送艦は寄り集まって船団組んで移動するのが基本。
だから、最低でも十二隻は作る予定。
幸いにして、四大精霊族は、全員が精霊使いなので。
実在した帆船と違って、極端な話?
ひとり一隻、みたいな少人数操艦が可能なのよね。
まあ、ひとりだといろいろ大変だから、数人乗るけども。
で。
担当の内訳として。
ドワーフが、石材系。
エルフが、織り布系。
ダークエルフが、木材系。
オーガが、金属系。
概ね、そんな感じの分担。
なんで種族分担作業になったかというと。
なんか、ウンディやエルの意向だけじゃなく?
四大精霊族の、統一見解で。
武力で、種族間抗争仕掛けるのなら。
……それは、かつて人間にやられたことのやり返し。
──長命、高度文化人たる精霊族に相応しくない、野蛮。
ならば。
製作物と経済力で、支配したれっ。
交易で?
ぜったい真似できない技術、ガンガン輸出すんぞっ!
みたいな話になったそうで。
こういう意見は、シルフィとウンディ辺りじゃないかな。
オレやサラムだと、力には力で応酬しちゃうので。
……そして滅びる、人類の歴史。
じゃなく。
ぶっちゃけた話。
純粋に技術だけで語ると?
木工、金属加工、石工、織布。
どの分野に於いても。
数百歳の匠がゴロゴロしてる、こっちの方が圧倒的。
ただ。
元人間な、オレ目線だと。
人間の方が、単純に人口が多くて。
つまりそれは。
変化のサイクルが、早い。
そして、試行錯誤の回数が多い、ってことなので。
人間文化圏の方が、結果的にこなれてそうに思えた。
具体的には、調理文化やファッション流行、などなど。
既存技術の複合利用なんかも、そうだし。
人間だって、捨てたもんじゃないよ、と。
なので。
交易を通して、文化交流したらいいんでないのー?
と、思うんですけどね。
そこんとこ。
族長さんたち、いかがお考えでせうか。
「帝国のお話を伺った内容が、些か衝撃というか」
「差別意識が既になく、亜人自体を知らない、というのが」
「人間の寿命サイクルは長くて百年、忘れて行くのですな」
「遺恨に縛られ発展機会を失い停滞する方が、悪ですか」
いや、悪とまでは言わないけど。
お互い、違う文化圏なので。
それぞれで、良いものは吸収し合えばいいんじゃ、的な。
ああ、そうだ。
違う文化圏で、思い出したぞ。
「宿舎? ドワーフの地の社じゃ、ダメなのママ?」
「いや、ウンディが黒船であっちの人間連れて来るからね」
マークさんやセバスさんたちが来るんだって、言ってた。
まだ到着が全然先だから、余裕あるはずだけど。
ええと?
オレが眠ってたのが、半年で。
帝国からここまでが、三か月だろ?
ウンディが帝国に戻るのは、権能あるから一瞬だけど。
こっちに戻る帰路が、再び三か月。
──三か月の海路が二回だから、合計で半年ほど。
じゃ。
そろそろ、着いてもおかしくないのか?
ううむ?
突貫工事とまでは、言わないけど。
多少は、急ピッチで進めた方が、良さげかもー。
現実には、親父殿に頼めば?
っていうか。
親父殿なら、一晩で適当に作っちゃうんだろうけど。
そういう話ならっ。
四大精霊族の技術力を、ずずいっ、と押し出した宿舎。
提供して、度肝を抜いてやりたいじゃん?
それで、あちらの大陸との間で、例えば。
輸送艦の発注だったり。
剣や鎧の輸出になったり。
きめ細やかな絨毯や刺繍織物の受注来たり。
水に関する精霊魔法や、生活魔法呪符の技術発展。
そんな、お互いの生活を便利にする技術進歩があればっ。
クーラーや温水トイレが。
一家に一台常備される日も、きっと近い。
はず。たぶん。
いや、技術系素人だから、よくわかんないけどっ。
「そうだ、思い出しましたぞ。メテル様、蒸気機関? を」
「あっ、そうだ忘れてたごめん。原理、教えるんだった」
いやまあ、そんなに難しくはないんだけど。
ついでだし?
せっかく四大精霊族、全種族勢揃いしてるんだから。
実現できるかは、置いといて。
オレが知ってる前世技術、片っ端から教えてみようっと。
と、いうわけで。
オレの夢のためにっ。
頑張って下さい、職人さんたちっ。
「神代の国の技術実現を託されたと、理解しました!」
「四大精霊族の総力で、実現を目指しますとも!」
……いや。
そんなに大層な話ではないんだけど。
まあ、なんか職人さんたちが燃えてるから。
いいかな?
じゃあ。
ここは、職人さんたちに、お任せするとして。
そういえば?
エルフの集落にはまだ、行ってなかったので。
行ってみると、しようかな、と。
だって。
「いえね、別にいいんですよ大地の大精霊様ですし……」
エルフ族長の、メラニアさん。
仲間にして欲しそうに?
赤面したままそっぽを向きながら。
ちら、ちらり、と。
オレに流し目を送って来ている。
……なんか、御母君と似た匂いを感じる女性エルフさん。
お腐りに、なられておられたりするのかしら。
てか。
シルフィの眷属なはず、なのだが。
肝心のシルフィが、未来の旦那の修行に燃えてたし。
勝手にお邪魔して、いいのかな?
とりあえず。
眠ってる五つ子を連れて、行ってみるかあ。




