ネガティブは世界を救う
「ガハハハハ‼ 遂に貴様も終わりだ‼ マイナスイオンマン‼」
蛙怪人ガマゲロッグンが、俺を見下ろして高笑いをした。
馬ッ鹿じゃねえの。終わりなのはテメェだよ、という意味を込めて俺はガマゲロッグンを見上げる。
奴の必殺技、『ダークマター・オタマジャクシ』が俺の体にくっついて俺から生命力を奪い取って殺す―――気らしい。
「さあ、今の内に俺に遺す遺言は無いか‼」
バカガエルがアホなことを言ってやがる。ねえよ。あっても少なくともお前に遺す言葉なんてな、と俺は思う。
「ねえよ‼ 『デフレスパイラルトルネード』‼」
俺は自分の体を高速回転させてオタマジャクシを吹き飛ばし、ジャンプしてガマゲロッグンのいる屋上に飛び乗る。
「な、何!?」
なんて単純な驚き方をしてやがる。
ああ、蛙の相手をしているせいで帰るのが遅くなっちまったな。更に疲れが原因で宿題をするのが遅れて、終わる前に寝てしまって、そのまま朝が来て―――。
「あんな技俺に効かねえよ‼ トドメだ‼」
明日の朝からクラスの皆の前で説教されて、完全に常習犯扱いされて、どんどん成績も落ちて―――。
叫ぶガマゲロッグン。
「この、糞野郎があああぁぁぁ‼」
「『マイナスイオンビーム』‼」
ちゅどーん‼
俺の両手から発射された白いビームがガマゲロッグンを撃ち抜き、撃ち抜かれたそいつは小さな蛙になって飛んでいった。
「ああ、今日もついてねえ……」
はあ…………。何で俺がヒーローなんてやらなきゃならんのだ。
俺の名は田中前人。高校二年生だ。
小学六年生のクリスマスイブの夜。
俺がマイナスイオンマンになったのは、あの夜、黒サンタのジジイに出会ったことから始まった。