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魔法使いの猫  作者: 麗羅
3/5

掃除の後に

カシャッ


………ん?何の音?

目を覚ますと、ドロワが着替えてスマホを構えていた。……これは叱るべき?というか、僕が目を開けた瞬間にビクッとしたよね?怒られる自覚でもあるのかな?

《はぁ……。掃除は終わったよね?》

「当然っ。どこもいつになくピカピカだもん!!」

そこでドヤ顔をしているドロワの顔に、尻尾で一撃を加える。猫パンチじゃないだけ良心的でしょ?これは教育的指導だ。断じて暴力じゃない。

「痛っ!!酷い!!ちゃんとしたじゃん。普通誉め……」

《いつもいつも、自分が綺麗にすればいいだけでしょ?

当たり前の事しただけで誉められるのは、五歳児までだ》

そう言うと、そこまで言わなくてもとモゴモゴ言うドロワに、溜め息が漏れる。なぜいつも、使ったら片付け、こまめに掃除をしないのかな、この主は。


と、鏡に波紋が走り、一匹の白猫が現れた。彼女はライトの遣い魔、ルーチェだ。

…因みに、白猫(かのじょたち)は鏡を媒体にして転移を行う。黒猫(ぼくら)の場合は影だったりするんだけど。ま、使うことはあまりないかな。

《まぁまぁ、そこまで言わなくてもいいんじゃないの?》

《やぁ、ルーチェ。急にどうしたの?》

《お使いできたのよ。

それに、抜けてる子の方が可愛いでしょ?》

………ルーチェには悪いが、面倒臭いとの感想が先に出てくる。ちょっと抜けてる位ならまだしも、生活力皆無に近い日常を見せられているからね。なんで僕が一から十までしなくちゃならないんだか。(僕が綺麗好きだからかもしれないけど)


さて、一回転して人形をとり、僕は二人に問いかける。

「コーヒーがいいんだっけ?」

《えぇ。ミルクと砂糖たっぷりでお願い。

あ、あとこれ、主様から》

「おんなじのでいいよ〜」

とりあえず、おもてなしを用意してから。話はそれからだ。(ちなみに受け取ったのは、ライト特製のチーズケーキワンホールだった。お茶請けにしようか)


戻ると不機嫌そうな甘ロリをきた、白髪(はくはつ)蒼目の少女がドロワに付き纏われていた。……猫は付き纏わりつかれるの、嫌いって解んないのか、この(バカ)は。

配膳を終えて、ドロワにチョップを食らわせる。「イッタっ!」なんて声は無視だ。他人(よそ)の子に手を出すんじゃない。溜め息が漏れる。

「うちのバカ(主)がごめん。後で躾とく(後で説教しとく)」

「ちょっ!!ノアくん!!本音と建前逆だよねっ!!私、主だよっ!!」

ようやく解放されたルーチェは、ドロワに乱された身だしなみを整えた。

で、小さく息を吐いてから、僕の煎れたコーヒーを口にする。頬が綻んでるから、味は合っていたらしい。

……うちの(バカ)がごめん。僕らはケーキとコーヒーをとりながら漸く本題に入った。

「……………もういいわ。慣れたもの。で、主様からの伝言よ。『今日、〆切近いから徹夜で仕上げる。だから、こちらに来るのは昼過ぎになると思う。ゴメンね』とのことよ」

「あぁ、新作三ヶ月後だっけ?」

「えぇ。それに、頼みがあるからと言っていたわ」

「前々からいってた話だよね?挿し絵の件も含めて」

「そう言っていたわ」

ライトの副業(いや、魔術師が副業かな?)は小説家だ。PNは星野ヒカル。

彼の話は繊細で優雅であると口コミが広がって、今や売れっ子。サイン本が何十万で取引されているくらいだ。ラブコメ、SF、ファンタジーなんでもござれだしね。

対し、ドロワは漫画家。PNは姫宮夢。

ま、ライトに頼まれて、挿し絵や表紙の絵も書いてるから、イラストレーターでもある。僕がマネジメントにアシスタントをさせられるのは、当然って思ってる節があるのでホントに困る。……担当の宮田さんまでそう思ってるし。


話を戻そうか。

「ん。分かった。昼はどうするの?」

「こちらでとれたら嬉しいって言っていたわ。お願いできるかしら」

「いいよ、簡単なのしか出せないけど」

あれ?もしかして僕、関係者の胃袋掴んでる?………まあ、関係ないか。

ルーチェは可愛らしく微笑んで、出されたコーヒーを飲んでしまうと再び猫に戻る。

「私も楽しみにしているわ。ではまた明日」

「ライトによろしく。ケーキ美味しかったって」「気を付けてね」

来た時と同じく、鏡に波紋をたてながらルーチェは帰っていった。

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