象徴詩『石鹸』
死に掛けの石鹸は蝋燭の匂い
オリモノと血塊ゼリーで作った女の子
熔けた手を洗い拭い
ガーゼの格子が囚人を作る
乾燥に花蛇の鱗の這い出す二の腕
注射の痕は目玉模様の孔雀
河原にイジメ殺された
フヤケタ豚みたいな肢体が
腐膣に戻る実蛇の蠕動と神経毒は薬局で買った教唆薬
痺れ痺れシンクレア フィリア
焼けた鉄を埋め立てた顔面ミオクロニー
じんわりと噴き出す
黙り込むゴムを貼り付けた裂けた口
蝋燭で作ったグレー部屋に四人で寝ている未来永劫
結末 末端 ミカヅキが滴る夜空
経済予防で失った足の裏が
見るな見るなと呻き
俯せになり呻く
絶食と尿測の
よれたシーツに往く川の流れは絶えずして
絶え絶えに
ラジオパーソナリティー障害は吃音と絶叫
卑語と侮蔑を吃音と絶叫
あ、あ、あ
あああ!
頭打ちの先行き
鍵を掛けてあったのに無い
向かいのラジオ男が盗んだに違わない
取り返すために監視を行い
監視だけが自我になる
腫瘍は育ち
女の子になった
育児手当てを請求するに
区役所に届けるには片足が溶けて無い
外泊許可に書く名は他人のもの
何故なら
ソイツに乗っ取られているから
許可出来ない
許可されない
イヤホンを詰めた女の子の閉じた割れ目の
白白の赤赤に生まれた
スピノザの運命
痣だらけ
紫斑を示す心刺しの病
並ぶ行列
治療を受けるために並んでいる
並ぶ
整理券の番号は345567754326900642112356789007532135789890753213467890番
パラモデルのシンクレア 死に掛けの痣蛇
前に立つ蝋燭の匂いに轢かれ
並んでいる
並び
視界を奪う蠕動と絶叫が
息を苦しくする
絞められた首の細さと同じ
ナースコールのスイッチは
柔らかく蠢き
溶けて二の腕に
まとわりつき
監視を続けている