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101話 交易の準備を始めてみよう

 肩に、一人。

 背中に、一人。

 お腹に、一人。

 右手と左手に、一人ずつ。


 ……オレは保母さんかっ。

 そんな勢いで、シルフィの子どもたちを連れている。

 向かった先は、エルの新しい畑。


 畑っていうか?

 平地になってる地上は、そこら中に木々が茂ってて。

 これが全てエルの本体、世界樹に繋がってるらしい。

 新大陸全土を覆う一本の木。

 それが、世界樹だ。


 そして。

 この木々、エルの意志で割と自由に「移動」するんよね。

 なので。

 新しく畑になった場所は、昨日まで山岳と森だった場所。


 ……。

 オレ、ガチで方向音痴だからして。

 この辺、ランドマークとか建てないと道に迷いそう。

 やだぞ、家族が迷子の長女を探しに来られたら。

 こっ恥ずかしいなんて、ものではない。


 で。

 そのエル、というか分身のちびっ子だけども。

 オレたちをひと目見るなり?

 目線で人が殺せそうな勢いで、睨まれてしまった。


「ママ、いつ産んだの? 相手は誰??」

「オレの子じゃねえっつの。剣呑な目つきで睨むな」


 君が怒ると、周囲一帯の枝が一斉にわさわさ蠢くんだな。

 ……怖いので勘弁してくれ。

 きっと、月夜の晩とかにそれやったらガチホラーだよ。


 子どもたちは眠そうだったので?

 エルが作った木枝のハンモックで、みんなでおやすみ。

 寝顔、ほんっと可愛いっていうか。

 サラムが言った、ちびシルフィって表現がぴったり。


 いやあ。

 可愛すぎて、頬が緩むぜ。


「あら! じゃあ、ご成婚のお祝いね!?」

「意外とエル、宴会好きだよね?」


 オレ、目覚めてからまだ一週間程度だけど。

 連日な勢いで、何らかの理由で宴してるよね?


 作物が消費されるのが嬉しい?

 農家の醍醐味ですね。

 でもね?

 精霊力全開で、成長促進してるから。

 なんか、人口に対して収穫量が、多すぎるんじゃない?


「そうなの! だから、輸出交易するって話になってね」


 へえ?

 あ、それでウンディが帝国に戻ってる理由のひとつか。

 帝国南岸を中間交易所にして?

 王国と新大陸で、交易を結ぶわけね。


 へえ、へえぇ。

 ウンディも、ちゃんと政治や経済とか、考えるんだなあ。


「ママが帰って来ないから、衣装持ってくる、って!」

「うへぇ。それは永久に遠慮したかった」


 誰だよそんな、悪魔の所業考えたの。

 屋敷の侍女さんズ?

 むぅ。

 お世話になってるから、それは甘んじて受けるしか。


 あの人たち、だんだんオレに遠慮なくなってるというか。

 明らかに、着せ替えて遊んでる気がしてきたんだけども。

 露出激しいのは、勘弁して欲しいなあ。


 まあ。

 服飾屋さんなコルトさんが直接来るよりは、マシかな?


「辺境からスキル持ち冒険者を呼ぶ、ってエル聞いたよ?」

「げっ」


 来てしまうじゃないか、あの人がっ。

 男の娘にして冒険者にして、服飾の達人なコルトさんが。

 あの人、何気に服飾以外でも何でも出来るんだよね。

 オレの体に興味持ってなければ、いい人なんだけどなあ。


 あ、でも?

 セラさん関係の後始末、出来てるのかな?

 世間では半年経過してるらしいから。

 たぶん、収まるところに収まった、と思いたいけど。


 苦手なコルトさんは、ともかく。

 マークさんからは、武術教わりたいかなあ。

 何はともあれ。

 みんながこっちに来るんだったら、楽しみだなっ。


「で。帝国から何を持ってきたの?」

「いろいろあるけど、まずは砂糖大根ー!」


 そんな、どこかの猫耳ロボットみたいに言わなくても。

 ほう、砂糖か。

 さっき全身から噴出した気がするけど。


 砂糖と塩は日持ちするし梱包も簡単だから?

 割と、交易に向いてるらしいね。

 大量に作るのなら、なんか料理してみよかな。


 てか、オレ、寝てたからよく判らないんだけど。

 帝国からここまで、どれくらいかかるの?

 ──帆船で三ヶ月くらい?


 あの黒船、帝国も持ってないレベルの大型艦だから。

 帝国の標準輸送船だと、難破船とか発生しそう。

 ここは、王国所属な遠洋輸送艦、作るべきかな?


「面白そう! エルも手伝う!!」

「むしろ、君が手伝ってくれないと木材がないからね」


 黒船作ったときは、ウンディと合わせ技したけど。

 今、あいつ黒船でこっち戻ってるとこだもんな。

 オレ単体では、木は作れません。


 そんなわけで。

 エルと顔を見合わせ、にんまり。


 眠ってる子供たちはそのままに。

 代わりにエルを抱っこして、海岸へ。


 何かを作る作業って、楽しいよね。


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