私の初恋。
今でも、ふと思い出す。
あなたとの短く小さな儚い思い出。
この思い出が
事実か、美化によるものなのか
判断もできなくなるほど前ーーーーーー。
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18歳、夏の終わり。
その頃私は出会いとも言えないような一期一会を
常に繰り返していた。
出会い掲示板で、話が合いそうな人を見つけては
会って、話し、沢山のことを経験していた。
いつでも構ってくれる誰かがいること。
暇な時間、一人の時間が無いこと。
それだけが全てで、それだけで満たされていた。
構ってくれる人が、誰であれ、何を目的に、
ましてや話す言葉の真偽なんざどうでもよかった。
きっとあの頃は、自分に対する価値も誇りも
そして、世間の怖さも、何も知らなかったのだろう。
そんな中身の空っぽな時期に
出会った、私より3つ年上のカズキ
無口で、面白みもなく、メールの返事もマメではないし、来たと思ったら短文過ぎて、彼が何を考えているのかサッパリ理解できない。
今までにない人だった。
それだけなのかもしれないが、私はカズキに夢中だった。
カズキはトラックの運転手をしていて
仕事で会えない日が多かったが
そんな中でも、会える時間はキチンと作ってくれた。
深夜のディスカウントストアで買った花火を、
朝方の海で二人でひっそり静かにしてみたり。
お揃いのライターを買ったり。
会えない日には、彼の乗っているトラックを探してみたり
カズキの事を考えているだけで、
カズキの思い出が増えていくだけで
私にとってとても幸せな事だった。
そんな中、
徐々に、カズキと連絡が取れなくなっていった。
私でも、別れが近い事はすぐにわかったが、どうしても繋ぎ止めたくて、何も気づかないフリしか出来なかった。
都合よく使われても、どうでもよかった。
ただ、カズキの近くに居たかった。
でも、いつのまにか連絡が取れなくなり、
カズキは私の前から消えた。
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今思えば、最低な人。
きっと、最初から愛されてなんかいなかった。
それなのに、何年も経った今でも
ふとよぎるあの笑顔。
別れの辛さや、傷は全く残っていないのに
都合よく覚えている
自分の頭を寧ろ褒めてやりたい。
思い返せば、あの夏の終わりが
私の初恋。