黒いサンタクロース
夢の中で、俺は木造で煙突付きの暖炉のある部屋にいた。外は夜なのか暗く、部屋の中は暖炉の火によって照らされていた。
「え、ここどこ?」
と俺は言った。言いながら、これはただの夢じゃないなと思った。今まで夢の中でここまではっきりと自分の発言を認識したことはないからだ。
「メリークリスマース‼ はじめまして、坊や‼」
「え? 誰!?」
後ろから声をかけられて俺は慌てて振り向く。
そこには、服の赤いところと髭の白いところ、そして、子供達へのプレゼントを入れていると思われる大きな袋の白いところを全て黒に変えたような真っ黒な服装のサンタクロースがいた。
どうやら日本人のようだ。にこりと笑っているが、完全に怪しい。
(こいつって、良い子にプレゼントをあげるんじゃなくて悪い子をさらうとかいうやつじゃね? もしそうだったらどうしよう……?)
なんて俺が思っていると、黒いサンタクロースはこう言ったんだ。
「こんばんは、世界一のネガティブ君。君にプレゼントをあげるよ。そのかわりに君には怪人や怪獣を倒すヒーローになってもらう」
「え…………はあ?」
翌朝起きた俺は、着替えるとクリスマスツリーのところのプレゼントを入れるための大きな靴下の中を見た。中には緑の紐と赤い袋で包装された四角い箱があった。
俺は昨日の夢のことを気にしながらも、プレゼントを見ようと袋を破った。もうちょっと丁寧に開けろって? 俺はこういうところは雑なんだ。そして箱を開ける俺。家族は誰もまだ起きていない。
「これは……」
箱の中には青いマントがあった。
「何これ?」
俺はそのマントを手に取った。すると、
キン‼‼
と、頭の中に何か電撃のようなものが走った。
「うっ……ん!?」
なんだか嫌な予感がする。あっちの方で何かが起きている。何故だか急いでそこへ向かわないといけない気がした。
俺は家の鍵を入れた財布とマントを持って家を出た。ドアの鍵を閉めた後に鍵を財布に直した俺は、財布をズボンのポケットに入れるとマントを持ったまま嫌な感じがする方へ走り出した。
横断歩道を渡り角を曲がり、ただひたすらに走った。自分でも何が起きているかはわからなかった。
「ここだ‼」
五分程走った俺は、見覚えのある公園に着いた。なんと、そこには、
「ぎゃーっ‼」
「食ってやる‼」
三メートルくらいの身長で二本角を持った赤鬼が二十代くらいの若い男性を襲っているところだった。
「わっ‼」
思わず叫ぶ俺。すると赤鬼は俺に気付き、俺に標的を変えてこちらへ歩いてきた。右手には棘付きの金棒を持っている。
「見・た・な‼」
黄色い目玉が俺を睨み殺さんとしているようだった。
(やべっ‼)
パニックになった俺だが、その時、俺の頭の中で声がした。
『マントを着ろ‼』
それはあの黒いサンタクロースの声だった。
「‼」
俺は驚いたが迷っている暇は無かった。
急いでマントを羽織る。
すると、青い光が俺を包んだ。