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第三幕:処刑台に乗せられた王

更新できる日が来るとは自分でも驚きです。奇跡だあ。待っていた人がいたらそれも奇跡だな(^_^;)

◆私はカルマ。他人の不幸を覗き見して、それを赤の他人に公開する“親切”な悪魔。


 死ぬのはまだ早いぞ、グレン。

 そう、まだ続きがあるのだからな……くっくっくっ……

 

 続くのは天国への階段かな?


 それとも


 地獄行きのトンネルかな?



 では続きと行こうではないか。

 甘美な“不幸”の味をどうぞご堪能あれ。ヒヒヒヒヒ……






 ねえねえ、見て見て


   目、覚ました?


 やっと起きたわね


  まだ気付いてないみたい


 ふふ、いい気味よね



   あははははははは……!!




 いくつもの声が頭の上に降ってくる。眩しい。照明か? あの頭上を照らす円いやつは無影灯か。いくつもの顔が並んでこっちを見下ろしている。皆マスクをして青い手術衣を着ている。ここは手術室か? じゃあオレは今――。


 意識を回復したグレンは、ぼんやりと自分が今置かれている状況を把握した。しかしそれまでだった。


 やり方あってる?


  失敗したら死んじゃうかもよ


 え〜やだぁ、もっと遊びたい〜


   どこからいく?


 う〜ん、じゃあ手


   それで切れるの?


 わかんな〜い


  チェーンソーないのー


 砕いちゃえば?


  ジェニーってば、雑ぅ


 


    あはははは……!!


 息が苦しい。自分の口を覆っている酸素マスクから大量の風がとめどなく口腔に流れ込んでくる。息を吸い過ぎて窒息してしまいそうだ。もう止めてくれ。意識が……

 それを訴えて、彼は虚空に向かって手を伸ばした。


 あははは……

  ははははは……




 イーーッヒッヒッヒッヒッヒッ――――――――――……!



 若い女の嘲笑のような笑い声に混じって、悪魔の嘲笑いが聴こえた気がした。

 そしてついに身体の自由さえも利かなくなり、だらりと手が垂れた。




◆カルマだ。

 女に囲まれて、相変わらずグレンはモテモテだな。手術台の上に寝かされて、これから解体ショーでも始まるのかな? 今度目覚める時は……

 棺の中かもしれないな。



 ヒヒヒヒヒヒ…………!







 死んだのか?――


 暗闇を抜けた瞬間すべてが開けた。視界も音も思考も、すべての感覚が戻ってくる。そこはどうやら、病室のようだった。オレの足、オレの腕は!? はっとしてグレンは慌てて自分の手足の有無を確認した。動かすとちくりとした痛みが走った左腕には点滴の針が刺さっていた。反対の腕も無事だ、ちゃんとある。さらに両足もしっかりと自分の身体に繋がっていた。あった――と安堵してやつれた笑みを浮かべるグレンだった。

「体温計ります」

 ぶっきらぼうな年配の女性看護師(ナース)が病室にやって来て、体温計をグレンの腋の下に押し込んだ。右の腹がずきずきと痛む。これでは用を足すのも困難だろう。いつまでこんな状態が続くのか。

 それから彼の病室を訪ねてきたのは医師とマネージャーだけだった。

「具合はどうだ?」

 マネージャーは男らしい腕に見舞い用の花束や果物を抱えて現れると、気遣うようにそう訊いてきた。グレンは「ああ、なんとか」と苦笑で返す。それからマネージャーはベッドの横にあった椅子に腰掛けると、低声で切り出した。

「さんざんだったな」

 周りを気にしながら続きを紡ぐ。

「手術室でお前に悪さしようとした偽ナースは、全員捕まったから安心しろ」

「ああ……」

 そう答えるも、グレンは安心できなかった。

 あの時は顔全体が見えなくて声だけでは誰かわからなかったが、今思えばあれは知っている人物の声だった。あの邸宅で戯れていたガールフレンド達の。

 いつから狂い始めたのだろう。最後に邸宅を出た時は何も気付いていなかったように見えたのに。ジェーンが皆に教えたのか? じゃあそのジェーンはいつ気付いたのだろう。顔や背中を悪寒に撫でられ、グレンは目を瞠った。他にもまだガールフレンドは残っている――そのことに戦慄した。






◆カルマだ。

 女達の復讐は、これで終わりかな? 私はもっと見たいが……くっくっくっ。

 そこの君。そう、君だ。君だってこれでは物足りないと思わないか? 可哀相? そんな善人ぶらなくていい。自分の気持ちに正直になりたまえ。本当はもっと悲惨な展開を期待しているはずだ。その証拠に、目の奥が嘲笑(わら)っているじゃないか。くく、それでいい。

 では共に続きを愉しもう。




 イーーッヒヒヒヒヒヒヒヒヒ…………

 イーーッヒヒヒヒヒヒヒヒヒ…………!







 このことは、またたくまに世界中に知れ渡った。世界的映画スターのゴシップとして、ロイーダ通信や週刊誌、テレビなどで大きく報じられ、テレビを付ければ彼の話題で持ち切りだった。報道陣が病院にまで押しかけてくる始末だ。これをきっかけに彼のことを掲載した雑誌がバカ売れ状態になり、それが経済効果をもたらして大儲けしたと本屋の店主は喜んでいるだろう、そんな皮肉を言う奴もいた。

 そのようにして報じられる一方で、グレンにはどうしても腑に落ちないことがあった。何故なんだ。これだけネタが上がってるっていうのに、何故“あのこと”が報じられないんだと。グレンがあの邸宅で何人ものガールフレンドと戯れていたという話が表に出てこないことに不審感を抱く。もしかして誰かが……






◆カルマだ。

 やはり終わってはいなかったようだ。グレンを……おっと、これ以上はまだ



 ――生きている限りシナリオは続く。ではこの続きはまたにして。




 イーッヒヒヒヒヒヒヒヒヒ――――……

 イーッヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ――――――――……!!






今回は長さの割にカルマの登場回数が多かったですね(笑)。

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