プロローグ
ふよんっ、ふよんっ。
(なんだこの懐かしいような感触は⁉︎)
「ねぇー‼︎あなたはいったい何をしているのかしら」
静かな口調に僅かに怒気を孕んだ声が聞こえる。
「何って、たった今君にぶつかって転んだんだよ」
ふよんふよんっ
「ふぁぁ!!!!」
「ふぁ?おい一体どうしたんだ」
「どうしたんだじゃないわよ!」
少年は何かを掴んでいる自身の手を見る。
「…っツ」
そして今自分が置かれている事態に気づいた。
「ゴクンっ」
少年は生唾を飲んだ。
「あ、あ、ありえないわ。どこ触ってんのよ‼︎このぉぉぉ淫獣めぇぇ!!!」
少女は顔を真っ赤にして叫んだ。
「ぉ、おい待て!これは俗に言う不可抗力というやつだ」
焦りながらもその少年は弁解をしようとする。
「不可抗力⁉︎ならいい加減手をどけなさいよぉ!!」
「えっ⁉︎わっ、ご、ごめん」
少年は慌てて鷲掴みにしていた胸を手離す。
「こんの痴漢魔め!!決闘、決闘よ。私と勝負しなさい」
「決闘⁉︎」
「ええそうよ。この私レイミア=シャルバトスが制裁を下すわ」
「シャルバトス⁉︎ま、まさかシャルバトス王家の?」
少年は青ざめた顔で呟いた。
「もちろん。そのまさかよ、と言っても今は学生だから立場は同じようなものね」
少女はスカートの裾をつまみ、頭を下げる。
「時間は午後6時、場所は第二アリーナで行うわ。10分前には来ること。分かった?」
少女は強い口調で言った。
「っはは…‼︎ま、まじかよ」