宿題をやらない
結局今日は予習を何もしてこなかったし、宿題を何も出せなかった。
数学の計算問題の予習と古文の現代語訳の予習、英語の記述試験の過去問の内の大問三と四。
一年前の俺なら、怪人や怪獣との戦いで昨日くらい疲れててもそのくらいの宿題はやった。昨日は蛙みたいな怪人を倒しながら宿題できないみたいなこと考えてたし、実際しなかったわけだが、本来の俺ならできたはずだ。
一年の夏休みに調子に乗ってあんなことしてサボり癖が付かなかったらなあ……。
いや、後悔しても遅い。後悔先に立たずだってことはわかってはいるんだ。
藤先生にたるんどると言われたように、英語の授業では大山広絵先生に叱られた。古文の現代語訳は一行ずつ順番に生徒を当てていくというものだった。またもや恥を掻くと思ったが、俺の二つ前で終わってくれた。数学の予習も同様に当てられなかったために助かった。ただ、数学の授業はほとんどわからなかった。勉強してないから仕方がない。ちなみに担任の藤先生は体育教師である。
そうして授業が終わり、俺は美術室へ向かう。俺の所属する部は美術部だ。しかし、俺の絵が素人より上手いとは言えない。悲しいことに。
廊下で、若い女性教師とその先生に叱られている一年の男子二人の横を通りかかる。あの先生は誰だったっけ。確か四月に新しくこの学校に来た―――。
ちなみに今は五月だ。一年の夏休みに堕落したとはいえ、藤先生の言う通り、俺は半年前、つまり一年の十一月くらいまでは成績は悪くなかった。まあ、勉強しなかったから今は落ちぶれたけれど。
教師と二人の一年生を見ながら、まさか俺がこうなるなんてな、と思いながら俺は美術室へ向かった。
黒いサンタクロースとの出会いは小学校六年生の冬休みが始まる一日前。十二月二十四日のクリスマスイブだった。
うちは「サンタクロースからのクリスマスプレゼント」という形でクリスマスツリーにプレゼントが入れられるのは小六までだったから、最後のクリスマスプレゼントが何か本当に楽しみだった。
一年生の時は大好きだったシリーズの絵本を五冊。二年生の時はサッカーボール。三年と四年の時はテレビゲームのカセット、そして五年生では世界で大人気のファンタジー小説『エイリアンちゃん』シリーズの第十二巻にして最終巻『エイリアンちゃんと終末のカスタネット』だった。今まで読んだことがなかった小説の最終巻をいきなり読んだが、かなり面白かった。
この小説がまさか高校一年生の夏休みのあの事件に繋がるなんて……思いもよらなかった。
話を小六のクリスマスイブに戻そう。当時の俺は最後のクリスマスプレゼントを凄く楽しみにしていた。そうは言っても、翌年からは親から直接クリスマスに時計とか靴とかを買ってもらったりしたんだけどね。
その日は毎年恒例のように、翌朝早く起きるために早く寝た。
その夜、俺の夢の中に奴は現れた。