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魔法使いの猫  作者: 麗羅
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こんな感じの日常です

次の日、取り合えず"月と夢"(KAMIKAWAの少女漫画部門のレーベルだ)に、できたネームを転送する。朝一に送れば、これでいいかの回答が夕方には届くはずだ。

あ、後で画材などが切れてないか確認しないとな…。大掃除で取っておいた端材が、全てなくなっているかもしれないし。原稿を書く紙だって、予備がだいぶ使われてるからそろそろ危険なはずだし。

いや、まずは昼御飯の用意かな。今10時だし、そろそろ二人が来る事を想定して動かないと…。


「ノアくん、何かすることある?」

やっと出てきたか。さっき叩き起こして、風呂に入らせたんだよね。ある程度身嗜みは整ってはいるけど、仕方ない。仕事の方が優先だ。

「ライトとの打ち合わせで使う、紙とペン……あと設定資料集出しといてくれる?

それが終わったら画材の点検。特にコピックとトーン、インクね」

表紙絵と扉絵、どっちも今回頼まれているのだ。それらが途中で切れると困るし、何よりドロワのテンションが下がる。

「オッケー。今回の話、確か、西洋風って言ってたよね?」

「確か、ね。僕は昼御飯の用意してるから」

「美味しいのよろしく〜」

ドロワはスキップをしながら仕事場に向かった。

月刊の話だから、いくらか余裕がある。週刊だったらこんなにのんびりしていられないけどね。

さて、昼は何にしようかな。カルボナーラとサラダ、コンソメスープとかでいっか。デザートは……ティラミスを最近作っといたからそれでいい。僕はキッチンに歩いていった。


「お邪魔するわね」

「こんにちは。今日は突然ごめんね「ライトっ!!」…おっと。久し振りドロワ」

魔術師用の大きな姿見から、人化したルーチェと手を繋いだライトが来る。手を繋ぐのは転移をするため、離れないようにする予防策だから仕方ない。

ルーチェはすぐに猫に戻って避けてた。なぜなら、うちの(バカ)が、会う度にライトに飛び付くからである。………いい加減にしてくれないだろうか、この癖。あっさりと受け止めてしまうライトのせいで文句を言うに言えないのだ。溜め息を吐きつつ、僕はドロワを引き剥がす。「なにするのっ」なんて文句を言うバカは無視だ。ルーチェとライトに迷惑をかけるな。

「久し振りだね、ノワール」

「ああ。久し振りライト」

僕らは握手をしながら挨拶を交わす。いつも通りだ。

「用意は全て応接間にしてあるから。ライトは紅茶がいいんだっけ?」

「頼むね」

「わかった。あと、ルーチェ、いつもながらごめん」

「いつもの事だもの、気にしないで」

軽く毛繕いをしているルーチェには頭が下がる。うちのが毎回、迷惑かけているからね。いい年しているのだから、いい加減に大人しくしてくれないだろうか。

ドロワはライトの手をとって、ルーチェを抱き上げる。……何度も来ているから案内なんて要らないだろうに。そんな風にしてるから、ライトにいつまで経っても子供扱い(いや、妹かも)されてるんだよ。


すでにお気づきかと思うが、ドロワは恋愛的な意味でライトが好きだ。けど、ご覧の通り、空回りしまくりなのである。本当にどうにかならないかな。相談されるの、面倒なんだよね…。

…………まあ、いいや。紅茶を三杯と珈琲を一杯用意してこようか。


「お待たせ」

「あ、ノアくん、これ。足りなかった分ね」

「ん。後で買っとく」

尻尾で戸を開けば、すでに全員話を始めようと思い思いに用意してるところだった。下準備しといてたからね。正直今渡されても困るけど、まあ考えの甘いドロワだから仕方ない。慣れだ。

若干、隈のできた顔でソファに座っているライト。ドロワの方はファンデーションで隠しているけど、恐らくライトは気づいてると思う。……塗ればいいってもんじゃないよね、うん。濃すぎるもん。

苦笑しつつ紅茶に口を付ける。「あ、アールグレイだ」って言ってくれるのはライトだけだ。女子力云々って言うならこういうのにも気を配るべきだよね。本当に張り合いがない。


閑話休題(それはさておき)

僕らはようやく本題に入ることに。ライトは持っていたカバンからある書類を取り出した。

「で、今回相談しに来た話なんだけどね。"(つきたち)の民”コミカライズしないかって話が来てるんだけど………」

「ああ、ようやく?アニメ化するって聞いたけど」

「あ、ufoliniaさんから話は聞いてるみたいだね。

……そうだよ、それと連動してって話」

"(つきたち)の民"って言うのは、ライトのデビュー作だ。吸血鬼ものだけどね。

既に10巻まで発売されていて、ライトにしては珍しい長編である。(他は基本的に一巻か、上(中)下巻で終わっているし)

「"月と夢"から出すって言う話だったから、ドロワが書きたいならドロワに任せようかなって思ったんだけど……」

ちらりとこちらを見てくるライト。ドロワは書きたいと言い張るに決まっているからね、分かっていらっしゃる。

「今の連載だけだし、できなくはない、かな。元々挿し絵は全てドロワがやってるし」

ドロワ、横でガッツポーズしないでよ。子供じゃないんだから。

そこに、ルーチェが珈琲を飲みながら口を挟む。

「あら、でもこちらの作品の挿し絵に、自分の作品もあるのでしょう?もう一本抱えて平気なの?」

ライトは困ったように笑った。ライトも懸念していたことなのだろう。

「大丈夫だって!!自分のはネーム溜めとけばいいし、ライトの挿し絵はぜーんぶ受け持つって決めてるもん!!」

ルーチェの忠告を聞かずに突入して、何となく、失敗する気もしなくもない。ま、どうにかやり遂げるんだろうから文句は言わないでおく。

「まあ、昼御飯の用意してくるね」

「急に頼んでごめんね」

「いいよ。別に」

取り合えず、話纏めといてくれればね。


昼御飯を食べ終わり、ライトのお土産がフルーツタルトだったけど、ティラミスでいいよね?

ちらちらと、窓の外を窺っていたライトとルーチェに釣られて外を見る。

…………あぁ。これは言わない方がいいやつか。

「じゃ、僕達はお暇するよ」

「えー!!帰っちゃうの!?」

「ライト達だって忙しいんだろ。ほら、ドロワだって連載があるんだから」

溜め息を吐きつつ宥めるけど、たぶん、今日はそれどころではないと思う。

「それじゃあ失礼するわ。ノワール、御馳走様。ドロワちゃんは頑張ってね」

「え?」

二人は苦笑しながら鏡を潜る。僕は仕方無く窓を開ける。梟がいるのだ、開けないとね。

「ドロワは不合格じゃな」

「し、師匠(マスター)!?」

この梟はドロワの師匠の物だ。僕と同じ、といえば分かりやすいかな。

「ノワールよ、チと甘やかしすぎではないかの?」

「これの生活能力見て言えます?」

「…………そうじゃの」

師匠にまで溜め息吐かせる生活力って…………。

「ま、後でドロワに課題を持っていくからやらせとくのじゃ」

「……了解」「え?」

ドロワはおろおろしているけど、窓の外にずっと着いていたのに気づかない方が悪い。

「ちょっ!!師匠(マスター)!?師匠(マスター)アァァァー!!」

あーあ。

また気が向いたらこんな日常をお送りするよ。気が向いたらまた見に来てね。

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